六本木の森美術館において、「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」が6月8日(日)まで開催されています。
本展のタイトルにある「マシン」は、産業革命期の重工業的な機械ではなく、コンピューターやハードウェアなどの現代的な機器を指しています。20世紀初頭に機械のスピードや力強さが称えられた「マシン・エイジ」との対比として、本展では21世紀のコンピューターやインターネットを背景に展開される新たな「マシン」時代のアートを取り上げます。「ラブ」は、ゲームやマシンに抱く熱狂的な感情を象徴し、さらにAIが進化した未来において、ロボットやアンドロイドが感情や意識を持ちうるかという哲学的な問いも投げかけています。
参加作家は下記の12組です。
ビープル
ケイト・クロフォード、ヴラダン・ヨレル
ディムート
藤倉麻子
シュウ・ジャウェイ(許家維)
キム・アヨン
ルー・ヤン(陸揚)
佐藤瞭太郎
ジャコルビー・サッターホワイト
ヤコブ・クスク・ステンセン
アドリアン・ビシャル・ロハス
アニカ・イ
「本展の特徴とみどころ」が四つ挙げられています。
・多分野の融合による表現
アート、デザイン、ゲーム、AI研究など多様な分野の12組の作家が、生物学や哲学、音楽、プログラミングなどの専門家と協働し、新たな表現を展開。
・デジタルと現実の融合体験
デジタル技術を用いて制作された絵画や彫刻、映像と空間が連動するインスタレーションにより、仮想と現実がつながる没入的な体験が可能。
・国際的に評価されたアーティストが集結
アルス・エレクトロニカ賞やドイツ銀行アート賞など、世界的なプライズ受賞作家が多数参加し、現代アートとメディア・アートの最前線を紹介。
・観客参加型のインタラクティブ作品
AIとの対話やゲームプレイを通して作品に参加できる体験型展示。インディー・ゲームセンターでは、来場者同士で選ばれたゲームを実際に楽しむことができる。
本展の構成は大きく四つのセクションで出来ており、その導入部には用語集のエリアがあります。これらの用語解説は生成AIが作成したものだそうです。

展示風景:用語集のエリア
photo©︎moichisaito
四つのセクションの初めは「デジタル世界のキャラクター、生命、人間や都市とのインタラクション」です。メタバース空間で生まれた最初の人間《ヒューマン・ワン》(ビープル、2021-)から始まります。デジタルでありながら立体的な映像作品で、無限に歩き続ける人物を描いています。続く佐藤瞭太郎は、ゲーム用の無名キャラクター・データ「アセット」を映像作品に大量に用い、不穏で不条理な映像世界を通して、命の代替性やその重みを問いかけます。ディムートは、AIと人間の関係を主題に、AIキャラクターと観客との哲学的対話を可能にする《エル・トゥルコ/リビングシアター》を展示しました。AIの知性と演出性が交錯する空間を創出します。キム・アヨンは、コロナ禍の配達文化を題材に、都市・時間・移動をテーマとした映像作品《デリバリー・ダンサーズ・スフィア》を展開し、ソウルの街を疾走するラブストーリーとしても描いています。

展示風景:ビープル《ヒューマン・ワン》(2021-)
photo©︎moichisaito

展示風景:佐藤瞭太郎《アウトレット》(2025)
photo©︎moichisaito

佐藤瞭太郎 展示風景
photo©︎moichisaito

展示風景:ディムート《総合的実体への3つのアプローチ》(2025)
photo©︎moichisaito

展示風景:キム・アヨン《デリバリー・ダンサーズ・スフィア》(2022)
photo©︎moichisaito

展示風景:キム・アヨン《デリバリー・ダンサーズ・スフィア》(2022)
photo©︎moichisaito
二つ目のセクション「テクノロジーと人間の精神性、仏教的な世界観」は、自身も仏教の実践者であるルー・ヤンの作品が出迎えます。ルー・ヤンは仏教の実践者として、アバター「DOKU」を通じてスピリチュアルな映像空間を旅し、人間の身体・精神・アイデンティティを問いかけます。一方、ジャコルビー・サッターホワイトは「慈悲の瞑想」をテーマに、振付や映像、音楽が融合した万華鏡的なマルチメディア作品を展開しています。両者ともアバターやCG、サウンドを駆使し、仏教的思想と最先端テクノロジーの融合を体験的に表現しています。

