現在、俳優、タレントとして活躍し、かつては日本中を熱狂させた不世出の天才ボクサー<浪速のロッキー>赤井英和の激闘が、ドキュメンタリー映画『AKAI』となって、9月9日(金)より全国公開となります。本作は赤井の俳優デビュー作『どついたるねん』(1989年公開)の阪本順治監督が全面協力。再起不能のダウンから復活を遂げ、主演として自分自身を演じた『どついたるねん』の映像とともに、プロボクサー時代の貴重な映像で綴られています。
この度、本作の公開を記念して、9月7日(水)、新文芸坐にて赤井英和主演、阪本順治監督による伝説の名作『どついたるねん』と『王手』(1991年公開)の1日限りで復活上映が行われました。
さらに、赤井英和と阪本順治監督によるスペシャルトークショーが開催!
ドキュメンタリー映画『AKAI』の公開を記念して9月7日(水)、新文芸坐にて赤井英和主演、阪本順治監督による伝説の名作『どついたるねん』と『王手』が1日限りで復活上映。さらに上映後には赤井と阪本監督によるトークショーが開催。33年前の撮影当時の思い出などについて語り合った。
『どついたるねん』はこうして生まれた!
もともと、ボクサーを引退した赤井が1987年に出版した自伝をもとにした『どついたるねん』だが、赤井は自伝を書いたきっかけについて「引退してヒマでしゃあないので、お世話になった方々に挨拶に回ってたんですが、その中のひとりに高校の先輩でもある笑福亭鶴瓶さんがいまして、『お前の人生、おもろいから本を書いたらどうや?』と言われたんです」と明かす。
この自伝に惹かれた阪本監督は、『熱』というタイトルのプロットを書き上げたが当初、書かれていた物語は、完成した映画とはかなり異なる内容だったそう。阪本監督は「まだ企画が立ち上がるかもわかんないまま、鶴瓶さんの事務所に連絡して『本を読みました。(赤井)本人に会いたいです。赤井くんと映画を作りたいです。僕のデビュー作です』と伝えました。それから、書き上げた脚本を(赤井に)送って、ある日、難波のビアホールで初めて2人で会って、『脚本の感想を聞かせてくれ。何でも言って』と言ったんです。そうしたら『このシーンは要らないんじゃないですか?』と言い出して、それを全部聞いたら結局、自分が出ていないところは全部『いらない』って言ってた(笑)。それで書き直して、赤井くんが出ずっぱりのスタイルにしようと決めました」とふり返った。
阪本監督はこの日、本作に出演している故・原田芳雄さんの形見だというジャケットを着用して登壇。『どついたるねん』でトレーナー役を演じる原田さんの出演について「脚本がまだない段階で自宅にお願いに行ったら『じゃあ、やりましょう』とおっしゃってくれたんです。でも、芳雄さんには打ち上げで首を絞められました(苦笑)。『赤井のことばっかり見やがって!』って。赤井くんばかり演出して、芳雄さんのほうを向いてなかったのは本人が一番わかってるんですね。あの時は徹夜続きで異常なくらい粘ってました。」としみじみと語る。
赤井は原田さんとの共演について「いつも客席で見てた方ですから、一緒に仕事できることを幸せに感じましたね」と笑顔を見せた。
動の『どついたるねん』から静の『王手』へ
そして『どついたるねん』に続く、監督2作目『王手』で、阪本監督は将棋指しの男たちを描き、ここでも主演に赤井を起用した。これについて阪本監督は「『どついたるねん』の評価の中に『赤井が地でやってるだけやないか』というのを見かけて悔しかったのがあって、じゃあ、今度は赤井くんを将棋指しにして、じっと将棋盤の前に座っている姿で彼の持っている色香を見せたいと思った」とその理由を語る。
ちなみに、同作には若山富三郎さんが出演しているが、そのきっかけは『どついたるねん』にあったそう。阪本監督は「赤井くんと原田さんの初顔合わせを中野のバーでやったんですけど、そこに若山富三郎さんが入ってきたんです。その3年後に(『王手」で)伝説の真剣師役でお仕事をさせてもらうことになりました」と明かした。
『どついたるねん』は『トップガン』!
『AKAI』は『トップガン マーヴェリック』!
『どついたるねん』公開から33年を経て、赤井の息子である赤井英五郎監督によるドキュメンタリー映画『AKAI』がついに公開を迎えるが、阪本監督は本作について「息子がオヤジのドキュメンタリーを撮るってめったにないことで、イメージとして“父子一体の絆”とか“家族愛”に満ちたものになっているかと思ったら、客観的に作家として作り上げていて、『トップガン』と同じくらい面白かったです!」と興行収入120億円超えの『トップガン マーヴェリック』を引き合いに大絶賛! そして「『トップガン』より面白いと言いたいところだけど、意外とトム・クルーズのファンなので…(笑)。“同じくらい”面白いです」と付け加え、会場は笑いに包まれた。
阪本監督は改めて“赤井英和”という存在に魅力について言及。「似たような人がいないと思います。ただ成功して、栄光を勝ち取って引退したボクサーだったら(主演に)選んでないと思います。相当なことを経て、いまがあるわけですけど、普段はその悲哀をにじませないんですよね。そこが面白い! 他に似てる人いないなと思います。大阪人のユーモア、背負ってきた人生が彼の中に染みついている。リングに立っている時は本当にかっこよかったし、キレイでした」と熱く語る。
この日は、赤井の息子で『AKAI』のメガホンを握った赤井英五郎監督も会場に駆けつけており、阪本監督と赤井に促されて登壇し「面白くできていると思います。よろしくお願いします」と映画をアピール!
トークの最後に赤井は、改めて『AKAI』について「ぜひぜひご覧いただけたらと思います。懐かしくもあり、僕も何万人ものボクサーを見てきましたが、こんなボクサーは唯一無二で他にいてへんなと思いました。楽しんでもらえると思います」と呼びかけ、温かい拍手の中で、トークイベントは幕を閉じた。
俳優、タレントとして、世代を超えて愛される赤井英和。しかし、まだ多くの人が本当の“AKAI”を知らない。かつてはプロボクサー。1980年に鮮烈なデビューを飾り、戦績は21戦19勝16KO2敗。もっと前へ、もっと強く。ひたすら、どつき倒す。倒れても立ち上がる。その歩みを止めない、戦いを止めないスタイルは最高に強く、最高にかっこよかった。彼は本物のヒーローだった。そして、人々は大阪市西成区生まれの“AKAI”をこう呼んだ。<浪速のロッキー>と。本人は純粋にボクシングを愛し、相手をどつきまくっただけ。その姿は40年の時を経た今も変わらない。本作は現役のプロボクサーで、アメリカで映像を学んだ赤井英五郎が監督を務め、赤井の俳優デビュー作『どついたるねん』(1989年)の阪本順治監督が全面協力。
再起不能のダウンから復活を遂げ主演として自分自身を演じた『どついたるねん』と、世界王者に挑戦した「ブルース・カリー戦」と引退の引き金になった「大和田正春戦」の息を呑む迫力の試合映像、貴重なインタビューでつづられる。
編集・監督:赤井英五郎
出演:赤井英和
映像協力:朝日放送テレビ 阪本順治 制作プロダクション:PADMA 音楽:上倉紀行
宣伝協力:大手広告 ミラクルヴォイス
配給:ギャガ 2022年/日本/カラー/16:9/5.1ch/DCP/
88分
(C)映画『AKAI』製作委員会