ベン・ウィショー最新主演作『追憶と、踊りながら』監督のパーソナルな部分に迫るインタビュー!

HTMLコード
画像1: (c) LILTING PRODUCTION LIMITED / DOMINIC BUCHANAN PRODUCTIONS / FILM LONDON 2014

(c) LILTING PRODUCTION LIMITED / DOMINIC BUCHANAN PRODUCTIONS / FILM LONDON 2014

『クラウド アトラス』や「007」シリーズのQ 役など数々の作品で強い印象を残し、現在の英国俳優ブームをベネディクト・カンバーバッチらとともに牽引する、ベン・ウィショーの最新主演作である本作。共演にはアジア映画の伝説のヒロイン、チェン・ペイペイ。サンダンス映画祭のオープニングを飾り、見事な脚本と演出力が絶賛された若手監督であるホン・カウ監督の貴重な来日インタビューです!



【あらすじ】
ロンドンの介護ホームでひとり暮らすカンボジア系中国人のジュン(チェン・ペイペイ)。英語ができない彼女の唯一の楽しみは、優しく美しく成長した息子のカイ(アンドリュー・レオン)が面会にくる時間。しかしカイは、自分がゲイで恋人リチャード(ベン・ウィショー)を深く愛していることを母に告白できず悩んでいた。そして訪れる、突然の悲しみ。リチャードはカイの”友人”を装ったまま、ジュンの面倒をみようとするが……。息子の真実を知らない母、真実を隠し続けようとする恋人。あふれる想い、とまらない涙。そして最後に希望の音色を響かせる。

画像2: (c) LILTING PRODUCTION LIMITED / DOMINIC BUCHANAN PRODUCTIONS / FILM LONDON 2014

(c) LILTING PRODUCTION LIMITED / DOMINIC BUCHANAN PRODUCTIONS / FILM LONDON 2014

ホン・カウ/ Hong Khaou(監督・脚本)
1975 年10 月22 日、カンボジアのプノンペン生まれ。現在39歳。ヴェトナムで育ち、後にロンドンへ移住。1997 年にUCA 芸術大学を卒業。当初はファイン・アーツを目指すが、映画により惹かれるようになり、映画製作を学ぶ。その後、BBC とロイヤル・コート劇場の【50人の新進作家】プログラムに選ばれ、多くの企画に加わって脚本の経験を積む。独立系映画会社で働きながら、映画の製作を始め、2006 年のベルリン国際映画祭で上映された『Summer』、2011 年のサンダンス映画祭で上映された『Spring』、2 本の短編で大きく注目される。2013 年にはスクリーン・デイリー紙が選ぶ【明日のスター】に選ばれるなど次世代を担う才能と期待されている。本作が初の長編。好きな映画監督は、フェリーニ、ファスビンダー、イギリス映画ならヒッチコック、デイヴィッド・リーン、マイケル・パウエルなど。より新しい時代の監督では、本作を作る際に影響を受けたジョン・セイルズ、そしてキシェロフスキとダルデンヌ兄弟を愛する。

『追憶と、踊りながら』では、監督ご自身のパーソナルな経験が投影されていますが、そういった部分で脚本を書いているときなどに躊躇いや葛藤はありましたか。

いくつかのポイントにおいては悩んだ部分がある。実際の経験を活用するというのは、鋭く描写する上で助けになるが、逆にそのままでは退屈になってしまう恐れがあるだろう。膨らませてドラマティックにしていくことこそが、映画の中では重要であると思うんだ。ただ、母親であるジュンのキャラクターを描くときには自分の母親を投影していると誤解を受けるのではないかと考えたりしたよ。ただ、これは劇映画であって、完全なフィクションなんだ。そういった一線を引くことで、ある時点からは葛藤もなく、自分の”作品”として突き進むことができた。

ご自身のパーソナルな投影ということですが、監督ご自身とカイにおける違いと共通点はなにかありますか。

共通点も全く違う点も色々だね。自分はカイとはちがってゲイであることをカミングアウトできたということが明らかに違う点だけれども、カミングアウトに対しての恐怖心は並々ならぬ想いだった。実際には僕がカミングアウトすると母は受け入れてくれて、「犯罪者でもレイピストでもないんだから。」と言った。比べないでほしいとは思ったけれどね(笑) 本作はキャラクターにおいて、ゲイだからこうであるべきというような映画の撮り方はしていなくて、普通に一人の人間として、立体的に人物を描きたいという思いを持ってつくったんだ。たまたまそれがゲイであったけれど、とにかくありのままに描くことをやりたかった。

