ウィーンで現代美術の研究をしている丸山美佳です。
「ウィーン・アート通信」と題して、オーストリアの首都ウィーンにおけるアートについて書かせてもらうことになりました。
「音楽の都」と呼ばれているくらいなので、ウィーンといえばクラッシック音楽のイメージが強いかと思います。実際、毎晩のように数カ所でコンサートが開かれている音楽の街であることには間違いありません。しかし、まず述べたいのは、音楽だけでなくそのほかの芸術も有名なのがウィーンであるということです。
かつては大帝国を築いていたハプスブルク家の遺産とともに、歴代君主の収集品を展示しているウィーン美術史美術館の、デューラーやブリューゲルの絵画コレクションは特に有名です。
また、19世紀末のウィーン分離派であったグスタフ・クリムトやエゴン・シーレの作品は、いまでも多くの者を魅了しているでしょう。
あるいは、ゴシック建築が多い街並みの中に、ユーゲント・シュティールのエレガントな装飾があるように、オットー・ワーグナー、アドルフ・ロースなど、モダニズム建築やデザインも際立っています。
”かつては”ヨーロッパの中心であり、今もなお東ヨーロッパと西ヨーロッパのつなぎめを果たすウィーンは、外部から多くの者が絶え間なく出入りする場所であり、そこではいつも何かしらの芸術が生まれてきた場所です。
ウィーンで勉強していると言うと「古い芸術ですか?」と聞かれることが多いのですが、ウィーンは現代美術のための場所も比較的多い街だと思います。
たとえば、ウィーン分離派会館は「その時代の芸術のための場所」とうたっており、地下にあるクリムトの常設以外は、常に現代美術の展示が行われています。
そのほかにも、近代美術館や21世紀館、クンストハレ、レオポルド美術館、ギャラリー、オフスペース、そして2つの美術大学(美術アカデミーと応用芸術大学)も合わせて、小さい街の中には多すぎるほどの現代美術の活動が行われています。また、映画際もあれば、ダンスフェスティバルもあるし、今年2015年は、第1回目となるウィーン・ビエンナーレも開催されていました。
私が初めてウィーンを訪れたとき、過去の芸術やフロイトの精神分析を生み出したような古い抑圧的な街のイメージの中にある、生き生きとした側面を知って驚いたことを今でも覚えています。だからこそ、様々な刺激を受けながら現代美術の研究ができる場所であると思っています。
せっかくウィーンについて書かかせてもらう機会をえたので、少しでもその側面が伝わるようにしたいと考えています。「ウィーン・アート通信」といっても、全てのものがますますグローバル化している状況なので、とりあえずは、私がウィーンにいるなかで出会った展覧会やイベントなどについて書いていきます。
どうぞ、よろしくお願いします。
丸山美佳
丸山美佳プロフィール
現在、ウィーン美術アカデミー博士課程在籍。ギャラリーでアシスタントとして勤務しながら、早稲田大学卒業、横浜国立大学修士課程修了。