ポップな色彩と透明感あふれる映像美
ゼロ年代の東京を生きた僕らのための青春群像劇

舞台は東京都世田谷。
初恋、失恋、家出、進路、援助交際等のキーワードが散文詩的に散りばめられ、ど こか懐かしさとゼロ年代特有の鋭さが混じり合う。監督自身の実体験をもとに15年の時を経て書き上げら れた。2015年、かつてモラトリアムを過ごしていた大人たちに送る物語が誕生した。根拠のない中途半 端な衝動だけで高校三年最後の夏を駆け抜ける《少年たち》とそれを陰ながらあたたかく見守る《大人たち》。 柔らかでポップな色彩と透明感あふれる映像が印象に残る。

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メガホンをとるのは園子温を師事する田中佑和。
数多くの現場を経て今作が初長編監督作品となる。撮影 は日本映画学校 ( 現日本映画大学 ) 時代の監督の同期の 福田陽平 ( 鈴木光司原作映画「アイズ」監督 )。 高校生のメインキャスト陣は全員無名の俳優、大人役には個性派俳優が脇を固める。また「くそガキの告白」 監督の鈴木太一、「デメキング」監督の寺内康太郎、「ある優しき殺人者の記録」監督の白石晃士など、監督 と親交のある今をときめく映画監督が出演を果たし、ユニークな演技を披露した。これから注目すべき個性 と映画愛が集結した。

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STORY

東京都世田谷区に住む高校3年生の秋山耕介。
夏休み、家出をした小学校時代の同級生 夏木真太郎は耕介の親が田舎に帰省しているのをいいことに耕介 の部屋に転がり込んでくる。性格も正反対で、大して仲が良かったわけでもない二人。やがて部屋には真太 郎の高校仲間のゴロー、ヒロト、ゴローの彼女なども住みつくようになり、穏やかなはずの耕介の高校生活 最後の夏休みはかき乱されていくのだった。

七夕の夜、好きな娘の短冊を見つけてしまった真太郎。そこに書かれたその娘の願いには思いもよらぬこ とが書かれていた。中学時代の卒業アルバムに眠らせたままの耕介の初恋相手。なんだか最近、自分に冷た い真太郎の態度に微妙に悩まされ続けるゴロー。夏休み、急に黒ギャル化したゴローの彼女。花火大会の夜、 夏期講習の塾の予定があるどこか孤独なヒロト。援助交際をする少女。それぞれのそんな小さな悩みも、そ れぞれの 10 代の小さなハートで抱えようとすればするほど、それは自然と溢れ出し、時には破裂する。

普段あまり笑うことのなかった耕介も、仲間たちとの時間の中で少しずつ忘れていた大切なものを思い出 す。そんなひと夏の内緒の共同生活もやがて終わる日がやってくるのだった。

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「夏休みは好きな娘に会えない」 田中佑和 監督 コメント

小、中学校と世田谷の松原の半径1キロぐらいの学区内で過ごした。
小学校時代はサッカーに明け暮れガ キ大将的な存在だったのが一転、中学校で苛めに合い、同学年の男子が一人も所属していない演劇部へと、サッ カー少年から作家少年へと韻を踏むように足場を変えた。今となってはこうやって駄洒落で解決できるよう な出来事も、まだ小さなハートと小さな世界に生きていたボクにとっては、死ぬほど辛かった。高校に入ると、 それまでの半径1キロぐらいだった世界は約10倍に広がり、ボクのハートも10倍ぐらいは強くなっていた。

高校3年生の時だった。なりっぺという奴と仲良くなった。なりっぺの住むマンションの1階は、彼の親 が経営するイタリアンレストランで、その3階に彼の部屋はあった。当時、酒を飲んだりタバコを吸ったり と親の目に入ると不都合なことも、なりっぺのようにほとんど一人暮らしに近い独立された部屋は、とても 好都合な《秘密基地》だったのだ。

夏休みの少し手前、ボクの好きだった子が、ボクの友人と付き合いだした。彼女とそいつが調布の花火大 会に行くという噂が嫌でも耳に入ってきた。怖くてその花火大会にも行けず、やけ酒した。電話で友人に寂 しさを垂れ流しながら、もう片方の耳で遠くの空で微かに鳴っている花火の音を聞いていた。大嫌いな学び 舎でしかほとんど会うことができない、大好きだったあの娘。夏休みの間に流れる、ボクの知らないあの娘 の時間。⦆今、思い返すと、大好きだったはずの夏休みの思い出は、実は好きな子に会えない、もどかしい夏 休みだった。

いつものように、ボクらは屋上で酒を飲んでいた。そこから見えたのは、すぐ近くの新宿に建ち並んだ高 層ビルの灯りだった。変な話かもしれないが、そこではじめて自分が東京に生きてることを実感した。ボク らは吸い込まれるように安いワインボトルをそれぞれ手に都庁の方へと歩いて行った。都庁の下でワインを らっぱ飲みしていたら、すぐさま警備員に怒られ追い返された。その帰り道、新宿西口のオフィス街は驚く ほど人気がなく静だった。急にこの街がボクらの庭のようにも思えて、東京という街に不思議な親近感が湧 いた。その瞬間、〈青春〉を感じてしまったのである。
その後、すぐさまその〈青春〉を脚本にしてみた。高校の仲間を集めて自主映画を撮ろうとしたが、制作途 中ある諸事情で断念した。そして、そのまま卒業を迎え、ボクらはバラバラになった。

あれから15年が経った。未だに、ボクに代表作はない。だけど、気付くと仲間だけは増えていた。もう いい加減撮れない言い訳もできなくなっていた。その時思い出したのがやっぱりこの物語だった。今、読み 返すと恥ずかしいぐらい説明的でキラキラした内容だが、当時のボクの中での真実だった。世界で起きるど んな大事なニュースも、所詮他人事で、他人から見たらゆるくて生温い日常こそが、ボクにとっては大事だっ た。近年多い、どんな奇抜なテーマな物語よりも、スタンダードでシンプルな物語を描きたかった。

映画「青春群青色の夏」予告編

youtu.be

9月5日(土)からテアトル新宿にて一週間限定レイトショー公開

出演 : 金田侑生 / 遠藤耕介 / 生沼勇 / 上川雄介 / 中村唯 / 山田篤史 / 湯原彩香 / 睡蓮みどり / 高崎二郎 / 屋根三郎 / 川連廣明
鈴木太一(『くそガキの告白』監督)/ 寺内康太郎(『デメキング』監督)/ 白石晃士(『ある優しき殺人者の記録』監督)

監督・脚本:田中佑和
撮影監督:福田陽平
音楽:34423
プロデューサー:村上忍
ラインプロデューサー:中川究矢
照明:上村奈帆
録音:宋晋瑞/田辺正晴
整音:國分玲
編集:宮崎歩
美術:田中佑佳
スタイリスト:鈴木里菜
ヘアメイク:杉山瀬梨
劇中歌:木村昇祐/濱端誠/Sure A
制作:青春群青色の委員会(株)small river 特別協力:エビス大黒舎 [2015/日本/カラー/115分]

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