映画『ザ・トライブ(原題: Plemya)』。
第67回(2014年)カンヌ国際映画祭で批評家週間グランプリなどを受賞した他、世界各国の映画祭で話題となった全編手話によるウクライナ発の衝撃的な異色ドラマ。
全員ろうあ者の登場人物たちが愛と憎しみが渦巻く寄宿学校での驚愕の物語を全身を使って語り尽くす。
ウクライナの新人監督ミロスラヴ・スラボシュピツキーが脚本も手掛け、新星のグリゴリー・フェセンコとヤナ・ノヴィコヴァが主人公を熱演。
かつてないインパクトを与える構成に魅了される。いやあ、これは衝撃だ。
ボクの瞳を釘付けにする異様なパワーを秘めた傑作だよ。
吹替も字幕もない前代未聞(?)の手法に加えて、説明的な描写もまったくないけれど、
うーん、何だろう? 登場人物の心情が鮮やかに伝わってくる。
もしかしたらセリフよりも雄弁に彼らの心情を語ってるんじゃないかしら?
セリフがないせいで映像への没入度が増して、素早く、鋭く動く手や豊かな表情で怒りや孤独、欲望や絶望、痛みといったひとりひとりの生々しい感情がひしひしと伝わってどんどんスリルに満ちていくの。
さらに息遣いや身体の動き、言葉にならない声など様々な“音”がボクの心にさざ波を立てて、ぐんぐんと緊張感を高めていくんだ。
暴力やセックスの描写も散りばめられてはいるものの、いちいち映像がキレイで、せわしなく動き回る登場人物とそれを追うカメラ(横移動と縦移動の温度差が秀逸)、画面を巧みに使ったロングショットの美しさ、1シーン1カットの長回しの多用、感情を一切排除した冷徹な演出が素晴らしい(ドキュメンタリタッチと言っても良いのかな)。
寄宿学校の内部が出口のない迷宮のように見える演出? カメラワーク? もすごい。いかにも“青春残酷物語”な激しいラスト。
しばらく残るな…。
これまで体験したことのない感覚に包まれて、すごくグッタリした。心地良いといえば心地良いんだけれど…。覚悟して観て欲しい作品。
シネフィル編集部 あまぴぃ