『ハイゼ家 百年』の公開にさきがけ、4月3日(土)にゲーテ・インスティトゥート東京で、トーマス・ハイゼ監督の初期作品4作を上映するトーマス・ハイゼ監督日本初のレトロスペクティブを開催します。

1970年代後半から旧東ドイツでドキュメンタリーを制作してきた東ドイツ出身のトーマス・ハイゼ監督の最新作『ハイゼ家 百年』の日本初公開を記念した2部制のワンデイ・イベントを開催します。

上映作品はハイゼ監督がDDR時代(東ドイツ)に制作し、ベルリンの壁が崩壊するまで上映が禁止されていた初期3作品を含む計4作品を1日で上映します。イベントでは、ベルリン在住のハイゼ監督をZoomでつなぎ、ドイツ映画研究者の渋谷哲也さんとドイツ文学者の松永美穂さんを招いたトークセッションも実施します。

イベント第一部ではベルリンの壁が崩壊するまで上映が禁止されてきたハイゼ監督の80年代の初期3作品の日本初上映と、本上映会に合わせて日本語字幕を制作したドイツ映画研究者である渋谷哲也氏のレクチャーを行います。
第二部では2009年にベルリン国際映画祭フォーラム部門でプレミア上映され世界中の映画祭で高い評価を得たハイゼ監督の代表作の一つ『マテリアル』を上映し、ベルリンにいるハイゼ監督をZoomでつなぎ、ドイツ文学者・翻訳家の松永美穂氏と渋谷哲也氏を交え、ハイゼ監督のフィルムメイキングから最新作『ハイゼ家 百年』について公開インタビューを行います。
映画制作を始めた東ドイツ時代からドイツ統一後の変化、その中で家族史に注目してゆくことの意味など、知られざるハイゼ監督の素顔と作品が制作された背景にある今はなき社会主義国家・東ドイツに迫ります。

画像: 『ハイゼ家 百年』の公開にさきがけトーマス・ハイゼ レトロスペクティブ開催! 貴重な初期4作品、合計318分を1日に上映!

上映作品

『一体何故この連中の映画を作るのか?』(1980年36分)

東ベルリンのプレンツラウアー・ベルク地区、給水塔の周辺は不良の溜まり場となり軽犯罪が横行していた。ハイゼ監督はこのエリアで犯罪行為を続ける兄弟ノルベルトとベルントの自宅を訪れてカメラを向け、彼らの日常生活と将来のイメージを語らせる。作品のタイトルは、ハイゼ監督が映画大学で企画提案をした際、企画に反対する教師に言われた一言で、その一言を映画の題名にしたことでハイゼ監督と大学との間に亀裂が生まれ、その後ハイゼ監督は大学を去ることになる。

『家』(1984年56分)

ドイツ民主共和国首都ベルリン・アレクサンダー広場にある区役所。職業や生活の相談に訪れる人々。ある華奢な女性に太った男性職員がライプツィヒの高学歴の学者と結婚しろと茶化す。そこへ字幕が、“ジョークだね。自分たちの人生は自分で決める”と挿入され、リアルな対話が多面的に提示される。生活に困窮する若者に自由ドイツ労働総同盟に参加することだけを勧める大人の怠惰な様子。結婚式場にはホーネッカーの写真が貼られ、社会主義国家を生きる普通の人々の生活感が克明に捉えたまさに記録映画。

『人民警察』(1985年60分)

4月の復活祭(イースターホリデー)を直前に控えた人民警察内部。警官はコーヒーを飲みながらアイスホッケーや映画のラブシーンに見入っている。働く大人たちは無気力に日々を送り、働かない若者は体制反撥者となる。彼らに共通するのは現在も将来も見えない漠然とした不安の中で思考停止してしまった姿なのかもしれない。監督はまだ10代前半の男の子に将来の夢を訪ねる。男の子は目を輝かせながら人民警察で働くと語る。この男の子も今は50歳となっているだろう。そしてこの子が成人する時には社会主義体制だったドイツ民主共和国は消えてしまった。

