まだ、あどけなさが残る14歳のルーカス、シーヴェルト、トルゲールの3人は、プロのダンサーを夢見て週6日は猛特訓の日々を過ごす「バレエボーイズ」です。
この映画は、そんな彼らが、切磋琢磨しながら夢に向かっていく姿を追った、ノルウェーの青春ドキュメンタリーです。「トーキョー ノーザンライツ フェスティバル 2015」でプレミア上映され、大きな話題となりました。
最初から、ルーカスの王子様っぷりは目立っていました。あっという間に背も高くなって、15歳で180センチ。この映画では、少年から青年への心身の成長ぶりが見所です。
バレエダンサーの女性は、以前より身長が高い人が増えているとはいえ、やはり細く華奢なイメージは変わりません。一方で、男性は女性ダンサーをリフトしたり様々なポーズを支えたり、かなり筋力を求められるので、ロシアのダンサーなんてムキムキの筋肉男子です。
でも、足長で、ブロンドやブラウンヘアーにブルーやグリーンの瞳とくれば、ルーカスはやはり王子様です。黒髪で黒い瞳という、アジア系のシーベルトは、ルーカスら白人の容姿について、ちょっぴり羨ましく思っていたりします。
3人が更衣室で話しているシーンが楽しいです。自分自身の部活を思い出しますね。
ただ、男子更衣室といってもバレエ・スクールですから、日本でイメージする「部室」とは違い、きれいで清潔感に溢れています。
日本でいうと、まだ中学生にすぎない3人に、将来を今、決めなさい、というのはなかなか酷です。バレエを続けるかどうするか、真剣に進路を考えれば考えるほど、悩むことになります。シーベルトが、考えに考える姿、バス停でバスを待っている間に一人踊る姿からは、観客にも思いが伝わります。
3人は、夢実現の第1関門として、KHiO(オスロ国立芸術アカデミー)の入学試験に挑みます。この入学試験の様子をつぶさに見られるのは、とても興味深いです。ダンスの技術を見るだけでなく、現在の健康状態から、怪我の後遺症、筋力についてトレーナーが細かく調べる様子は、とても面白いです。
そんな中、ルーカスだけには、もう一つのチャンスが与えられました。ロイヤル バレエ スクールのアッパー スクールの、最終オーディションへの招待状です。
ここで驚くのが、二つの学校の違い!
ロイヤル バレエ スクールの授業料が年間4万ユーロに対して、KHiOは無料、しかも設備はとても良く、大学入学資格も手に入れられます。ロイヤルのオーディションには1200人が応募して合格は30人という難関です。もし合格出来ても、ロイヤルに行くことは、家族や友人とも離れることを意味していて、ルーカスは悩みます...。
舞台として何度も出て来る「オスロ新国立オペラハウス」は、エジプトのアレクサンドリア図書館やベルリンのノルウェー大使館のデザインで知られる「Snøhetta:スノヘッタ建築事務所」の設計により、2008年にオープンしました。
大理石と、巨大なガラスのファサード、そして大きな屋根が特徴的なこのオペラハウスは、海面からそそり立つ氷山を想起させるデザインとなっています。
一方で、オペラはもともと大衆向けの娯楽であり、特定の人だけでなく広くみんなに開かれるべきもの。緩やかなスロープ状の屋根は、訪れるどんな人も受け入れる広場のような場所として、いつもオープンだということを表しています。
建築というよりも、ランドスケープ的な建造物で、周囲の風景とも馴染んで見事です。内部空間は北欧らしく、木をふんだんに使用していて、シャープな造形と、親しみやすさ・暖かさの両方を実現しています。
内部は外観と印象を連続させながら、様々な素材を併置させて、色もシンプルながら複数組合わせて、特徴ある空間がつくられています。クロークからトイレに向かう通路部分の壁面は、柔らかく光が溢れる冷たさが印象的です。一方で、トイレは重く、ちょっと神秘的ともいえる黒い壁面として、コントラストを生んでいます。
このダイアモンド型の特徴的な壁面デザインは、国際コンペで選ばれた、現代を代表するアーティスト、Olafur Eliasson(オラファー・エリアソン)によるものです。
この建築は、2009年度ミース・ファン・デル・ローエ賞を受賞。また、バルセロナで開催された建築フェスティバル「World Architecture Festival-WAF」の、文化施設部門賞も受賞しています。
WAFの審査員は「都市再開発プロジェクトの中核となるオペラハウスは、早くも多くのオスロ市民に親しまれている。規模と質、意欲において、オペラハウスはノルウェー建築の水準を、より高めることとなった」と評しています。一躍、ノルウェーを代表する建築となりました。
東京にも、本当に市民に愛される文化施設が欲しいですね。
ルーカスが、オーディションに向かう場面では、建築界では有名な、ロイヤル オペラ ハウスとバレエ・スクールとを繋ぐ「The Bridge of Aspiration」が見られます。
正方形フレームが、回転するようにガラスで繋がれ、ダンスの流動的な動きと優美さを表現しています。歴史的な建造物とモダンなデザインが同居する、ロンドンらしい風景です。
ドキュメンタリーでもあり、あまり装飾的すぎる音楽は使われていない印象です。クラシック調の曲からポップな曲まで、北欧センスが光る音楽は、各々のシーンによく合っていて心地よいです。
8月29日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンク他、全国順次公開。
https://www.youtube.com/watch?v=6YQGMcHopwI&feature=youtu.be
監督:ケネス・エルヴェバック
出演:ルーカス・ビヨルンボー・ブレンツロド、シーヴェルト・ロレンツ・ガルシア、トルゲール・ルンド
編集:クリストファー・ヘイエ
音楽:ヘンリク・スクラム
原題:Balletgutene(2014/ノルウェー/75分/16:9/デジタル)
配給・宣伝:アップリンク
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