本年1月29日から劇場公開後、全国でロングラン上映を続けている横浜シネマ・ジャック&ベティ30周年企画映画『誰かの花』の東京K's cimenaにて再上映が決定しました。

再上映にあたり、cinefilでは、3月13日にユーロスペースで行われた吉行和子さんと奥田裕介監督トークイベントをご紹介いたします。
名優・吉行和子が語る『誰かの花』の魅力をお届けします。

重いテーマを持ちながらも一人一人が優しい気持ちで生きているっていうことが伝わってくる、なんて気分のいい映画

奥田裕介監督(以下、奥田監督)
吉行さんとこんな風に二人でしゃべるのは初めてですね。

吉行和子(以下、吉行)
いつもみなさんでトークイベントやられていますよね。今日オーディション受けるみたいで少し緊張しています(笑

奥田監督
いやこちらのほうこそ緊張しています(笑
早速、本題なのですが、最初、脚本を読んでいただいてどんな印象でしたか?

吉行
脚本は、一枚一枚ページをめくるたびドキドキして、最後まで一気に読み終えて、このような作品に出会えたことで興奮状態になりましたね。
私のマチという役が本当に普通のお母さんなんですね。マチをはじめどこにでも居る普通の人たちがアクシデントに巻き込まれることで変わっていく、とてもリアルがあるし、この物語の中でマチがどのように生きていくのか、を演じることにとても興味が持てました。

奥田監督
実際に完成した映画をご覧になっていかがでしたか?

吉行
もっと重い作品になるかと思ったのですけど。
重いテーマを持ちながらも一人一人が優しい気持ちで生きているっていうことが伝わってくる、なんて気分のいい映画ができたんだろうって感じました。嬉しかったです。
高橋長英さんとは以前、夫婦役をやったことがあることもあり、現場で「家族」という感じで居ることができるんですね。
待機時間に私語を多く交わさなくともカメラの前に立つだけで気持ちが通じてくるっていう、とてもいい雰囲気でした。
お借りした団地も実際に住んでいる方がいらっしゃるお宅で生活感と空気感があり、本当にそこに自分たちが生活しているように感じてしまうんですね。

画像: 重いテーマを持ちながらも一人一人が優しい気持ちで生きているっていうことが伝わってくる、なんて気分のいい映画

奥田監督は役者の傍らで演技を見ている。モニター中心でない生の演技をみている、それがとても嬉しかったです。

奥田監督
団地の撮影はとても大変なことが多いのですが、今回は団地の方々がとても協力的で助かりました。今回、団地の中でいくつかの棟をお借りしたのですがエレベータのない棟もあり・・・。

吉行
そうなんですよね。脚本を読んだとき、「ああ、エレベータがあるんだ」と安心したのですけど・・・私も歳ですからね(笑
実際に伺ったら撮影するお部屋のある棟にはエレベータがない(笑
エレベータのシーンは別の棟で撮影するんですね。
お部屋のシーンは毎日階段を昇り降り、5階まで・・・これができるなら私もまだまだ大丈夫かなって思いました(笑

奥田監督
僕やスタッフが息切れしながら階段をあがっていく前を吉行さんや長英さんが軽やかに階段をあがっていくお姿が印象的でした。
吉行さん、撮影中に何か印象に残っていることはありますか?

吉行
ちょうど新型コロナウイルスが再拡大しはじめたころでしょ。
撮影終わったらマスクして、すぐに換気して徹底して感染症予防に取り組んでいて、一丸でスタッフさんの気持ちも映画つくりにも向かっていたように感じます。
あとは、最近の監督さんはモニターばかりみて役者の演技をあまりみない人が多いように感じるんですね。役者って自分が演じている姿をみてもらう緊張感や喜びを感じながら演じているときが幸せなんですけれど。モニター中心の監督さんは別の部屋でモニターみていてはじめと終わりにしか顔を合わせないときもある。
デジタル時代のせいなのか、そういう現場が増えてきているなかで奥田監督の現場は違いましたね。
奥田監督は役者の傍らで演技を見ている。モニター中心でない生の演技をみている、それがとても嬉しかったです。

私自身、多くの作品に出演していますが、この作品がとても大好きなんです。

奥田監督
ありがとうございます。吉行さんにそういっていただけると嬉しいです。
吉行さんほどのキャリアがありながら、私のような(笑)若手映画監督の作品にも出ていただける、とてもありがたいことなんですが、若手監督作品にもご出演される理由は何かあるのでしょうか。

画像: 私自身、多くの作品に出演していますが、この作品がとても大好きなんです。

吉行
若手の監督さんたちの現場は予算も規模もそれほど大きくないことが多いのですが、大きな現場で作られていく作品とはまた違った楽しさや熱量を感じることがあります。私自身がずっと舞台をやっていたので、その熱量とともに作品を作るという感覚を共有できる喜びが感じられるんですね。

今の映画は、こういう風にみなさい、っていうことが多いんですけど、この作品はそうではないですよね。
テーマと物語を突きつけられる作品だと思います。
この作品をみて「わかんない」で終わってしまう人もいるかもしれない。
私の友人は『誰かの花』をみたあと、「小津安二郎、以来の監督があらわれた」と絶賛していました(笑
私自身、多くの作品に出演していますが、この作品がとても大好きなんです。プライベートでこっそり映画みに来るくらい。自分が出演した映画でこんなにのめり込むのも珍しいんですけど、このような映画に出会えたことはすごく幸せでした。

奥田監督
ありがとうございます。

横浜シネマ・ジャック&ベティ30周年企画映画『誰かの花』(奥田裕介 監督)予告

画像: 『誰かの花』予告編 youtu.be

『誰かの花』予告編

youtu.be

新宿K’s cinema 4/16(土)~4/22(金)
※4/17(日)は奥田監督の長編デビュー作『世界を変えなかった不確かな罪』上映のため休映
京都みなみ会館、元町映画館、シネヌーヴォ、シネマ尾道、上田映劇、名古屋シネマテーク、別府ブルーバード劇場にて上映(各劇場にて舞台挨拶を予定)

公式WEB:http://g-film.net/somebody/
製作:横浜シネマ・ジャック&ベティ30周年企画映画製作委員会
宣伝・配給:GACHINKO Film

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