展示風景:ルー・ヤン《独生独死一自我》(2022)
photo©︎moichisaito

展示風景:ジャコルビー・サッターホワイト《メッター・プレイヤー(慈悲の瞑想)》(2023)
photo©︎moichisaito
三つ目は「テクノロジーが描く風景―地質学的時間から果てしない未来へ」です。シュウ・ジャウェイは金属や鉱物といった物質的側面からテクノロジーを捉え、シリコンを通じて人類史を越える時間スケールに思考を広げます。藤倉麻子は東京郊外の風景と西アジアの砂漠を重ね、3DCGで独自の都市的オアシスを構築しました。ヤコブ・クスク・ステンセンは砂漠の生態系データをデジタル化し、変化し続ける仮想の湖を没入型インスタレーションで表現します。アニカ・イは自身のリサーチをもとにマシンに過去の作品やイメージを学習させ、新たな世界を創出しました。アドリアン・ビシャル・ロハスは独自開発のソフトウェアを用い、過去と未来の時空をつなぐ風景を描き出します。

展示風景:シュウ・ジャウェイ《シリコン・セレナーデ》(2024)
photo©︎moichisaito

展示風景:藤倉麻子《インパクト・トラッカー》(2025)
photo©︎moichisaito

展示風景:ヤコブ・クスク・ステンセン《エフェメラル・レイク(一時湖)》(2024)の部分
photo©︎moichisaito

展示風景:アドリアン・ビシャル・ロハス《無題21(「想像力の終焉」シリーズ)》(2023)
photo©︎moichisaito
最後のセクションは「テクノロジーと人間―500年間の関係」です。AI研究の第一人者ケイト・クロフォードと情報通信技術(ICT)研究者・アーティストのヴラダン・ヨレルによる《帝国の計算》は、テクノロジーと権力の関係を16世紀から現代まで500年以上にわたって可視化した、全長24メートルのインフォグラフィック作品です。戦争、AI、気候危機といった現代の課題を、活版印刷や植民地主義など過去の歴史的転換点と結び付け、テクノロジーの本質を長期的視野で問い直します。

展示風景:ケイト・クロフォード、ヴラダン・ヨレル《帝国の計算:テクノロジーと権力の系譜 1500年以降》(2023)
photo©︎moichisaito
本展は、テクノロジーと人間の関係性を多角的に探求し、私たちの未来への想像力を刺激する場となっています。最新技術とアートの融合によって生まれる新たな表現や体験を通じて、現代社会が直面する課題や可能性について考える貴重な機会を提供しています。ぜひ、実際に訪れてデジタルアートのフィジカルな可能性を体感してみましょう。
概要
会期:開催中〜2025年6月8日
会場:森美術館
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 53階
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00〜22:00(火〜17:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休
料金:[平日]一般 2000円 / 学生(高校・大学生) 1400円 / 子供(中学生以下) 無料 / シニア(65歳以上) 1700円 [土日祝]一般 2200円 / 学生(高校・大学生) 1500円 / 子供(中学生以下) 無料 / シニア(65歳以上) 1900円
公式サイト:https://www.mori.art.museum/jp/
シネフィルチケットプレゼント
下記の必要事項、をご記入の上、「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、無料観覧券をお送り致します。この観覧券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2025年5月20日 火曜日 24:00
記載内容
1、氏名
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の郵便番号、電話番号、建物名、部屋番号も明記)
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