ベン・ウィショーの演じるリチャードとアンドリュー・レオンの演じるカイ、二人のゲイのカップルの親密なベットシーンはとても印象的で美しいシーンだと感じました。

この親密なシーンはとても大事なシーンで、彼らが二人でいるシーンは映画の中で3シーンだけなんだ。彼らの愛情と親密さ、互いに対しての優しさを十分に伝えることができるのだろうかという心配は常にしていて、シーン数を増やそうかとも思ったんだけど、反対にそれを増やすとこの作品のポイントとなる“不在”、不在であるからこそのその人を懐かしむという気持ちが観客にとって薄れてしまうと思った。少ないシーン数で不在を表すことで、強く恋しく想う感情がこの映画の中で、より強く表れると思ったんだ。
だから、このシーンは大事なんだ。今説明した内容を役者さんたちにも説明したよ。どれだけこのシーンが大事で、どれだけこのシーンだけしかないのに二人の関係を描き切らなきゃいけないかっていうことをね。リハーサル中に綿密に話し合った。プライベートなところを覗いてしまったと観客が思ってくれるくらいに自然にシーンが展開しないといけないと考えていて、ベン・ウィショーが素晴らしい役者であると感じたのはこのシーンで彼は普段より小さい声で、もっと囁くように語りかけたんだ。実際ふと考えてみると、当たり前でリアルなことだった。そこがやっぱりベンの演技で、改めて感じた。このように撮りたいと伝え、俳優からでてくる演技があると感じたよ。

そのベットシーンもそうですが、細部にわったこだわりが伝わってきました。細かい台詞だけでなく、音楽や美術もそうですね。特に音楽(『夜来香』、『Sway』)は印象に残りましたが。これはもう脚本の最初の構想から考えていたのでしょうか。

音楽も含めて全て脚本の中に書き込まれているものだった。ただ、脚本を書いていくプロセスのなかで、あるドキュメンタリーを観た。その中で、アメリカの科学者が新しい一つのアイデアとしてお年寄りが住む場所として、自分の幸せだった記憶を彷彿させるようなノスタルジックな環境に住むといい影響があるとされていたんだ。これは凄くテーマとマッチすると思った。過去の中に失った自分の記憶の中に生きている母親(ジュン)が住む場所がそういう意味をもつ。これで美術に意味を与えた。
もう一つ本当に撮影の状況の中で変わった部分があって、それは先ほども話していたリチャードとカイのラブシーンなんだけど、音響が「ちょっと音がずれてる」っていった。「でも、この音が外れている感じが面白いよ。」って、それで観てみるとこれが面白かったんだ。やはりこれも不在のテーマに沿っていると感じた。過去と現在であり、一緒にいるても一緒にいない、そのズレが表現できたから、それで取り入れたんだ。

この映画において“老いた”母親、ジュンの生活や想いが細やかに演出されていますが、監督ご自身は39歳ですね。演出において工夫された点はありますか。

低予算の映画だったから、そのような部分に力を入れた。他の要素は強みにならないから、人間ドラマを大切にしたんだ。これは子供の映画ではなく、大人の映画だと思っている。自分が老人でないとしても、ここではジュンだけど、その人のことを真摯に考えて物語をつくっていくという作業は映画づくりでは大切だと思う。

ジュン役のペイペイさんの演技も本当に素晴らしかったです。この映画にでている俳優はベテラン、若手、未経験者など様々でしたが、その経験の差のある俳優陣をまとめていくことや、演技指導の上での苦労についてお聞かせください。

このコンビネーションは様々で、本当に苦労したし、緊張した。リハーサルの時間が2週間しかなかったから、そこで役者さん達とコミュニケーションをできるだけとるというのが、自分ができる最大のことだったんだ。できることならもう1週間時間があれば、色々な違うトーンも試せたのにと思うけど。現場では役者への伝え方に工夫をした。一つよかったと思うことは、僕自身中国語ができるから、ペイペイさんに話すときは中国語を使って、 他はわからないから、プレッシャーから逃れられた。ベンにはメモを渡して伝えることなどの知恵をこらしたこともあったよ。ただ一ついえることは、みんながこの低予算映画にどうして参加したのかということなんだけど、それはこのストーリーを愛してくれたからであって、このストーリーをよい映画にしたいという想いをみんなが持っていてくれたから、向かう先が同じであったという点で、このアンサンブルを一つにまとめられたというのがあるね。

今回の作品は監督にとってデビュー作であり、自身のパーソナルな内容に触れたものでありましたが、今後の展望や次回作の構想はありますか。

今次の脚本を書いていて、それは現在のヴィエトナムで展開する話なんだ。現在のことを描くけど、ヴィエトナム戦争の影響から逃れることのできないという点をテーマとしておいているよ。

過去と現在の密接な関係性という点では、本作と近いところがあるのですね。楽しみにしています。

映画『追憶と、踊りながら』予告編

youtu.be
(http://www.youtube.com/watch?v=_Hy3LH-kj-cc) LILTING PRODUCTION LIMITED / DOMINIC BUCHANAN PRODUCTIONS / FILM LONDON 2014

5月23日(土)より
新宿武蔵野館、シネマ・ジャック&ベティほか全国順次ロードショー
--------------------------------------------------------------------------------------------------------

監督・脚本:ホン・カウ     出演:ベン・ウィショー、チェン・ペイペイ、アンドリュー・レオン、モーヴェン・クリスティ、ナオミ・クリスティ、ピーター・ボウルズ 
主題歌:「夜来香」(李香蘭) 原題:LILTING   
イギリス映画|2014年|英語&北京語|カラー|1:2.35|5.1ch|86分|DCP 
後援:ブリティッシュ・カウンシル 
配給:ムヴィオラ   
公式サイト: www.moviola.jp/tsuioku  

This article is a sponsored article by
''.