6月2日(金)より公開となる是枝裕和監督作品『怪物』が、第76回カンヌ国際映画祭 「コンペティション部門」に正式出品され、是枝裕和監督、脚本の坂元裕二さん、出演者の安藤サクラさん、永山瑛太さん、黒川想矢さん、柊木陽太さんの6名がカンヌ入りし、レッドカーペットを歩き公式上映の会場に入りました。
昨日華々しく開催された映画祭のオープニングセレモニーでも、その人気の高さが伺えた是枝監督最新作『怪物』(インターナショナルタイトル:MONSTER)が、いよいよコンペティション部門での公式上映の日を迎えた。
レッドカーペット
レッドカーペットセレモニーが始まった当初は雨がポツポツ振る中、まずは招待されたセレブ達が登場、ペドロ・アルモドバル監督やイーサン・ホーク、ロマン・デュリス、ヴィオラ・デイヴィス、ジェンマ・チャン、世界的人気K-POPグループ、BLACKPINKのロゼらが登場するなど、レッドカーペットが一層盛り上がり、いつの間にか雨もあがり澄み渡った空の下、大勢の取材陣や観客が注目する中に『怪物』一行が到着。待ちわびていた熱狂的なファンの歓声に迎え入れられた。
アルマーニのタキシードで身を包み、再び慣れ親しんだカンヌに戻ってきた是枝裕和監督に続き、グッチのタキシードにオールバック姿でスタイルの良さが際立つ永山瑛太、さらに、所属事務所社長で俳優としても大先輩の舘ひろしがこの日の為に仕立ててくれたというTAGURUのタキシードでキリっとキメた黒川想矢、是枝監督と同じアルマーニのタキシードに身を包みはにかむ柊木陽太、さらには、脚本家の坂元裕二と、男性陣が黒いタキシード姿で登場する中、ひときわ目を引き注目を集めたのは、シャネルの白いドレスとジュエリーに身を包んだ安藤サクラだ。眩しいほどの輝きを放ちながら、『万引き家族』以来2度目のカンヌコンペティション部門のレッドカーペットに参加した。
是枝監督は、ファンからのサインや写真撮影にも応じるなど、ファンサービスもたっぷり。
全員が一列に並び、時に手を繋いだり、談笑しながら、和やかな雰囲気でレッドカーペットを進む中、カンヌ常連の是枝監督は、子役たちに「カメラに向かって手をふろう」と声をかけるなど貫禄の佇まい。安藤サクラ、永山瑛太も時に子役たちをフォローしながら、和やかにセレモニーを楽しみ、黒川と柊木は、弾けんばかりの笑顔で、世界から集まったメディアを魅了した。鑑賞に訪れたゲストからもその注目度がうかがえる『怪物』チームのレッドカーペットは、公式上映に向けて、盛り上がりを見せるものとなった。
コンペティション上映
フランス時間5月17日(水)コンペティション部門での公式上映を迎えた『怪物』(インターナショナルタイトル:MONSTER)。是枝裕和監督をはじめ、脚本家の坂元裕二、主演の安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太が華やかなレッドカーペットを歩き、会場内で大きな拍手で迎えられた後、着席し上映が開始となりました。
エンドロールが始まると、2200人もの観客を収容する会場からは拍手がおこり、坂本龍一さんへの追悼文が流れた際には、さらに割れんばかりの大きな拍手が沸き、敬意を表するような歓声もあがり、その後も9分半にもわたるスタンディングオベーションが続きました。その間、監督は少しホッとしたような表情を見せながら、大きく会場内を見渡し、おじぎをしながら称賛にこたえ、両脇の安藤と永山ともハグをし、言葉を交わし、その喜びを分かち合いました。また脚本家の坂元ともしっかり肩を組み、『怪物』が多くの観客に届いた手応えを確かめ合い、称えあいました。
スタンディングオベーションの後、マイクを渡された是枝監督は「こんなに多くのスタッフとキャストに支えられて作ることができました。まずはそのスタッフとキャストに感謝します。そのスタッフとキャストの多くが今日ここに集まってくれたことがすごくうれしいです。でも色々な事情でみんながここに集まるわけにもいかなくて、でもここに来られないスタッフとキャストの思いもここ(胸に手をあてて)に抱いて今ここに立っているつもりです。戻って皆さんのこの拍手と、皆さんの顔を、ここに来られなかったチームのみんなに報告したいと思います。とても良いワールドプレミアになったとおもいます。有難うございました。」と語りました。
今回審査員長を務めるのは、昨年のカンヌで2度目となる最高賞パルム・ドールを受賞した『ザ・スクエア 思いやりの聖域』『逆転のトライアングル』のリューベン・オストルンド監督。さらに、審査員には俳優のブリー・ラーソンやポール・ダノらが名を連ねています。コンペティション部門に選出された計21作品の中から最高賞となるパルム・ドールをはじめ各賞が発表となるのは、フランス時間の5月27日の授賞式を予定しています。
是枝監督作品がカンヌ国際映画祭で【コンペティション部門】に選出されるのは、昨年の韓国映画『ベイビー・ブローカー』以来2年連続、7回目(カンヌ国際映画祭への出品自体は9回目)。なお昨年の『ベイビー・ブローカー』では、エキュメニカル審査員賞、そして主演のソン・ガンホが最優秀男優賞を受賞しました。これまでも、2004年『誰も知らない』では主演を務めた柳楽優弥が《最優秀男優賞》を受賞、2013年『そして父になる』では《審査員賞》を受賞、2018年『万引き家族』では最高賞である《パルム・ドール》を受賞しています。
日本用囲み取材
以下、質疑応答となります。ご確認の程、宜しくお願い致します。
●フジテレビ
映画が終わった後大きな拍手が送られていましたが、皆さんの反応をどう見られましたか?
