5月23日(土)、「文化とコロナウイルス~アートの力を考える~」をテーマとして、河瀨直美氏(映画監督)をモデレーター、平田オリザ氏(劇作家・演出家)・別所哲也氏(俳優)・MIYAVI氏(ギタリスト)・向井山朋子氏(ピアニスト/美術家)をパネリストに、オンラインディベートResiliArt Japanを実施し、河瀨氏がエグゼクティブディレクターを務める「なら国際映画祭」公式フェイスブック等でライブ配信しました。
ResiliArtは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により甚大な影響を受けている世界中のアーティスト、クリエイターや文化の専門家のしなやかな強さ(レジリエンス)を強化し、その声を発信することによ り、文化を巡る様々な課題解決への努力につなげることを目的とした、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ) が呼びかける世界的なオンラインディベート(討論)プロジェクトです。
冒頭挨拶によせたビデオメッセージで、オドレー・アズレー ユネスコ事務局長はResiliArtについて「アーティストおよび文化の専門家達が直面している課題やその解決を議論し、共にクリエイティブエコノミーの新たな システムを考えるプラットフォーム」であるとコメントし、4月15日の開始以来、本プロジェクトが既に31か国で48つのResiliArtディベートが実施され現在40以上が企画中という世界的な運動に成長しつつあると紹介しました。この度のResiliArt Japanの開催により「日本のクリエーターの皆様を、レジリエントなアーティスト達で構成する世界的なコミュニティに歓迎することは、ユネスコにとってこの上ない光栄です。」と述べました。
ディベートにおいて、平田氏は、日本と諸国の文化政策およびアーツカウンシル等の役割や支援の違いを説明し、日本のアーティスト達は競争と淘汰を躊躇する傾向にあると指摘した上で、より多様性を尊重することの重要性について述べました。別所氏は、文化は「人間が人間たるヒューマニティ・ワーク」であり、関わり支える人々は「文化従事者」というエッセンシャル・ワーカーであるという考え方について話し、日本は海外文化を受け入れ加工する名アレンジャーとして、より積極的に世界に向けてプレゼンスを高められると強調しました。
MIYAVI氏は、デジタル環境など世界全体が非物質化している中で人間はいかに適応していくのかと問いかけ、UNHCR親善大使として難民を巡る様々なアートプロジェクトが始まりアートの価値が問われている状況を紹介し、「アートの価値・力・レジリエンスを見直し再構築し、皆の声を届けよう。」と呼びかけました。
向井山氏は、在住するオランダの「生活目線に立った」文化政策の在り方や文化関係者が政府に直接提言できる状況につ いて説明し、人間と自然の共生や広がりのある人と人とのつながりの大切さを強調しました。
東京2020オリンピック競技大会公式映画監督も務める河瀬氏は、オリンピックが延期となる中においても現在の状況を見つめながら医療従事者や難民選手団等に取材を進めていることに触れ、「オリンピックは様々な困難を乗り越え開催されるべきであり、全人類が高めあい解決策を模索したい。」と話し、別所氏が「国立競技場が世界中の人を迎えることが出来なかったとしても、日本の文化人が全部、集まって何かをやるべき。」と呼びかけ、最後に「危機はチャンス。今日の各々の言葉の中から何か伝わっていけば嬉しい。」とまとめました。
パネリストおよびモデレーターは、政府に提言するためにはアーティストおよび文化従事者の結束が不可欠であるとし、新型コロナ感染症流行で表出した様々な課題に対応し新たな未来を構築するためには、文化と行政関係者達が共に継続して議論することが大切と話しました。
最後にユネスコ北京事務所ヒマルチュリ・グルング文化担当専門官が、パネリスト・モデレーターおよびアクセスした参加者等への感謝と共に、引き続き皆で課題解決を目指すべくそれぞれのディベートを企画・実施して欲しいと期待をよせ、閉会の辞を述べました。
下記Facebookにて、動画がご覧いただけます。
なら国際映画祭公式ページ