以上©️Thomas Heise

『マテリアル』(2009年166分)

東ドイツ内部の様々な日常を、トーマス・ハイゼ監督自身の撮影で1980年代後半から2009年の現在にいたるまでの未公開の映像をつなぎ合わせて構成している。ベルリナー・アンサンブルでの芝居の稽古、壁崩壊前の市民集会、自由を求める市民デモなど、社会の大きな変革の中での人々、運動、破壊の諸相を捉えた壮大なドキュメンタリー作品。マルセイユ国際映画祭でグランプリを受賞。
©️Deckert Distribution GmbH

スケジュール

第一部
10:00-10:36
『一体何故この連中の映画を作るのか?』(1980年36分)
10:45-11:41
『家』(1984年56分)
11:45-13:00
お昼休憩

13:00-14:00
『人民警察』(1985年60分)
14:00-14:45
渋谷哲也氏レクチャー「日常と個人の記録から辿る激動の社会史  トーマス・ハイゼの映画手法」

第二部
15:30-18:00
『マテリアル』(2009年166分)
18:00-19:30
トーマス・ハイゼ監督Zoomトーク/渋谷哲也、松永美穂、他

トーマス・ハイゼ
映画監督/作家/詩人/1955年東ベルリン生まれ。国営映画会社デーファ(DEFA)で監督助手として務めた後、70年代後半からドキュメンタリーを制作し始める。’80年から’85年にかけて制作した全5作のドキュメンタリーは体制にとって相応しくないとされて
ベルリンの壁崩が壊後するまで上映が禁止された。劇作家のハイナー・ミュラーの後押しもありベルリナー・アンサンブルに舞台監督として所属する。現在はベルリン芸術アカデミーの教授。40年以上のキャリアで20作のドキュメンタリーを完成させている。最新作『ハイゼ家 百年』が記念すべき日米初劇場公開作品となる。

渋谷哲也
ドイツ映画研究者。著書に『ドイツ映画零年』(共和国、2015)、編著書に『ファスビンダー』(共編、現代思潮新社、2005)、『国境を超える現代ヨーロッパ映画250──移民・辺境・マイノリティ』(共編、河出書房新社、2015)、『ナチス映画論──ヒトラー・キッチュ・現代』(共編、森話社、2019)など。また『ヨーゼフ・ボイスは挑発する』『わすれな草』ファスビンダー監督作などドイツ映画の字幕翻訳を多数手がける。

松永美穂
ドイツ文学、翻訳家。早稲田大学文学学術院文化構想学部教授。訳書にベルンハルト・シュリンク『朗読者』『夏の嘘』『階段を下りる女』『オルが』、ペーター・シュタム『誰もいないホテルで』(以上、新潮クレスト・ブックス)、ウーヴェ・ティム『ぼくの兄の場合』(白水社エクス・リブリス)、ヘルマン・ヘッセ『車輪の下で』(光文社古典新訳文庫)、インゲ・シュテファン『才女の運命』(フィルムアート社)ほか多数。
クリスタ・ヴォルフの『一年に一日』について書いた論文を収めた『暦の詩学』(共著)が、まもなく松籟社から出版予定。

映画特集
トーマス・ハイゼ レトロスペクティブ

日時 2021年4月3日(土)
会場 ゲーテ・インスティトゥート東京

資料代:1000円(資料「トーマス・ハイゼ 知られざるドイツのドキュメンタリスト」)
学生無料 ※参加時間、退席自由

物販:『ハイゼ家 百年』特別鑑賞券 1800円(一般当日・2300円の処)

主催 サニーフィルム/渋谷哲也

協力 ゲーテ・インスティトゥート東京/Deckert Distribution GmbH/Thomas Heise/InterZone/restafilms

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