映画『真夜中のゆりかご(原題: En chance til)』
『未来を生きる君たちへ』で第83回(2011年)アカデミー外国語映画賞に輝いたデンマークの女性監督スサンネ・ビアと脚本家アナス・トーマス・イェンセンのコンビによる育児放棄、ドラッグ中毒、家庭内暴力といった現代社会が抱える様々な問題を盛り込んだサスペンスドラマ。
テレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズなどのニコライ・コスター=ワルドーを主演に『ある愛の風景』などのウルリク・トムセンらが出演。
やっぱり北欧は良質なサスペンスが多いですなあ。倫理的には難しい問題だし、許されざる問題だけれど、子を持つ親なら誰でも共感はできないまでも理解くらいはできるんじゃないかしら。
物語の展開が見事であっという間に引き込まれ、緊張感も途切れることがないまま、最後までずっとダレない。主人公がドツボにはまっていく感じがスリルたっぷりで心臓もドキドキのバクバク。
デンマークの美しいけれどどこか物哀しさを感じる風景、そして陽射しや空気感、色目を抑えた暗い画面も素晴らしい。美しい湖の水面の変化が主人公の心情を表しているようでとても印象的だ。
アップを多用して丁寧にじっくりと心理を描いててジワジワと重さを伝えてくるんだよね。特に瞳のアップは心の動きが良く伝わって、温度(?)や質感(?)もわかってとっても印象深かった。
主人公が自分のためではなく、壊れかけの妻のためというのが心苦しいし、いたたまれないんだけれど、突き放したままにしないところに女性監督らしい優しさが見え隠れしているような。
デンマークって幸福度が高いんじゃなかったっけね? これがリアル? 最後は救いがあったんだと思う。
切なくて胸が痛い映画。善と悪、幸せと不幸せ、いつでも簡単に行ったり来たりできる恐ろしさを感じた。2015年5月15日(金)公開。
シネフィル編集部 あまぴぃ
監督スサンネ・ビア
製作シセ・グラム・ヨルゲンセン
脚本アナス・トーマス・イェンセン
編集ペニッラ・ベック・クリステンセン
音楽ヨハン・セーデルクビスト
キャスト
ニコライ・コスター=ワルドウアンドレアス
ウルリッヒ・トムセンシモン
マリア・ボネビーアナ
ニコライ・リー・カーストリスタン
リッケ・メイ・アンデルセンサネ
原題 En chance til
製作年 2014年
製作国 デンマーク
配給 ロングライド