柳楽優弥主演、日本・モンゴル・フランス合作映画『ターコイズの空の下で(英題:UNDER THE TURQUOISE SKY)』が、日本・モンゴル外交関係樹立50周年記念上映として全国各地で、再上映されています。
資産家の祖父を持ち、東京で自堕落で贅沢三昧の暮らしを送る青年タケシはある日突然、モンゴルに送り込まれる。目的は、第二次世界大戦終了時にモンゴルで捕虜生活を送った祖父と現地の女性の間に生まれ、生き別れとなった娘を探すこと。ガイドは、馬泥棒のモンゴル人アムラ。果てしなく広がる青い空の下、言葉も通じない、価値観も異なる二人の詩的でユーモラスな旅が始まるー。
第68回マンハイム・ハイデルベルク国際映画祭では、栄えあるオープニング上映を飾り、 FIPRESCI賞(国際映画批評家連盟賞)と“型破りかつ表現力に優れた作品”に贈られるファスビンダー才能賞の二冠に輝き、映像のクオリティに焦点を当てた第28回カメリマージュ国際映画祭にも招聘されるなど、ヨーロッパの映画祭を中心に世界で喝采をあびてきたファンタジックなロードムービー。
監督・脚本を手掛けたのは、海外で育ち4カ国語を操る国際派俳優として『キス・オブ・ザ・ドラゴン』や『ラッシュアワー3』など多数の欧米作品に出演、現在はアーティストとしても活躍するKENTARO。初の長編監督映画となる本作では、その文化と自然に魅了され、自身が通い続けているモンゴルを舞台に、国境と世代を超えて魂が響き合うロードムービーを作り上げた。
今、世界は多くの問題を抱えていますが、
この映画はそういった世の中を少しだけ明るくする、
命の賛歌でもあると思っています。
私自身がそうだったように、
都会で本来の人間らしさや生きる意味から切り離された生活を送る人々に、
人生の与えてくれる出会いの美しさ、そして命の素晴らしさを、
劇中のタケシと共に体感していただけたらと思っています。
KENTARO
この度、シネフィルでは、東京再上映となる『ターコイズの空の下で』KENTARO監督へインタビューを行いました。
まずは、監督は海外で育った環境で、今までもヨーロッパや、アメリカでも活躍なさって来ていますが、簡単に、自己紹介と、今回公開にあたって日本に戻られて感じたこととかあったら教えてください。
映画の世界に足を踏み入れたきっかけとなったのは、パリの映画館で、小津安二郎とか黒澤明、溝口健二、そしてあとから成瀬巳喜男、市川崑などの監督作品を知って”こんな素晴らしい、美学に溢れた映画があるのか”と圧倒されました。それが原点なんです。その後、俳優として海外(ヨーロッパ)で10代の時にデビューして、ハリウッドでもオーディションなどにも出て、役を掴んできました。
生活は、フランスが一番長いのですが、スペイン圏、英語圏などで暮らして来ました。ですので、自分自身は海外で生活してきた環境から、コンセプト(身体)のハードウェアは日本だけど、ソフトウェア(創造、思考)とアップデートは外国です。
今回、公開にあたって戻ってきて、感じたこととしては、昔の日本は、日本人と外人との区別がはっきり別れていたけれど、今の日本はハイブリッドというか、そういうアイデンティティの生き様も受け入れられる環境が整ってきたと思います。進化した形の日本として---。
コンビニでも多国籍な人種が働いていますが、ニューヨークのように各国の訛りで日本語でサービスをしています。新しい日本の生活の中では、私のような生き方をして来た人も、ハイブリッドな日本人として受け入れられてきたのかなと思っています。
それが、日本に戻ってきて、再発見した感じです。
初めての長編作品で、柳楽優弥さんを主演に招き、日本、フランス、モンゴル合作という製作チームで撮られたわけなんですが、作品はどのような形で生まれていったのでしょうか?
映画作りについては、ヨーロッパ、ハリウッドなどで、若い時から映画の現場に参加してきた経験から、プロの映画のクオリティがどういうものであるかということを肌で感じて来ました。また、そこで作り方を直接に学んできたつもりです。
作品は、アートハウスの映画の企画として始まりました。
隙のない脚本を中心に表現する人がいますが、私はやはりビジュアル映像と重視した作品を作りたいと思っています。
アジアの国の中で、モンゴルは儒教の国ではない。そこが、ある意味面白い。他のアジア圏と似ているところがありながら、いつもカルチャーショックを感じています。モンゴルに何度も行っていた中で、その文化と自然に魅了され、この国で、撮影したいと思っていました。
企画の段階で、主演のアムラさん(日本で言えば高倉健的な”兄貴”と言われる存在で、モンゴルのアカデミー賞を3回受賞の俳優)とモンゴルで出会いました。彼が、是非日本と関わりを持った仕事をしたいというところから、企画を進める中で、作家性の強い脚本を書いたんです。
アートハウス系の映画があまりない国ではあったんですが、快く参加してくれることになりました。今回のような作品を、受け入れてもらえる時代になって来たと思うと同時に、シノプシスを送ったもう一人の主演の柳楽優弥さんもすぐに興味を持ってもらい、出演にあたっては、モンゴルの夏の心地よい撮影タイミングを奇跡的に1ヶ月取れたことから、撮影が決まりました。
初めての長編ということで、スタッフはどのように集めたのでしょうか?また、撮影はどのようにおこなわれたのでしょうか?
