30 代後半の女性 4 人を主人公に、それぞれの家庭や仕事、人間関係を丁寧に描きながら、どこにでもいる“普通” の女性たちが抱える不安や悩みを、緊張感あふれる 3 部構成のドラマとしてつくりあげた作品『ハッピーアワー』 の 5 周年記念リバイバル上映が決まったことに際し、濱口竜介監督からのコメントが到着致しました。
『ハッピーアワー』公開5周年に寄せて
2015年12月に劇場公開された『ハッピーアワー』が、それから5周年という機会にまた劇場で多くの観客と出会う機会をいただきました。上映の機会をくださった東京のシアター・イメージフォーラム、神戸の元町映画館、大阪のシネ・ヌーヴォ、京都の出町座にこの場を借りて御礼を申し上げます。
劇場でご鑑賞いただくことは、この映画にとって本質的なことです。この映画は既にソフトも発売されているし、格別派手なことが起こる映画でもありません。それでも映画館という場所が、この映画と観客が深く交わることを助けてくれると確信しています。そこでは、この映画が写し撮っている、演者たちの魅力を体ごと感じることができると思います。そして、それはどんなスペクタクルに勝るとも劣らないものと私自身は感じています。
5時間17分で3部構成という特異な映画が、公開から5年を経てもまだこのような機会をいただけること自体、一つの奇跡のように感じますが、それは撮影で起きていたことの続きのようでもあります。『ハッピーアワー』の撮影中、 カメラの後ろからいつも、カメラの前に立つ演者たちが起こすとても繊細な、でもとても力強い「何か」に驚き続けてきました。その繊細さを、確かに捉える上で、映画館は最高の環境です。そこで『ハッピーアワー』と出会っていただ くことができたら、やはりとても幸せなことだと思います。
改めて、この映画を一緒に作った演者とスタッフに感謝します。あなたたちと過ごした時間が、今の私の基盤です。
ーー濱口竜介
プロフィール
1978年、神奈川県生まれ。2008年、東京藝術大学大学院映像研究科の修了制作『PASSION』
が第56回サン・セバスチャン国際映画祭や第9回 東京フィルメックスに出品され高い評価を得る。その後も日韓共同製作『THE DEPTHS』(2010)が 第11回フィルメックスに出品、東日本大震災の被災者へのインタヴューから成る『なみのおと』『なみのこえ』、東北地方の民話の記録 『 うたうひと 』(201 1〜2013/共同監督: 酒井耕 ) 、4時間を越える長編『親密さ』 (2012)、染谷将太を主演に迎えた『不気味なものの肌に触れる』を監督するなど、地域やジャンルをまたいだ精力的な制作活動を続け、『ハッピーアワー』(2015)で第68回 ロカルノ国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門最優秀女優賞受賞、第37回ナント三大陸映画祭では『銀の気球』賞、観客賞、第26回シンガポール国際映画祭では最優秀監督賞を受賞するなど世界の注目を集める。
『寝ても覚めても』(2018)が第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品、脚本参加の『スパイの妻』(2020/黒沢清監督)は第77回ヴェ ネチア国際映画祭銀獅子賞受賞。
【STORY】
もっと私を好きになりたい。
30代後半を迎えた、あかり、桜子、芙美、純は何でも話せる 親友だと思っていた。純の「秘密」を知るまでは...。 純の現状を思わぬかたちで知った彼女たちの動揺は、 いつしか自分の人生をも大きく動かすきっかけとなっていく。
第一部 かつての)花嫁たち 106分
第二部 はじめまして、さようなら。96分
第三部 ゆくか残るか 115分
監督 濱口竜介
田中幸恵 菊池葉月 三原麻衣子 川村りら
申芳夫 三浦博之 謝花喜天 柴田修兵 出村弘美 坂庄基 久貝亜美 田辺泰信 渋谷采郁 福永祥子
伊藤勇一郎 殿井歩 椎橋怜奈
製作総指揮:原田将、徳山勝巳
プロデューサー:高田聡、岡本英之、野原位
脚本:はたのこうぼう(濱口竜介、野原位、高橋知由)
撮影:北川喜雄 録音:松野泉 照明:秋山恵二郎 助監督:斗内秀和、高野徹 音楽:阿部海太郎
製作・配給:神戸ワークショップシネマプロジェクト(NEOPA,fictive)
宣伝:佐々木瑠郁、岩井秀世
2015/日本/カラー/317分/16:9/HD