『レポマン』、『シド・アンド・ナンシー』など映画史にその名を刻むパンク監督、アレックス・コックスの作品を一挙上映する「アレックス・コックス映画祭」が、9 月 14 日(土)から 9 月 27 日(金)まで新宿 K’s cinema にて開催されます。
実に 32 年ぶりにスクリーンによみがえるアレックス・コックスの才気を印象づけたデビュー作『レポマン』(1984)。セックス・ピスト ルズのメンバーで、ドラッグ中毒のため、21 歳で他界した伝説の人物、シド・ヴィシャスと恋人ナンシー・スパンゲンの破滅的ラブストーリーを描く『シド・アンド・ナンシー』(1986)。ジョー・ストラマーら出演、マカロニ・ウエスタンへのオマージュを捧げた『ストレート・トゥ・ヘル』(1987)。アレックスがメキシコを舞台に初めて全篇スペイン語で撮り、新境地を切り開いてみせた『エル・パ トレイロ』(1991)。近未来のメガロポリスで起きた謎の連続殺人事件を描いた迷宮感覚のミステリー『デス&コンパス』(1996)。ラスヴェガスで生きるギャンブラーと、その複雑な人間模様を描く『ザ・ウィナー/ディレクターズ・カット版』(1996)。リヴァプール、ロッテルダム、香港、東京などが舞台となった不思議なロードムービー『スリー・ビジネスメン』(1998)。アレックスがB級映画の帝王、ロジャー・コーマンと手を組んだ『サーチャーズ 2.0』(2007)の 全8本を上映します。
アレックス・コックス ALEX COX
1954 年 12 月 15 日英国リヴァプール生まれ。オックスフォード大学で法律を学んだ後、ブリストル大学や UCLAで映画を学ぶ。デビュー作『レポマン』(84)はアメリカではカルト的な人気を獲得。『シド・アンド・ナンシー』(86)も世界中で高い評価を得た。『ストレート・トゥ・ヘル』(87)には多彩なキャストが集結、風刺劇『ウォーカー』(87)でも才気を発揮した。90 年代以降はメキシコを舞台にした『PNDC-エル・パトレイロ』(91)、ボルヘス原作の『デス&コンパス』(96)を手掛け、ハリ
ウッド・キャストの『ザ・ウィナー』(96)、日本の男優も出演の『スリ ー・ビジネスメン』(97)、英国で撮った野心作『リベンジャーズ・トラジディ』(02)、西部劇へのオマージュ『サ ーチャーズ 2.0』(07)等、国籍を超えた活動を見せ、オフビートな風刺精神とシュールな感覚でカルト的な人気を獲得している。近年は『レポマン』の姉妹編的な“Repo Chick”(09)、SF の”Bill,the Garactic Hero”(14)、西部劇“Tombstone Rashmon”(17)なども発表している。
開催にあたり映画評論家の柳下毅一郎さんよりコメントも頂きました。
パンクとはアティチュードであり、決して誰にも妥協しないことだ。 アレックス・コックスが「パンク監督」と呼ばれたのはパンク音楽を聞くからでも、セックス・ピストルズについての映画を作ったからでもない。 彼がつねに権威に抗い、虐げられる者の側に立ち、決して妥協せず、おかげで流れ流れることになっても変わらず意気軒昂として戦いつづけるからである。イギリス、アメリカ、ニカラグア、メキシコ、日本......どこへ行こうとコックスは変わらず戦いつづける。これは三十年間の闘争の記録だ。一度パンクになったら、人は死ぬまでパンクでありつづけるのだ。
柳下毅一郎(映画批評家/特殊翻訳家)
常に商業映画からは一線を画し、パンク精神に貫かれたアレックス・コックスの作品群を堪能する貴重な機会となります。
作品紹介
『レポマン』
REPO MAN
1984 年│92 分│アメリカ│BD
出演:エミリオ・エステベス、ハリー・ディーン・スタントン
✹アレックス・コックスの才気を印象づけたデビュー作。スーパーの店員をクビになったパンク青年が、ローン未払いの車を取りたてる闇商売に手をそめていく ......。オフビートなユーモアと奇妙なSF感覚が炸裂! ニューヨークのミニシアターでロングランとなり、カルト的な人気を獲得した。主役のパンク青年役はハリウッドの青春スター、エミリオ・エステベス。共演は『パリ、テキサス』で知られるハリー・ディーン・スタントン(17 年 91 歳で逝去)。イギー・ポップの音楽も鮮烈な印象を残す。