撮影は、クロアチア系のオーストラリア人、アイヴァン(英語圏)、チリのサウンドマン、ニノ(スペイン語)、スクリプターがフランス人アリスという多国籍だけど、私にとっては柔軟性のある融通のきくチームを作って、その他の現地スタッフはモンゴルのプロデューサーが、ローカルに固めていきました。
スタッフのコーディネートは、英語バイリンガルの経験豊富なモンゴル人エンキをアシスタントディレクターにつけて1ヶ月ぐらいの期間で撮り上げたわけですが、モンゴルの撮影では現地のゲルで泊まりながら、撮影を進めました。
柳楽優弥さんを含めキャストとスタッフが同じ環境の中で、毎日、多言語の入り混じったコミュニケーションの中で、作品が仕上げていきました。また、主演のアムラさんがいたことで、今までのモンゴルの映画でも撮影されたことのない特別な場所で、撮影することが出来ました。
日本とモンゴルの俳優が、共演なさっていますが、監督としてはどのように演技を指示なさったのですか?
ミュージッシャン同士がそうであるように、噛み合うスターティングポイントは、各国の俳優共通で、それが噛み合った時はジャズセッションのような魔法が再現されます。
海外の映画祭でも、評判を呼び評価されたと聞きますが
初長編をとった監督にとっては、憧れのドイツのマンハイム・ハイデルベルク映画祭からワールドプレミア上映のお誘いを受け、映画祭のディレクター曰く、「在籍した30年間では初のアジア映画作品」としてオープニング作品に選ばれました。
それだけでも、栄誉あることなのですが、その会場には、700人の観客が押し寄せ、満杯となり、また、550人入る会場と合わせて6回の上映全ての回がソールドアウトとなりびっくりしました。
映画祭では、『ターコイズの空の下』は、FIPRESCI賞(国際映画批評家連盟賞)と“型破りかつ表現力に優れた作品”に贈られる優秀賞の一つであるファスビンダーの名が付いた才能賞の2冠を受賞する快挙を成し遂げました。
マンハイム・ハイデルベルク映画祭映画祭とは
長編初作品、第二作の才能ある監督作を紹介する映画祭として有名。過去には、フランソワ・トリュフォー、ヴィム・ヴェンダース、ジム・ジャームッシュ、アトム・エゴヤン、ラース・フォン・トリアー、そしてライナー・ヴェルナー・ファスビンダーなどの名だたる監督たちが、この映画祭で初作品、第二作品を上映させている。
監督にとって映画とは?
フランスでは映画を7つ目の芸術アート(文化)として見られています。日本では歌舞伎や、能を海外と同じように文化として見ていますが、映画をエンターテイメントとして見ている場合が多いのではないでしょうか?
鈴木清順作品は、商業映画でありながら作家主義を通して、ギャングスターのエレガンスをとおして、タランティーノ、やジム・ジャームッシュなどに影響を与え続けました。
今は、配信などで多くのエンターテイメントの映画が見られる中で、大きいスクリーンで見せることによってアート性を無視することはできない。それが、映画ではないでしょうか?
映画は文化であり、文化は必要なものです。
良いワインを知らない人は、ただ酔うことだけで満足してしまいます。
今回の、上映にあたって
日本での初公開では、2週間ほど前に緊急事態宣言になって、コロナというものも、直面してしまいました。日本・モンゴル外交関係樹立50周年記念上映ということで、再上映する機会となり、今回はより楽しみです。演技と映像美と音楽をお楽しみください。
映画『ターコイズの空の下で』予告
出演:柳楽優弥、アムラ・バルジンヤム、麿赤兒ほか
監督:KENTARO
脚本:KENTARO、アムラ・バルジンヤム
撮影:アイヴァン・コヴァック
衣裳提供:TAKEO KIKUCHI
日本・モンゴル・フランス合作/日本語・モンゴル語/DCP/シネマスコープ/カラー/95分
代官山シアターギルドほか全国にて再上映中
2月25日(土)より横浜ジャック&ベティで再上映
代官山シアターギルドチケット購入は下記より
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