先週末6/13(土)に公開しましたドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』、東中野・有楽町両館あわせて全6回、すべて満席での好調スタートとなりました。
その後も、各回で満席になることも多く、公開も全国30館に拡大。
コロナ禍後の今の時代だからこそ、もっとも見るべき政治ドキュメンタリー。
今作は、『園子温という生きもの』などの大島新監督が、志を持った政治家小川淳也衆議院議員(当選5期、四国比例)を初出馬し落選した2003年から追い続けたドキュメンタリー。
コロナ禍後、そして東京都知事選も近ずき政治のあり方が問われる中で、私たちが政治家に求めるのは?必要なものは?を真摯に問いかけられ、考えさせられる作品となっています。
誠実さを笑うか泣くか
いまの日本が浮かび上がる
衆議院議員小川淳也とはー
こんな政治家がいたのかーー
小川淳也衆議院議員
1971年香川県高松市生まれ。
高松高校・東京大学を経て、1994年自治省(現総務省)に入省。
2005年初当選。
民主党→民進党→希望の党を経て無所属。
2020年5月現在、立・国・社・無所属フォーラムに属し、立憲民主党代表特別補佐を務める。
著書に『日本改革原案』など。
なぜ小川淳也を撮り続けたのか
監督 : 大島 新
「このままでは死んでも死に切れん」。
2003年、小川淳也は総選挙への出馬を猛反対する家族に対し、そう言って説得した。その言葉を借りれば、私は「この映画を完成・公開しなければ死んでも死に切れん」と思った。ドキュメンタリー映像製作をはじめてから20年余り経った、2016年のことだった。
私が小川淳也と初めて出会ったのは、2003年10月10日、衆議院解散の日。小川は、私の妻と高校で同学年。妻から「高校で一緒だった小川くんが、家族の猛反対を押し切って出馬するらしい」と聞いて興味を持ち、カメラを持って高松を訪れたのだった。初めは興味本位だったが、およそ1カ月間取材をするうちに、「社会を良くしたい」と真っすぐに語る小川の無私な姿勢と、理想の政策を伝える説明能力の高さに触れ、私は「こういう人に政治を任せたい」と思うようになった。 小川はこの選挙では落選し、2005年の総選挙で初当選を果たす。以降、小川と私は年に数回会う関係になった。そして発表するあてもなく、時々カメラを回した。とはいえ、撮影なしで会うことがほとんどだった。
「やるからには目標を高く。自らトップに立って国の舵取りをしたい」と、初出馬の32歳の時から私に語っていた小川。2009年に⺠主党が大勝し政権交代を果たすと、目を輝かせながら「日本の政治は変わります。自分たちが変えます」と、意気揚々と話してくれた。しかし...
2011年の東日本大震災以降、⺠主党の政権運営の拙さが、徐々に白日の下に晒されていく。2012年、総選挙で大敗し、安倍政権が誕生。以降、野党は⻑期低迷期に入り、安倍一強と呼ばれる状態が続いた。 そうした時期の 2016年、小川との食事会の席で、私は「この人をもう一度きちんと取材し、記録したい。映画にしたい」という、突き上がるような思いを抱いた。この時期は自⺠党の“魔の2回生問題”が 世間を騒がせ、閣僚も含めた自⺠党議員の失言や暴言、スキャンダルが相次いだ。にもかかわらず、安倍政権は盤石、野党はと言えば、まとまりがなく、本気で政権を取りにいこうとしているようには見えなかった。小川も⺠進党の中で、もがいていた。優秀であることと、党内でポジションを上げていくことは、必ずしも比例しない。その頃私は「もしかしたらこの人は政治家に向いていないのではないか」と感じ始めていた。世界でも、日本でも、激しい言葉を発する強権的なリーダーが支持を得る傾向が強まっていた。そんななか、小川の誠実さは、いまの政治の潮流の中では、むしろあだになっているのではないかと思ったのだ。
その食事会の翌日に、私は一気に映画の企画書を書いた。タイトルは『なぜ君は総理大臣になれないのか』。不遜なタイトルだが、小川本人にぶつけてみようと思った。その企画書を持って、2016年の夏に議員会館を訪ねたのが、映画の冒頭のシーンだ。小川はタイトルも含め、取材を受け入れ、「すべて大島さんにお任せします」と言った。 以後、政治の節目節目に小川が何を考えているのかを聞いた。そして、2017年の総選挙がやってきた。 それは、“⺠進党の希望の党への合流”というドタバタ劇に巻き込まれた男の、悲壮感に溢れた選挙戦だった。
これは、⻑期にわたって見つめた一人の政治家の苦闘と挫折のドキュメンタリーである。私は、その記録を映画として発表することによって、日本の政治の一断面を社会に問いたい。
『なぜ君は総理大臣になれないのか』本予告編
監督:大島 新
プロデューサー:前田亜紀
撮影:高橋秀典、前田亜紀 編集:宮島亜紀 音楽:石﨑野乃
ライン編集:池田 聡 整音:富永憲一 制作担当:船木 光、三好真裕美 宣伝美術:保田卓也
宣伝:きろくびと
配給協力:ポレポレ東中野
製作・配給:ネツゲン
2020年/日本/カラー/119分/DCP
©ネツゲン