野島孝一の試写室ぶうらぶら シネフィル版 第7回:シネフィル新連載
「約束の地」「WISH I WAS HERE 僕らのいる場所」「ルック・オブ・サイレンス」
「WISH I WAS HERE 僕らのいる場所」
「WISH I WAS HERE 僕らのいる場所」は、ザック・ブラフが主役を演じるとともに監督・脚本も担当した。
サンダンス映画祭で評判になったアメリカのインディーズ作品。
仕事のない俳優のエイダン(ザック・ブラフ)は、妻(ケイト・ハドソン)が稼ぎ、父親が子供たちの私立学校の学費を払っている。
しかし父親ががんになり、治療費のため子供の学費が払えなくなった。
一方、エイダンの弟は、オタクで父親と仲たがいをしている。
死期の迫った父親と弟の仲を修復できるのか。
この映画もユダヤ人の家庭。アメリカ社会におけるユダヤ人の影響力を感じさせる。家族の絆を現した映画が悪いはずはないが、そうかといって才気を感じさせられるほどではなかった。
ミッドシップ配給。初夏新宿シネマカリテほか全国順次公開中。
「約束の地」リサンドロ・アロンソ監督
「約束の地」は、リサンドロ・アロンソ監督のアルゼンチン、デンマークなど合作。
第67回カンヌ国際映画祭国際映画批評家連盟賞受賞作品。
まず目についたのは、縁を丸くしたスタンダード・カラー画面。
戦後間もなくのテクニカラー映像のようだ。
1882年のアルゼンチン・パタゴニア。
デンマーク人のエンジニア、ディネセン大尉(ヴィゴ・モーテンセン)は15歳の娘とパタゴニアに来ている。あるとき、娘が荒野で突然姿を消してしまった。
大尉は捜し歩き、奇妙な犬に導かれて岩山で不思議な体験をする。
いかにも批評家連盟のメンバーが選びそうな不可解な映画。
映像はとてもいいのだが、ロングショットばかりでアップが極端に少なく、ストーリーばかりか映像もわかりづらかった。
ブロードメディア配給。6月13日、渋谷ユーロスペースほか、全国順次公開中。
「ルック・オブ・サイレンス」
「ルック・オブ・サイレンス」は、「アクト・オブ・キリング」の続編のようなドキュメンタリー映画。
インドネシアでは1960年代、100万人もの人々が共産主義者の名のもとに虐殺された。
ジョシュア・オッペンハイマー監督が、その加害者をインタビューしたのが、「アクト・オブ・キリング」。
「ルック・オブ・サイレンス」は、兄を共産主義者として虐殺された弟が、当時殺害に手を下した人間を訪ねて回る。
日本ドキュメンタリー映画「ゆきゆきて神軍」を思い起こさせる。
加害者は、多くの村人を殺したことを悪いとも思っていないのが特徴。
むしろ正しいことをしたと胸を張っている。
どうも見ていて価値観が異なるというか、気分が悪くてしょうがなかった。ヴェネチア映画祭で5冠の作品だが、この映画はどうも好きになれない。
トランスフォーマー配給。初夏公開、全国順次公開中。
野島孝一の試写室ぶうらぶら 、オリジナル版は、アニープラネットWEBサイト
に掲載されています。
野島孝一@シネフィル編集部
アニープラネットWEBサイト
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