長年、多くの『男はつらいよ』シリーズファンが足を運び、2020年10月には入館者500万人を突破した<葛飾柴又寅さん記念館>と<山田洋次ミュージアム>が、12年に1度の寅年である今年、ついに4月9日(土)よりリニューアルオープンとなり、それに伴い記念式典が開催されました。
リニューアルされた葛飾柴又寅さん記念館は、入口に3面スクリーンが登場。山田監督の友人でもある洋画家・藪野健氏による、映画『男はつらいよ』と柴又をテーマに描き下ろした水彩画・油絵20点がプロジェクションマッピングによって投影され、映画『男はつらいよ』の世界への「はじまりの部屋」として来場者を寅さんの世界へと誘います。さらに、スマートフォン端末を利用する<AR謎解きラリー篇>と、専用用紙が入った謎解きキットを利用する<謎解き施設めぐり篇>の2種類の謎解きゲームが導入され、これまで以上に映画『男はつらいよ』や懐かしい昭和の世界を<体験>しながら楽しめる施設となりました。
また、山田洋次ミュージアムには、松竹大船撮影所のジオラマが出現!山田洋次監督が青春時代を過ごした撮影所が生き生きと表現されています。そのほか、最新作『キネマの神様』も加わった山田洋次監督作に関する展示や、渥美清さんの国民栄誉賞の盾など貴重な資料が多数展示されています。老若男女問わず、「いつでも、何度でも来たい!」と思える施設へと進化いたしました。
リニューアルオープンを記念して、本日8日に開催された式典では、葛飾柴又寅さん記念館名誉館長でもある山田洋次監督、倍賞千恵子さん、藪野健さんがご登壇、北山雅康さんが司会進行を担当されました。
まず、山田洋次監督は「コロナで休業の施設が増えている中、今という時期に9度目のリニューアルができた、こんな嬉しいことはありません」と喜びを語ると、「寅さんと寅さんの家族のような人たち、優しくて温かくて仲良く生きていく術を知る人たちが育つにはどんな環境が必要なのかという課題に答えるべく、寅さん記念館を作り続けていくべき。懐かしいだけじゃなく、そんな課題を考えられるような場所になってほしいと思っています」と、進化し続ける寅さん記念館への思いを語りました。
倍賞千恵子さんは冒頭、「しばらくぶりです。元さくらです(笑)」と挨拶すると、会場は笑いに包まれました。「ここに来るたびに、お兄ちゃん、まだいるなと思ってしまいます。新しくなった寅さん記念館を見ていると、陰からお兄ちゃんが出てくるような気がしてなりません」という寅さんを懐かしむコメントとともに、「2、3年後、次のリニューアルのときにも、足を運んでいただけるように家族や友達に広めてほしいです」と喜びの表情を見せました。
今回のリニューアルのために水彩画・油絵を描き下ろした藪野健さんは「柴又で画を書いていると嬉しくて楽しいです。お店の人や、すれ違う少年少女たちと話ができる。柴又は語りかけられる街。そして、その街並みが今も残っている。皆さんが残しているということが、素晴らしいと思います」と今もなお、懐かしい原風景が残る柴又の印象を語りました。
また、フォトセッション時には、偶然式典に居合わせた可愛らしい子どもたちから「山田監督―!」と声が上がる場面も。山田洋次監督と倍賞千恵子さんが手を振って応じるなど、終始和やかな雰囲気の式典となりました。
葛飾柴又寅さん記念館と山田洋次ミュージアムは、4月9日(土)よりリニューアルオープンいたします。
以下、当日の質疑応答になります
リニューアルによって新設されたプロジェクションマッピングとジオラマの感想は?
●山田監督:ジオラマは去年制作されたもので、本当によくできている。撮影所で働いた美術監督が細かくチェックして細部まで再現している。小さな人形一つ一つに個性があって、小津安二郎、若き日の僕がいたりしてびっくりした。とても精密なジオラマで、僕にとっては懐かしくて仕方ない。あれを見る若い人に、撮影所というものがあったんだと。今も撮影所はあるけど昔はみんな社員だった。あれは夢の工場だったのだということをしみじみ思う。日本映画のそんな歴史があったことを観客に伝わると良いなと思う。奇跡のような場所があった。
●倍賞千恵子:寅さん記念館に入ってぱっと画面が変わっていったとき、胸がいっぱいになった。撮影をしていた若かった頃と今をつい比べてしまうけど、くるまやのセットに入ると初めて撮ったころの自分が浮かんでくる。渥美さんがどこかにいると感じる。昔よりその気持ちが強くなった。電車のコーナーなどはみんな座って見てみてほしい、と言いたい。必ずボタンを押して楽しんで、と言いたい。ジオラマも素晴らしくて。スタッフにアップで見せてもらったら小津さんだとわかる。山田さんが若かった頃、ハンチングかぶっていたのでそれを思わせる素晴らしいジオラマ。俳優館も再現されていた。一つ一つが丁寧につくられている。みんな楽しめるし歴史を感じるんじゃないかと思う。その時々の時代を思い出す。人生をたくさん振り返るような気持ちで楽しませてもらった。
もしコロナ禍に寅さんがいたら?ステイホームしたでしょうか?
●倍賞千恵子:お兄ちゃんはしなかったでしょう。柴又に帰ってきてみんながマスクをしててもしないんじゃないかな?そして家の中にもいないんじゃないかな。
●山田監督:薬屋さんに美人がいたらマスクするかもしれないね。
●倍賞千恵子:本当に。それで源ちゃんと口笛吹いて外を歩いたんじゃないかな。寅さんがマスクした顔が浮かばない。息ができないよ、っていうかもしれない。