『息を殺して』『泳ぎすぎた夜』の五十嵐耕平監督の最新作となる短編「水魚之交(英題:TWO OF US)」がただいま開催中の第71回サン・セバスティアン国際映画祭サバルテギ=タバカレラ部門にてプレミア上映され、上映前には監督による舞台挨拶が、上映後には観客とのQ&Aが行われました。

第67回ロカルノ国際映画祭新鋭監督コンペ部門に正式出品された『息を殺して』(2014)や、第74回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門に正式出品された『泳ぎすぎた夜』(2018)など、世界が注目する新鋭監督の一人である五十嵐耕平監督の最新作「水魚之交』は、海の見える古い観光ホテルへ旅行に来た佐野と宮田、2人の幼なじみが過ごす時間を描いた20分の短編作品。陰謀論に傾倒する宮田と、そんな宮田の考えを否定する佐野は口論になるが、その時、認知症を患う宮田の父親から電話がかかってきて……。

画像1: ©2023 NOBO LLC.

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上映尺やジャンルに捉われることなく、挑戦的な作品や新たな才能を発掘するサン・セバスティアン国際映画祭サバルテギ=タバカレラ部門。五十嵐監督は前作『泳ぎすぎた夜』に続いて、同部門2度目の選出となる。

画像: 五十嵐耕平監督

五十嵐耕平監督

また今回同部門には、『泳ぎすぎた夜』で共同監督を務めたダミアン・マニヴェルの監督最新作『L'ÎLE(英題:THE ISLAND)』、同じく助監督を担当した平井敦士監督の短編「ゆ(英題:OYU)』も同時選出されており、同プログラム内で一挙上映される運びとなった。
それぞれの最新作においても、平井監督は『L'ÎLE』の助監督を、マニヴェル監督は「ゆ」そして「水魚之交」のプロデューサーを、そして五十嵐監督も「ゆ」のプロデューサーを務めており、互いの作品づくりに協力し合う3人の監督たちの晴れ舞台となった。

画像1: 第71回サン・セバスティアン国際映画祭にてプレミア上映!五十嵐耕平監督の最新作『水魚之交』-現地イベントオフィシャルレポート

上映前には五十嵐監督、マニヴェル監督、平井監督、そして『L'ÎLE』のキャスト陣が登壇し、会場に足を運んだ多くの観客に向けて挨拶を行った。五十嵐監督は本作の着想について「ストーリーを考えていた時期がちょうどコロナ禍にあたり、その頃は、記憶や歴史に関して”私が正しいんだ”と陰謀論めいたことを言う人たちが出てきて混乱していた時期でした。ただ私としては、それよりも個人的な関係をどう築くかが大事だと思っていた。そういう話をやりたいと思ってできたのがこの映画です」と語ったほか、「俳優の佐野(弘樹)くんと宮田(佳典)くんから一緒に映画を作ってほしいと連絡があり、長編の企画を考えていたがそのうちにコロナになり世界が変わってしまった感じになってしまった。そこでまず短編を作ろうということになりました」と話し、制作のきっかけが俳優二人からの声かけであったこと、また更に、本作「水魚之交」の設定や世界観を下地にした長編映画を現在製作中であることを明かした。

上映後には観客とのQ&Aも実施され、さまざまな質問が寄せられた。
作品の編集の進め方について問われると、「今回撮影期間が短く限られたショットを撮るスタイルだったため、編集で大きく変えることはしませんでしたが、編集していくうちにだんだんとファンタスティックなものになっていきました。それは編集しながら見つけていったものだと思います」と作品が出来上がる過程を振り返りました。

画像2: 第71回サン・セバスティアン国際映画祭にてプレミア上映!五十嵐耕平監督の最新作『水魚之交』-現地イベントオフィシャルレポート

また、ショットの中にいない人物の声をはじめとした特徴的な音の使い方に関して、「僕が興味を持っているのは”映画には記憶がある”ということ。映画というのは、何かが映っていて、何かが記録されている装置だということがまず重要です。その上で、画面に映ってないもの、記録されてないかもしれないようなこと、それは忘れ去られたものかもしれないし、誰も見なかったものかもしれないけれど、その”何か”がいつしか画面の中に入ってくる、そういう映画を撮りたいと思っているからかもしれません」と映画制作に対する姿勢を覗かせる回答も。鋭意製作中と語る長編映画の完成への期待も高まるイベントとなった。

出演:佐野弘樹、宮田佳典

監督・編集:五十嵐耕平

脚本:五十嵐耕平、久保寺晃一
企画:宮田佳典、佐野弘樹

プロデューサー:大木真琴、江本優作
共同プロデューサー:ダミアン・マニヴェル、マルタン・ベルティエ

撮影:髙橋航
録音:高橋玄
サウンドデザイン:野村みき
助監督:太田達成

2023年/日本=フランス/20分 
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