坂元:カンヌのスタンディングオベーションしか見たことないものですから、どれくらいのレベルかわからず監督を見たら微笑んでいたのでいい反応だとおもいました。胸が震えるような思いがしました。
永山:まずは本当に感謝したい。是枝さん坂本さんさくらさん皆さん含め怪物に携われたことが今まで俳優やって来れて良かったなと思いました。
安藤:地響きのような拍手で圧倒されました。監督の姿を目に焼き付けようとずっと監督をみていました。なにより主役の(黒川)想矢と(柊木)陽太と一緒に感じられたら良かったのになと思いながらいました。夜遅い時間での上映だったので、2人が一緒にいられなかったのが、もやもやっとしました。しっかり2人に伝えたいなと思います。
監督 トップバッターだったんで責任重大だなと思いながら現場にいましたが、上映後の見てくれた方達の顔がとても輝いていたので、 良かったなって思いました
●共同通信
拍手も盛り上がって、観客の皆さんも泣いてる方もいらっしゃる方もいて、地元の方に感想をお伺いしたら、Beautifulという感想が出たのですが、どう思いますか?
安藤:激しく同意します。初めて見たときになんと美しいものを見たんだろう、頭で考える美しさでなく、生きとし生けるもの全ての美しさを感じたので激しく同意です
監督:なぜでしょうね。映画全体としては人と人が理解できない世界をずっと描いていくのだけど、見終わると、そういう光を感じるっていうのが、自分の映画ではない読後感で、それは坂元マジックだと思うのですが、それがしっかり届いたのではないかなと思います。
●北海道新聞
今回トップバッターということですが監督がリクエストしたんですか?
監督:結果的にそれは良かったなと思うのですが、そんなリクエストなんておこがましい。彼らがこの作品にとってベストな上映日時を決めてくれたんだろうと思っています。見終わってから、1日2日3日と反芻した方が良い映画なのでね。
●日経新聞
監督、何百回も観ていると思いますが、今日観てどう思われたのか?山田さん・川村さんが坂元さんと開発していた企画ですが、坂元裕二さん、坂本龍一さんと組んで何が加わったと思いますか?
是枝:なんか違いました?何が変わったか、か・・・。それは観た方が感じることだと思うんですよね。僕自身はこの作品の大ファンなんです。本当に面白いと思っています。自分で自分の映画を分析するのもなんだけど、通常はスライス・オブ・ライフを僕は描いているけど、今回は圧倒的に物語の推進力が強い。2018年12月にプロットをいただいて一緒に開発した一人ですが、描かれる人間たちの瑞々しさをしっかり描けてうまくいったんじゃないかと思います。そこがこの映画の強さじゃないかと思います。
●ハリウッドレポータージャパン
演じる上で気を付けたことと、意識したこと、脚本を読んでこんな風に表現したいということがあったら教えてください。
坂元:できるだけ嘘のない物語を作ろうと心がけました。面白いストーリーを作るために一人一人の登場人物が物語に振り回されないように、一人一人が生きている物語を作りたいなと心がけました。特に子供たちが出る物語なので、自分自身が子供と遠く離れた歳になったが、自分にとって都合の良い子供を描かないように気をつけました
永山:ぼくは保利先生を演じたのですが、これまでも坂元脚本を演じてきたのですが、一貫してあるのは「生きづらさ」。僕に書いてくれるキャラクターはある苦しみを抱えている。意識する事は過去とか未来を頭で考えることをやめて、今、共演者やカメラの前に立った時に、思考せずに本能的に感じられるか。今回は教師役で子供と向き合う役だったのですが、とにかく余計なことを考えない、現場では監督を信じてやりました。
安藤:現場に入る前は、最終章の物語をどういい形にサポートしていけるか、最初の登場人物としてどう表現していくかというのを大事にしたい、その上で脚本を読んだ時に最初に感じた私の印象をお守りのように抱いて現場に入って、現場ではよりセットに入ったら、にニュートラルな状態で楽しく毎日撮影をしていて、現場で特に慎重に繊細にやっていたのは、触れ合うこと。人と触れ合う、息子とのふれあいの距離感だったり、校長先生もそうですし、そのちょっとしたふれあいで距離感が変わる作品なので、そこは繊細にやりました。ちょっとのふれあいで意味合いが変わるなということは、現場に入って思いました。
監督:この面白い脚本とこのキャストがそろった時点で監督はあまり余計なことはしない方がいいとは思っていましたが、何が起こる
かわからない中を、観客もいろんな怪物をみることになることだけを意識していました。スタッフが成熟して、取り組んでくれたので、素敵な現場でした。
●NHK
観た人にどう感じて欲しいか、一言ずつ教えてもらえませんか?
