映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』。
『バベル』などのアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥが監督を務め、落ち目の俳優が現実と幻想の狭間で追い込まれる様を描いたブラックコメディ、ダークファンタジー。
人気の落ちた俳優がブロードウェイの舞台で復活しようとする中で、不運と精神的ダメージを重ねていく姿を映す。
ヒーロー映画の元主演俳優役に『バットマン』シリーズなどのマイケル・キートンが扮する他、エドワード・ノートンやエマ・ストーン、ナオミ・ワッツ、ザック・ガリフィアナキス、アンドレア・ライズボローらが共演。
不条理なストーリーと独特の世界観、まるでワンカットで撮影されたかのようなカメラワークにも注目。
第87回(2015年)アカデミー賞で作品賞はじめ監督、脚本、撮影賞受賞。
これはね、一緒に“長い悪夢”を見ているような不思議な体験だよ。虚実ないまぜの世界をひとつの画面内に視覚化する手法は素晴らしく、また全編ワンカットのように切れ目のない映像は舞台裏の臨場感や孤独の閉塞感、浮遊感を表してて驚くほどだ(映画と演劇の境目を描いてもいるのかな)。
このカメラの動きが本当に幻想的で不思議なんだ。このあたりに目を奪われるんだけれど、かつてスーパーヒーロー役で人気を誇った主人公を実際に『バットマン』シリーズで主役を張ったマイケル・キートンが演じるところが本作の最大のポイントと言えるだろう。
ハリウッドの安易な商業主義的慣習を皮肉るシーンは多い。他にもブロードウェイや評論家、SNSを皮肉ってる。
一方で作品内のカーヴァー原作の劇中劇が主役の実生活と重なっていく感じが秀逸で、ユーモアにどんどん苦みが増してブラック化していくんだ。
もちろん役者陣の演技も素晴らしい。マイケル・キートンは神懸かってるし、エマ・ストーンの表情だけの演技はとても印象的だ。
あとは全編流れるアントニオ・サンチェスによる生ドラムのみの即興的な音楽が素晴らしく、時折画面と一体化して気持ちいい。
でも、どうだろう? 何から何まで素晴らしいのに、そこにボクが唖然としたせいか、誰にも共感できないせいか、映画の中にいるような感じなのに置いてかれてるように感じるせいか、イマイチ物足りなく感じたかなあ。
いろいろ敵に回して露骨に皮肉ってる感じが好きじゃないのかなあ、ボク。
いやいや、本当に素晴らしい作品だけどね。オススメですわよ。
シネフィル編集部 あまぴぃ