『未来よ こんにちは』(16)で、第66回ベルリン国際映画祭 銀熊(監督)賞を獲得し、フランス映画界を代表する存在となったミア・ハンセン=ラブ監督の最新作『Un Beau Matin』(原題)/『One Fine Morning』(英題)の邦題が『それでも私は生きていく』となり、5月5日(金・祝)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開することが決定した。
レア・セドゥとミア・ハンセン=ラブ監督がタッグを組み、カンヌ国際映画祭 監督週間で話題を呼んだ本作は、監督自身の父親が病を患っていた中で脚本を書いた自伝的作品。父の病に対する“悲しみ"と新しい恋の始まりに対する“喜び"という正反対の状況に直面するシングルマザーの心の揺れを繊細に描き出す。親の死を意識したときに誰もが感じる無力感や恐れだけでなく、新しい情熱が生まれる可能性も描くことで、人生を愛したくなる感動的な映画に仕上げ、第75回カンヌ国際映画祭でヨーロッパ・シネマ・レーベル賞を受賞した。
主演は、『007』シリーズで2作続けてボンドガールを務めたほか、今やファッションアイコンとしても世界的人気のフランスを代表する俳優レア・セドゥ。彼女の起用について「人間味のある人物として捉えたかった」「彼女に新しい光を当ててみたかった」と監督が語る通り、本作では主人公の複雑な心の機微を見事に表現しレア・セドゥは新境地を開拓。
Los Angeles Timesが「この映画のレア・セドゥを観なければ、今年最高の演技を観逃すことになるだろう」と称賛を贈った。また、エリック・ロメール監督作品の常連俳優として知られ、出演作が多数ある名優パスカル・グレゴリーが、主人公の父ゲオルグ役に扮し、教師であるがゆえに大事にしてきた“知識"や“言葉"が病により失われていく様を驚くほど丹念に演じている。主人公にとって希望の光のような存在として登場する役どころを演じるのが『わたしはロランス』(12)のメルヴィル・プポー。信じて良いのか分からない、曖昧ながらもナイーブな魅力に溢れるサンドラの恋人クレマンを好演している。この3人が互いに作用し調和の取れたアンサンブルを奏でる点にも注目だ。
今回の日本版オリジナルポスターは本国版からデザインを一新。主人公であるサンドラ(レア・セドゥ)がベッドに寝そべり、空(くう)を見上げる姿を全面に大きく捉え、人生には泣きたくなることもあるけれど、喜びや悲しみと共に生きていくという意思のある女性像を表現している。このデザインを監督も気に入ったといい、日本版ポスターが欲しいと熱望するほど絶賛。同時に解禁する場面写真は、一人娘であるリンにぴったりと寄り添い、笑顔を浮かべるサンドラの様子を捉えた写真と、サンドラの恋人クレマンも交えて、リンが指差す方向を3人でまっすぐに見つめる写真。本作にて、母親として、娘として、恋人として、様々な表情を見せるレア・セドゥの魅力が垣間見れるショットとなっている。
35ミリフィルムで撮影された、陽光や草木の緑などがロメール作品を思わせる淡く温かみのある色彩でスクリーンを彩る映画、ミア・ハンセン=ラブ監督『それでも私は生きていく』は、5月5日(金・祝)より、新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開。
【STORY】
サンドラは通訳者として働きながら、パリの小さなアパートで8歳の娘リンとふたり暮らしをているシングルマザー。彼女の父ゲオルグは、かつて哲学の教師として生徒たちからも尊敬されていたが、今は病を患い、徐々に視力と記憶を失いつつある。別居する母フランソワーズと共に彼のもとを頻繁に訪ねては、変わりゆく父の姿に直面し、自身の無力感を覚えるサンドラ。仕事、子育て、そして介護。長年自分のことどころではなかったサンドラだったが、ある日、旧友のクレマンと偶然再会し、自然と恋に落ちる。病を患う最愛の父に対する、やるせない思いと、新しい恋の始まりに対するときめきという相反する感情をサンドラは同時に抱くが……。
監督・脚本:ミア・ハンセン=ラブ「未来よ こんにちは」「ベルイマン島にて」
撮影:ドゥニ・ルノワール
編集:マリオン・モニエ
美術:ミラ・プレリ
出演:レア・セドゥ、パスカル・グレゴリー、メルヴィル・プポー、ニコール・ガルシア、カミーユ・ルバン・マルタン
2022年/フランス/ 112分/カラー/ビスタ/5.1ch/原題:Un beau Matin/英題:One Fine Morning/
日本語字幕:手束紀子 R15+
配給:アンプラグド