ミニシアター、横浜シネマ・ジャック&ベティの30周年企画として製作された『誰かの花』がいよいよ1月29日からジャック&ベティ、渋谷ユーロスペースで劇場公開されます。
ジャック&ベティの梶原俊幸 支配人と奥田裕介 監督の対談の様子をお届けいたします。

画像: 奥田裕介監督

奥田裕介監督

ミニシアターのこと

(梶原)私は東京の吉祥寺で育ったんですが、町中に映画館がいくつもあって、こどもの頃から映画館に行くことが多かったんですね。
映画館によっては二本立てもあり、観に行った目当ての映画のもう一本を観たらとても面白かったり・・・。
それまでは流行りの映画を観ることが多かったんですけれど、高校時代に出会った映画で映画への接し方が変わりましたね。
高校の授業だったんですけれど、ちょっと変わった先生がいて、授業で『羅生門』を観せてくれたんです。そこで、ああこんな映画もあるんだな、と。
大学時代に、雑誌の「ぴあ」が流行っていたので、「ぴあ」を見て映画や演劇を観に行こう、というようなサークルをつくって楽しんでいたんですね。
メールで誘い合って最終的には100人くらいまでメンバーが集まって。

(奥田)梶原さんと以前話したときに、アスガー・ファルハディ監督の話で盛り上がったことがあるんですけれど・・・。

(梶原)そうでしたね。

(奥田)自分は、アスガー・ファルハディ監督の作品が大好きで、あとはイラン映画に影響を受けているんですね。子供の頃に母とジャック&ベティさんでイラン映画を観て、帰り道に話したり、それが自分の映画の原体験です。

(梶原)イラン映画はミニシアターでしかかからないですものね(笑)。
我々は2007年3月からこの劇場を引き受けたんですけれど、当時から毎月お客さんと交流会をしているんですね。立ち上げ当時、お客さんからは「大きなシネコンみたいな映画館でかかる映画をかけてもつまらない」「もっとたくさんの映画を観たい」「ミニシアターならではの作品があってもいいのでは」などのご意見をいただき、できる限り小さくてもよい作品を選んで上映するようにしてきました。
ミニシアター全国数十館でかけて何とか採算が取れるような日本映画や外国映画も多くあると配給さんから伺っています。ミニシアターが続くことで映画の多様性も生まれるし低予算でもよい映画が生まれる環境があると思います。苦しくてもミニシアターが映画を提供し続けていくことが大切だと思うんですよね。
その中でミニシアターを後押しするような作品が生まれてくることもあるでしょうし。

(奥田)ミニシアターでは、映画を観た後に自分で考えたり完結できるような映画が多くかかりますよね。シネコンにそういう全く作品がない、というわけではなく、やはりミニシアターで上映される作品にそういう作品が多い。僕自身、映画を観た後の余韻を楽しむことが好きなので、ミニシアターに通うんでしょうね。

画像: ジャック&ベティ梶原俊幸 支配人

ジャック&ベティ梶原俊幸 支配人

横浜のこと

(梶原)私は、街づくりの一環で映画館を運営することになったんですね。祖母が横浜に住んでいるということもあり、横浜には縁があったんですけれど伊勢佐木町のこちら側だったり黄金町というところは馴染みがなかったんです。
私が来た2006年当時は、古い街を新しく、ということでアートなどの文化芸術的な街づくりの流れの中でジャック&ベティが残っていたんです。この映画館を残す必要があると思いました。
今、このあたりは綺麗になりましたけど(笑)、でもいろいろな人々と文化にあふれより一層魅力ある街だと思います。
横浜全体で言えば、伊勢佐木町、中華街、元町、野毛などなど、それぞれ特色があるエリアが点在していて、それが横浜の魅力でもあるような気がします。

(奥田)そうですよね。横浜の魅力。多分、世間一般が思う横浜のイメージは、みなとみらい、赤レンガ倉庫だったりという華やかな特色あるイメージだと思います。
僕が生まれ育った横浜は郊外だったんですね。ちょっと買い物をするにも横浜駅まで出る、みたいな生活の不便さみたいな、僕の中では横浜は生活が続く場所であったんです(笑)
今回、映画のお話をいただいたときに感じたのは、「人が住まう横浜」を描きたいな、と思いました。
だから横浜郊外の団地を舞台にして自分の想い描く横浜の映画をつくりました。
梶原さん、映画どうでしたか?

映画 『誰かの花』 のこと

(梶原)試写ではじめて観て・・・ずしんときましたね。一人で帰るときに何かもやもやして(笑)。時間がかかるにつれ、もう一回観たいなという気持ちが高まってきて。観た人の中で映画が完結する映画だと思います。
30周年の節目に上映する映画はこのような力強い映画であるべきだ、と改めて思います。

(奥田)わかりやすい映画じゃないですからね。
僕は実は、最初はあまりプレッシャーを感じていなかったんですけれど、顔合わせで梶原さんにお会いした時からプレッシャーを感じはじめて(笑)。それからはプレッシャーとの闘いでした。
ただ、この作品をつくることに梶原さんも製作委員会もバックアップしていただき、俳優部、スタッフが力強い味方になっていただいたり、本当に感謝です。
いよいよ劇場公開ですが、まだこの日がくることが現実ではないような気がします。

(梶原)最近の若手監督は器用な人が多いと思うんですけど・・・自分で配給・宣伝をしてしまう人もいたり。奥田監督は作品作りに真摯に向き合っているような印象ですよね。

(奥田)不器用ですから(笑)

(梶原)そんなことはないです(笑)。一つ聞いてみたかったことは、原作物はこれから手掛けることはありますか?

(奥田)いつかは原作物を手掛けることもあるかもしれませんが、今の自分の強みはオリジナルだと思うんです。そこを大切にしながら時間はかかりますが、しっかりと自分の映画をつくっていこうと思います。

画像: 左より梶原俊幸 支配人(ジャック&ベティ)×奥田裕介監督

左より梶原俊幸 支配人(ジャック&ベティ)×奥田裕介監督

『誰かの花』予告編

画像: 『誰かの花』予告編 youtu.be

『誰かの花』予告編

youtu.be

1月29日(土)~ユーロスペース、ジャック&ベティほか全国劇場公開

『誰かの花』(奥田裕介 監督)
横浜シネマ・ジャック&ベティ30周年企画映画

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