第16回「海街diary」「ソ満国境 15歳の夏」「奇跡の2000マイル」「画家モリゾ マネの描いた美女 名画に隠された秘密」

「ソ満国境 15歳の夏」は松島哲也監督の日本映画。夏八木勲の遺作。

「ソ満国境 15歳の夏」は松島哲也監督の日本映画。
1945年8月、旧満州にソ連軍が侵攻した。日本人の開拓民は逃げ惑った。
そんな中、国境の農場に徴用された新京第一中学の学生たちは軍に置き去りにされ、新京まで徒歩で戻ることを余儀なくされた。
途中、ソ連軍に抑留されるなどの扱いを受けながら、親切な中国人の村長に助けられて命を救われた。
そんな事実に基づく作品。
放射線汚染に苦しめられる福島県の中学生たちが、中国に招かれてこの事実を知るというストーリーになっている。
田中泯、夏八木勲、香山美子らが出演。
旧満州の悲劇は前回の本コラムでも書いた「死の街を逃れて」でも描かれたが、この映画は中学生の逃避行の場面が、意外によく撮られていて感心した。
奥原一男カメラマンの功績だろう。

パンドラ、スロー・シネマ・ネットワーク配給。8月1日新宿K‘s cinema.

映画『ソ満国境 15歳の夏』予告動画|オフィシャル

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「奇跡の2000マイル」は、ジョン・カラン監督によるオーストラリア映画

「奇跡の2000マイル」はジョン・カラン監督によるオーストラリア映画。
うら若い女性がたった一人、ラクダ4頭と愛犬を連れてオーストラリアの砂漠を横断した事実に基づく。その女性とは、ロビン・デヴィッドソン。1977年におよそ7か月かけてオーストラリア西部の砂漠2000マイル(役3000キロ)を走破した。

この様子はナショナルジオグラフィック誌を通じて、世界中に報道され、大きな話題になった。
映画はロビン役をミア・ワシコウスカが演じる。
ティム・バートン監督の「アリス・イン・ワンダーランド」のアリス役や「キッズ・オールライト」でスターになった人気女優だ。

『奇跡の2000マイル』 予告編

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ミアがオーストラリアの出身ということは知らなかった。ナチュラルな彼女の魅力が最大に発揮されている。ロビンは、まずラクダの調教を学んだ。オーストラリアには野生のラクダがいっぱい繁殖しているということも知らなかった。
カンガルーばかりではないのだ。

彼女は住み込みでラクダの調教を習い、ジオグラフィック誌の契約を交わす。道中カメラマンのリック(アダム・ドライバー)が数週間に1回、撮影に立ち寄る。
とても困難な旅だ。普通の人間なら絶対にやらない孤独で気力もなえる長旅だ。ロビンという頑固なまで自分の意志を押し通す女性の心情をミアが演じ切ってくれた。
野生のラクダが寄ってきたら、撃ち殺すという過酷な試練。愛犬との別れ。
本当にリアルに旅を再現した素晴らしい作品。おすすめしたい。

ブロードメディア・スタジオ配給。7月18日有楽町スバル座。

大ヒットの是枝裕和監督「海街diary」

是枝裕和監督の「海街diary」は評判が高く、試写も満席状態だ。
鎌倉に住む4姉妹の話。3姉妹は自分たちを捨てた父親の娘、つまり腹違いの妹を鎌倉の古い家に引き取って一緒に暮らす。

綾瀬はるか、長澤まさみらが4姉妹に 映画『海街diary』予告編

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やっぱりと思ったのは、小津安二郎監督の作風になんとなく似ているということだった。
何気なく家族のきずなを確かめ合うところ。鎌倉の海と山の光景。静かな描写。音楽のたたずまい。強烈な印象がないかわりに、ほんのり、ほのぼのとしていて、思わずいいなあとうなってしまう。

長女が綾瀬はるか、二女が長澤まさみ、三女が夏帆。
そして父親がうませた腹違いの妹に広瀬すず。
この女優たちがそろって、素晴らしい。
ことに綾瀬はるかの妹を統率する長女ぶりが板についている。そして広瀬すずのフレッシュな魅力が光っている。

撮影は写真家の瀧本幹也で、桜の下を自転車で走るすずの顔に影が映るシーンのすばらしさは、喩えようがない。
花火のシーンも印象に残る。
小津さんが生きていたら、こういう映画を撮ったのではないかという気がする。

原作は吉田秋生のコミック。
この原作に目を付けた是枝監督のセンスもすごい。

GAGA、東宝配給。6月13日より大ヒット公開。

「画家モリゾ マネの描いた美女 名画に隠された秘密」は、実在したフランスの女流画家、ベルト・モリゾの没後120年記念作品。

「画家モリゾ マネの描いた美女 名画に隠された秘密」は、実在したフランスの女流画家、ベルト・モリゾの没後120年記念作品。
ベルト・モリゾ(1841~1895)は、パリの裕福な家に育ち、姉とともに絵を勉強する。

画家ベルト・モリゾに迫る!映画『画家モリゾ、マネが描いた美女 名画に隠された秘密』予告編

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エドゥアール・マネに出会い、絵のモデルになる。
オルセー美術館に飾られている「すみれの花束をつけたベルト・モリゾ」の絵は、今も人気がある。

映画は、ベルトとマネの秘められた恋、絵の技法をめぐる確執などを、普仏戦争などの時代背景とともに描かれる。
印象派初期のパリ画壇の話。
ベルトを演じるのはマリーヌ・デルテリム。
マネはマリック・ジディが演じる。

監督はゴダールなどの映画を撮影してきたカロリーヌ・シャンポティエ。
映像に関しては、もう少し陰影がほしかった。

KADOKAWA配給。6月13日よりYEBISU GARDEN CINEMA。

野島孝一@シネフィル編集部

野島孝一の試写室ぶうらぶら 、オリジナル版は、アニープラネットWEBサイト
に掲載されています。
アニープラネットWEBサイト
http://www.annieplanet.co.jp/

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