監督:今日見ていい表情をされているなとは思いましたが、どう感じているかは人それぞれなので、感じてほしいと思うのもおこがましいのではと思いました。
安藤:すごいご覧になって感じた感想を含めた質問でしたね。私全然違う感想だったので、今すごくびっくりしました。
スタッフも成熟したとありましたが、何かエピソードありましたら
是枝:元の脚本を読み込んだスタッフが町や湖を見つけてきてくれて、スタッフがあの電車、車両を作ってくれて、それがこの映画の世界観、子供達だけの宝物である空間と時間を見事に表現している、その絵の持っている力強さがワンカットワンカット繋がったものが今回の結果だと思う。
●キネマ旬報
安藤さんへ、万引き以来のカンヌだとおもいましたが、かわってましたか?
安藤 カンヌが変わったなんてまだ私にはわかりませんが、私自身が二度目ということで、前回の初めての興奮じゃない状態でしっかりと味わおうという気持ちで、前回はあっという間に終わってしまったのですが、今回は「これがカンヌか」というのを噛み締めながら過ごしてます。
前回はパルム・ドールですが、前回と今回どっちが大きかったですか拍手は?
安藤:今回!?あれ?違う?!それは私の感じ方か。正解??
●ライター
映画の中で、嵐がでてくることでスペクタクル感がありましたが、あの雨を待っていたのですか?
是枝 雨は全部降らしました。全部作りました。一箇所唯一校庭に降る雨だけ本物で、あとは作り物です。
●朝日新聞
監督カンヌ7回目、作ったり演出するうえで海外を意識するのですか?
是枝:題材選びとか、そういうことですか?あんまり意識してないのかも。デビューして、僕らの世代はすぐに海外の映画祭に呼ばれていくっていう状況が1990年代2000年代初頭にあって、どうやって日本の外で受け入れられるかを考えざるをえない時期があったんだけど、それを考えないと全く成長しないってことはないと勉強しました。自分のローカルな題材をしっかりと掘り下げていけば、地球の反対側にも届くと知りました。
坂本さんが音楽担当されていましたが、やりとりはどうされていたのですか?
是枝:映画の中で3回繰り返される夜の湖のシーンについて、ロケハンで諏訪に行った時に、ここに坂本龍一さんのピアノが入ると確信しました。ご体調のことはありましたが、一回自分の好きな坂本さんの曲を仮当てし、それをお手紙と共に送って見てもらいました。お返事が来て、映画全体を引き受ける体力はないのだけど、1−2曲閃いたから書いてみます、気に入ったら使ってくださいと返事のお手紙をもらいました。
観た直後に音楽室のシーンがすごく好きだと言ってもらい、あのホルンとトロンボーンの音を邪魔しない音楽を作ろうと思ったという意見をもらいました。映画の中から聞こえてくるような曲になったんじゃないかなと、おこがましいけれど思いました。
今日も最後に大好きなAquaが流れて良かったなと思いました。
映画『怪物』予告
ストーリー
大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子供たち。それは、よくある子供同士のケンカに見えた。しかし、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した――。
キャスト:安藤サクラ 永山瑛太 黒川想矢 柊木陽太 /
高畑充希 角田晃広 中村獅童/
田中裕子
監督・編集:是枝裕和『万引き家族』
脚本:坂元裕二『花束みたいな恋をした』
音楽:坂本龍一『レヴェナント:蘇えりし者』
企画・プロデュース:川村元気 山田兼司
製作:東宝、フジテレビジョン、ギャガ、AOI Pro.、分福
配給:東宝 ギャガ
©2023「怪物」製作委員会
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