孤独な2人の男の刹那的な情愛を繊細なタッチで描く映画 『ソン・ランの響き』が2月22日に新宿・K‘s cinemaにて公開初日を迎え、レオン・レ監督と主演のリエン・ビン・ファットが登壇 、作品への思いを語りました。
本作は、1980年代のベトナム・サイゴンを舞台に、借金の取り立て屋のユンと、ベトナムの伝統歌舞劇<カイルオン>の花形役者リン・フンの刹那的な3日間の出会いを、退廃的で美しい80年代サイゴンのビジュアルと共に描いた「ボーイ・ミーツ・ ボーイ」の物語。
お揃いのベージュの衣装で登壇したレオン・レ監督とリエン・ビン・ファット。
ベトナムの伝統歌舞劇<カイルオン>をテーマに理由について問われたレオン監督は、「子供の時からカイルオンの役者になることが夢でしたが、13歳からアメリカで暮らすことになったんです。その時恐らくこの夢は叶わなだろうと思いました。しかし、カイルオンへの愛は私の中に1日も消えることなく、あり続けたんです。そして20年後、カイルオンの役者になることではなくカイルオンの映画をつくるという夢を持ってベトナムに帰国し、脚本を書き始めました」と語った。
リエン・ビン・ファットは、<カイルオン>の花形役者と惹かれ合う冷酷な借金取り・ユンを演じ、第31回東京国際映画祭でジェムストーン賞(新人俳優賞)を受賞。どのように役づくりしたか問われると、「俳優デビュー作であり、たくさん難しいシ ーンがあったため、私の全ての能力を費やしました脚本を何度も読み込み、演じるユンの人物像を分析し、カイルオンについても研究をしました。」と語った。
レオン監督は、リエンの主演のキャスティングの理由にも言及。「リエンさんのボディや美貌も重視しました。魅力的ですから笑。しかしそれよりも大事にしたのは彼の表現力です。特に無邪気な雰囲気の目です。」と振り返った。
またユンと惹かれ合うカイルオンの花形役者リン・フンを演じたアイザックについては、プロデューサーから提案された当初は断っていたと明かした。「韓国のポップスターのようなアイザックは適役ではないと思っていました。しかし、何百人に会ってもふさわしい人がいませんでした。それでもう一度彼と会ってみると、バランスが取れていると感じたんです。カイルオンの役者にもオーディションを受けてもらいましたが、映画の世界にとけ込めないんです。しかし、映画の役者はカイルオンを演じられない。彼はそのバランスが良かったんです。」 続いて、レオン監督への思いを問われたリエン。「レオン監督への思いはA4用紙2枚でも足りません。」と笑う。「最も尊敬しているのは、基準をもうけ、自分の主張を譲らず、最後までやり遂げるところ。周りが経済的な効果の出る方法を提案しても、最後まで自分の基準を維持していました。」と監督のこだわりを讃えた。
イベント終盤には、レオン監督、リエンが練習してきたという日本語でそれぞれ挨拶。レオン監督は「ありがとうございます 。これからもどうぞよろしくお願いします」と述べ、リエンも「友達にもどうぞよろしく!」と語り、開場は拍手に包まれた。
『ソン・ランの響き』予告編
STORY
......80年代のサイゴン(現・ホーチミン市)。借金の取り立て屋ユンは、ベトナムの伝統歌舞劇<カイルオン>の花形役者リン・フ ンと運命的な出会いを果たす。初めは反発し合っていたふたりだったが、停電の夜にリン・フンがユンの家に泊まったことをきっかけに心を通わせていく。実 はユンはかつて<カイルオン>には欠かせない民族楽器<ソン・ラン>の奏者を志した事があり、楽器を大切に持っていたのだった。一見対照的だが共に 悲しい過去を持つふたりは、孤独を埋めるように響き合い、結ばれる。やがてこれまで感じたことの無い気持ちを抱き始めたふたりは、翌日の再会を約束し 別れる。しかし、ユンが過去に犯したある出来事をきっかけに、ふたりの物語は悲劇的な結末へと突き進んでいく――
監督:レオン・レ
キャスト:リエン・ビン・ファット アイザック スアン・ヒエップ
【2018年/ベトナム/102分】
©STUDIO68
提供:パンドラ
配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト
配給協力:ミカタ・エンタテインメント