©universal
『シド・アンド・ナンシー』
SID & NANCY
1986 年│112 分│イギリス│35mm
出演:ゲイリー・オールドマン、クロエ・ウェブ
✹70 年代後半のロンドンに出現し、パンク・ロック・ムーブメントの中心的なバンドとなったセックス・ピストルズ。そのメンバーで、ドラッグ中毒のため、21 歳で他界した伝説の人物、シド・ヴィシャスと恋人だったナンシー・スパンゲンの破滅的ラブストーリーを描く。コックス監督の代表作の 1 本で、『チャーチル』で 18 年のオスカーを手にした名優、ゲイリー・オールドマンが若き日のシドを熱演。彼を愛するグルーピー 役はクロエ・ウェブ。
©canal plus
※メイキングの短編『イングランド・グローリー』(30分)を併映。
『ストレート・トゥ・ヘル』
STRAIGHT TO HELL
1987 年│86 分│イギリス・アメリカ・メキシコ│35mm
出演:ディック・ルード、ジョー・ストラマー
✹3 人の殺し屋が殺しには失敗するが、銀行強盗には成功。途中で車がエンコして、ぶっそうな町にたどりつき、奪った金に目をつけられ、壮絶な死闘を繰り広げる。メキシコを舞台にしたオフビートな作品で、マカロニ・ウエスタンへの数々のオマージュも登場。元クラッシュのジョー・ストラマー、サイ・リチャー ドソン、ディック・ルード主演。デニス・ホッパー、エルヴィス・コステロ、コートニー・ラヴ、グレイス・ジョーンズなど個性豊かなゲストの演技も見ものとなっている。
©alexcoxfilms
『エル・パトレイロ』
EL PATULLERO
1991 年│103 分│日本・アメリカ・メキシコ│BD
出演:ロベルト・ソサ、ブルーノ・ビシール
✹アレックスがメキシコを舞台に初めて全篇スペイン語で撮り、新境地を切り開いてみせた作品。警察学校を出て理想に燃えていたハイウェイ・パトロールマンの主人公が次第に不正に足を踏み入れ、苦悩する姿がリアルに描写されていく。 主演はメキシコの若き男優、ロベルト・ソサ。
©alexcoxfilms
『デス&コンパス』
DEATH AND THE COMPASS
1996 年│88 分│メキシコ・アメリカ・日本│35mm
出演:ピーター・ボイル、クリストファー・エクルストン
✹アルゼンチンの作家、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの短編の映画化で、近未来のメガロポリスで起きた謎の連続殺人事件を描いた迷宮感覚のミステリー。三原色を基調とし幻想怪奇な色彩で、不条理な世界を描写する。個性派男優、クリストファー・エクルストン、ベテランのピーター・ボイルが出演。©adansonia
『ザ・ウィナー/ディレクターズ・カット版』
THE WINNER
1996 年│95 分│アメリカ│35mm
出演:ヴィンセント・ドノフリオ、レベッカ・デモーネイ
✹ラスヴェガスで生きるギャンブラーが主人公で、その複雑な人間模様を描く。主役のギャンブラー役に『フルメタル・ジャケット』のヴィンセント・ドノフリオ、2 流のシンガー役にレベッカ・デモーネイ。ビリー・ボブ・ソーントン、マイケル・マドセンなど、ハリウッドの個性派たちも共演。
©stone bear
『スリー・ビジネスメン』
THREE BUSINESSMAN
1998 年│77 分│オランダ・イギリス・アメリカ│BD
出演:アレックス・コックス、ミゲル・サンドバル
✹ホテルで出会ったビジネスマンたちが街を歩き、語り合う姿を描き出す。リヴ ァプール、ロッテルダム、香港、東京などが舞台となった不思議な感覚のロード ムービー。監督自身やミゲル・サンドバル、日本の永瀬正敏、田口トモロヲ等も出演している。
©mdp
『サーチャーズ 2.0』
SEARCHERS 2.0
2007 年│96 分│アメリカ│BD
出演:デル・ザモラ、サイ・リチャードソン
✹二人の中年役者がロサンゼルスからアリゾナへと復讐の旅に出る。アレックスがB級映画の帝王、ロジャー・コーマンと手を組んだ作品で、ジョン・フォード監督の西部劇の傑作『捜索者』のスタイルを借りつつも、イラク戦争など現代社会への風刺も盛り込んだ作品。出演はデル・ザモラ。
©alexcoxfilms