映画『エレファント・ソング(原題: Elephant Song)』
『わたしはロランス』『トム・アット・ザ・ファーム』『Mommy マミー』などで注目を浴びるカナダの鬼才グザヴィエ・ドランが主演を務め、精神科病棟で繰り広げられる心理劇を描いたサスペンスドラマ、いや、スリラーかな。
ある人物が行方不明になった事件の鍵を握る青年と精神科医が対峙し、隠されていた意外な事実が浮き彫りになる。
メガホンを取るのは『合衆国崩壊の日』などのチャールズ・ビナメ。原作・脚本はニコラス・ビヨン。『スター・トレック』のブルース・グリーンウッド、『カポーティ』などのキャサリン・キーナー、『メメント』などのキャリー=アン・モスら実力派が共演する。
息詰まる展開に加え、俳優としても非凡な才能を発揮するグザヴィエ・ドランの熱演も必見。グザヴィエ・ドランが他人を操る主人公をとにかく楽しそうに演じてる!! 本人が熱望しただけあって、まさにハマり役。魅力的で、愛おしくて、切なくて、淋しげで、妖しげなドランの表情や演技にボクまで翻弄された…。
これ、監督、すごくやりづらかったんじゃないかと心配になっちゃう…。そもそも脚本が良くできてるよね。会話でひとつひとつ重ねていく整然とした感じは緊迫感や迫力があって良いね。
心理戦を繰り広げる戯曲の映画化は単調な会話劇になりがちだけれど、ドランの軽やかな(?)演技、ブルース・グリーンウッドとキャサリン・キーナーら実力派の丹念な表現による圧倒的な名演、脚本と演出によってダイナミズムが加えられて見応えたっぷりですごく楽しめた。
部屋(?)病室(?)の雰囲気、回想シーンの挿み込み方、暖色と寒色の対比が印象的で静かな中に狂気を感じる画作り、場面転換なども絶妙だ。
観後は何とも尾を引く感じというか不思議な感じや切なさなどの余韻が残り、何だか心がザワザワしたまんまだ。
“俳優”ドランの真骨頂とも言え、演技合戦を堪能できる素晴らしい作品だ、とは言えるが、うーん、ドランが監督だったらどうなったろう?と思わずにはいられない…。
シネフィル編集部 あまぴぃ