『新聞記者』のプロデューサーが、私たちが生きる“今”と“メディアの正体”に警鐘を鳴らす、新感覚ドキュメンタリー『i-新聞記者ドキュメント-』。
本作は、オウム真理教を題材にした『A』やその続編『A2』、そしてゴーストライター騒動の渦中にあった佐村河内守を題材にした『FAKE』などで知られる映画監督で作家の森達也監督が、東京新聞社会部記者・望月衣塑子の姿を通して日本の報道の問題点、ジャーナリズムの地盤沈下、ひいては日本社会が抱える同調圧力や忖度の正体に迫る社会派ドキュメンタリー。第32回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門で作品賞を受賞しました。
昨年公開され、大ヒットを記録したのも記憶に新しいが、菅官房長官時代の菅首相をこれほど捉えた作品はございません。菅政権の誕生でにわかに注目が集まっていることを受け、今回10月9日(金)から15日(木)の一週間限定で、新宿ピカデリーにて再上映が決定致しました。
初日となる10月9日(金)には、テレビの報道番組やドキュメンタリーの制作を行なっているディレクターや映画監督らで立ち上げた映像制作チームChoose Life Projectとコラボでトークイベントを開催。菅首相とは何者か?官房長時代、記者会見で連日質問を投げかけてきた菅総理の“天敵”とも言える望月衣塑子さん、朝日新聞の政治面コラム「政治断簡」を担当していた高橋純子さん、そして立憲民主党参議院幹事長の蓮舫参院議員をお迎えして語りました。
以下、オフィシャルレポートとなります。
『i-新聞記者ドキュメント-』再上映記念シンポジウム
「菅政権の正体」
■日時:10月9日(金) 18:00~19:00
■場所: 新宿ピカデリー シアター3 (東京都新宿区新宿3丁目15番15号)
■登壇:望月衣塑子(東京新聞・記者)、高橋純子(朝日新聞・編集委員)、蓮舫(参議院議員)
■MC:津田大介(ジャーナリスト/メディア・アクティビスト)
■主催:Choose Life Project
菅政権の誕生でにわかに注目が集まっていることを受け、再上映となった『i-新聞記者ドキュメント-』。10月9日~11日の3日間は、各界の有識者を集めシンポジウムも開催される。初日の10月9日(金)には、司会をジャーナリストの津田大介さんが務め、官房長時代、記者会見で連日質問を投げかけてきた菅総理の“天敵”とも言える望月衣塑子さん、朝日新聞の政治面コラム「政治断簡」を担当していた高橋純子さん、そして立憲民主党参議院幹事長の蓮舫参院議員を迎えシンポジウムが開催された。
まず現段階での菅政権について、望月さんはついに学術の世界まで来たなという「人事独裁政権」、高橋さんは陰険、陰湿、陰謀の「陰」、蓮舫議員は見た目だけでその先に何があるのか全く分からない「パンケーキの甘さが全くない素顔」とフリップに一言でまとめた。
司会の津田さんから、「日本学術会議が推薦した候補を菅総理が任命拒否した問題が大きかった。菅政権の本質が垣間見れる非常に重大な出来事だと思う。何が問題だと考えるか」と問いかけられると、望月さんは「人事を掌握されることで、合理的矛盾を感じながらも官僚が官邸に従わないといけないという雰囲気になってしまっている」と語り、高橋さんは「説明が全くされないこと。政治的手法として権力の力でいじめを躊躇しない人なのでは」と菅総理のふるまいを批判、蓮舫議員は「超法規的解釈で何でもやってしまう。法律にないことを閣議決定で決めてしまう、さらに法律を変えようともしてしまう。官僚は今すごく委縮してますよ」と痛烈に批判し、「学問の自由」への政治の介入についてや、論理のすり替えや説明しない菅政権、そして官僚人事権も含めた権力の掌握術などを熱く議論した。
メディアに対するコントロールについて問われると、望月さんは「オープンな場での記者会見は極力減らして、密室でのグループ会見ですましたいんだろうなと思います」と言い、高橋さんは「国会議員、ましてや総理が説明責任を果たしていない。メディアは一丸となって記者会見を要求すべきだと思う。メディアの分断状況が進んでしまっている」とメディアの問題点をあげ、蓮舫議員は「記者として時の権力者にどれだけ切り込んでいけるかはすごく大事だと思う。記者クラブが一丸とならない要因を作っている。」と語り、メディアと権力のあるべき関係についてまでも議論は及んだ。また、メディアの置かれている立場として、「紙媒体からWEB媒体に移行してVIEWを稼ぐためにはいかに裏話を入手できるかになってしまい、権力監視から記事の価値軸がずれてきてしまっている。ジャーナリズムを持ち続けることがすごく大事」と高橋さんは時代の変化によるメディアの在り方などを語った。
菅政権のメディアコントロールを含めた、官僚、学者といった恣意的な人事権の介入が続いていることを受け、主権者である私たちが主権者であるために何が必要なのかを問われると、望月さんは「私はずっと叩かれ続けてますけど、どこに立って、何を報道していくのか、ということが大切だと思う。我々は市民や読者の応援もあって頑張り続けられている。フリーランスやWEBメディアの方や応援してくださっている方と連帯して、これからも政府の暴挙に立ち向かっていこうと思う」と熱く語り、高橋さんは「私たち主権者は力がある。もう一度思い出さないといけない。社会全体が自由でないと個人は自由になれない」、そして蓮舫議員は「安倍政権下で私たちは慣らされてしまっていた。自分たちのなすべきことをぶれずに守り抜くことが必要。これからも私は自分のポジションで戦っていこうと思う」と語るなど議論はヒートアップ。
最後に司会の津田さんから「この映画は、ある意味、菅さんに望月さんがずっといじめ続けられる映画なんです。そしていつの間にか森監督に望月さんが乗り移っていくという。今観ることでさらに楽しめる作品だと思う。ある国会議員が菅さんと食事したとき、菅さんが“権力って面白いですよ”と発言されたということを聞いたことがあるんですが、まさに菅政権はそうなりつつある気がする。僕も僕の立場で頑張って発信して生き続けます」と〆の言葉で、初日のシンポジウムは終了となった。
2日目の10日(土)は、司会を安田菜津紀さんが務め、政治学者の三浦まりさん、政治アイドルの町田彩夏さんテレビ朝日元「報道ステーション」チーフプロデューサーも務めた松原文枝さんをパネリストに迎え開催。菅政権の経済政策や女性政策について議論する。
3日目の11日(日)には、再び津田大介さんが司会を務め、元経済産業省の官僚である古賀茂明さん、映画にも登場する朝日新聞記者の南彰さん、そして本作の監督を務めた森達也監督が登壇する。劇場初公開の再編集・ディレクターズカット版の『i-新聞記者ドキュメント-』は10月15日(木)まで新宿ピカデリーにて限定公開中。
森達也監督の社会派ドキュメンタリー『i-新聞記者ドキュメント-』予告
監督:森達也 出演:
望月衣塑子 企画・製作・エクゼクティヴプロデューサー:河村光庸
監督補:小松原茂幸 編集:鈴尾啓太 音楽:
MARTIN (OAU/JOHNSONS MOTORCAR)
2019年/日本/113分/カラー/ビスタ/ステレオ
制作・配給:スターサンズ
©2019『i –新聞記者ドキュメント-』