世界に先駆けてデジタルシネマにフォーカスし、若手映像クリエイターの登竜門として2004年にスタートしたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭(主催:埼玉県、川口市ほか)は、7月13日(土)より16回目の開催を迎え、最終日となる本日21日(日)のクロージング・セレモニー(表彰式)にて、国際コンペティション、国内コンペティションの各賞を発表いたしました!

国際コンペティションでは、長編アニメーション作品としては本映画祭16回目にして初めての国際コンペティションノミネートとなった『ザ・タワー』(ノルウェー、フランス、スウェーデン/マッツ・グルードゥ監督)が最優秀作品賞(グランプリ)を受賞!さらに観客からの投票で選ばれる「観客賞」とのW受賞を果たしました!

『ザ・タワー』は住む地を追われ、70年もの間レバノンのパレスチナ人難民キャンプで暮らす曽祖父と、彼を愛する少女の

深い絆を軸に、4世代に渡る歴史を、クレイアニメと手描きアニメの2つの手法を駆使して描いた感動作。

国内コンペティションでは、長編部門で『サクリファイス』(日本/壷井濯監督)、短編部門で『遠い光』(日本/宇津野達哉監督)がそれぞれ優秀作品賞を受賞し、国際コンペティション・国内コンペティションを通じた日本作品の中から、今後の長編映画制作に可能性を感じる監督に対し贈られる「SKIPシティアワード」には『ミは未来のミ』(日本/磯部鉄平監督)が輝きました!!
磯部鉄平監督は昨年の本映画祭国内コンペティション短編部門で『予定は未定』が優秀作品賞を受賞しており、2年連続の受賞となりました。
そのほか、国内コンペティションの観客賞には、短編部門で『歩けない僕らは』(日本/佐藤快磨監督)、長編部門で『おろかもの』(日本/芳賀俊監督、鈴木祥監督)が輝きました。

国際コンペティション

最優秀作品賞&観客賞
『ザ・タワー』

2018年/ノルウェー、フランス、スウェーデン/77分
監督:マッツ・グルードゥ
©Jour2Fete

画像1: 最優秀作品賞&観客賞 『ザ・タワー』
画像2: 最優秀作品賞&観客賞 『ザ・タワー』

※パトリス・ネザンプロデューサーが代理受賞コメント

監督の代理でお話しさせていただきます。まずは、日本の観客の皆さんに本作を観ていただけたことを大変光栄に思うと共に、受賞できて嬉しく思います。また、観客の皆さんから色々な反応を頂けましたことも嬉しく思っております。日本においてはこういった難民問題は少し縁遠いのかもしれませんが、恐らくこの映画が皆さんに響いたのは、本作が人間性あふれるものであり、そして描かれている難民キャンプでの彼らの現状に普遍性があるからなのではと思います。アニメーションというのは非常に時間のかかる工程です。この作品もマッツ・グルードゥ監督と足掛け8年かけて作品を完成させました。監督がこの作品で何を描きたいのかというのは最初からハッキリしていました。何故なら、これは監督自身が実際に難民キャンプで過ごした子供時代に基づく作品で、たくさんのリサーチを元にしています。なので、出来るだけ現実を忠実に描きたいという思いがありました。難民キャンプで暮らす人々がお互いに対して持っている尊敬の念や愛情、ユーモアの感覚などをしっかり描きたいという思いがあり8年かかったのです。我々ヨーロッパ、特にフランスにおいては、日本のアニメーションや漫画から多大な影響を受けています。本作のような大人向けのアニメーションを作っていくなかで、そういった日本の文化とヨーロッパの文化の架け橋的なことができることを大変嬉しく思っています。

監督賞『イリーナ』

2018年/ブルガリア/96分
監督:ナデジダ・コセバ

画像1: 監督賞『イリーナ』
画像2: 監督賞『イリーナ』

※ステファン・キタノフ \b0プロデューサーが代理受賞コメント

監督の代わりになりますが、このような素晴らしい賞を頂き、ありがとうございますと申し上げたいと思います。とても嬉しい気持ちで一杯です。今回の来日で12日間ほど日本に滞在させていただき、非常に楽しいひとときを過ごしましたが、残念なことに、滞在中に京都アニメーションであのような事件が起きてしまい、非常に悲しい気持ちを抱きながら日本を去ることになりそうで、そこはとても残念でなりません。気持ちは遺族の皆さんと共にあることを申し上げたいと思います。また、世界がより平和にならんことを願っております。

本作はブルガリアの映画です。日本の皆さんがブルガリアで連想するものといえばヨーグルトや琴欧州だと思いますが、願わくはナデジダ・コセバ監督と組んだ三作目である本作によって、日本の観客の皆さんの目がブルガリアに向けられるきっかけになれば幸いです。

監督賞『陰謀のデンマーク』

2019年/デンマーク/119分
監督:ウラー・サリム
©Henrik Ohsten

画像1: 監督賞『陰謀のデンマーク』
画像2: 監督賞『陰謀のデンマーク』

ウラー・サリム監督監督 \b0

このような素晴らしい賞を頂けたことは大変光栄に存じます。映画祭の皆さん、審査員の皆さんに感謝を申し上げます。今回、日本に来るのは初めてですが、決して『ロスト・イン・トランスレーション』のようなわけのわからない状態にはなりませんでした。非常に温かく、親切に迎えていただきました。人を敬う日本の文化が世界に広がっていけばと思っています。本作は、いわゆる最悪の事態を描いているわけですが、あくまでもこういったことも起こり得なくないということを描いたつもりです。観客のみなさんに考えていただきたいのは、どのようにしてその中から最善の道を見出すかということだと思います。映画にはそういった力が宿っているとわたしは考えています。

また、デンマークでこの映画を作れたことも大変誇りに思っています。まさかこの遠く離れた日本の皆さんにも響くことになろうとは想像もしませんでした。色々な反響を皆さんからいただけて、一映画制作者、映像作家として希望に胸を膨らませることができました。次回、さらに良い作品を創ろうというモチベーションに繋がりました。

審査員特別賞『ミッドナイト・トラベラー』

画像: 審査員特別賞『ミッドナイト・トラベラー』

2019年/アメリカ、カタール、カナダ、イギリス/87分
監督:ハサン・ファジリ
©Hassan Fazili

◎国際コンペティション 審査委員長 三池崇史(映画監督) コメント

受賞者のみなさん、改めておめでとうございます。いずれの作品も素晴らしい作品でした。キャリアの浅い、いわゆる新人という方々が作られたとは到底思えない、レベルも技術も志も高い作品ばかりでした。

最初、我々審査員が戸惑ったのは10本の映画すべてジャンルが違うことです。サスペンスもあれば、父の浮気など身近な問題があったり。特徴としては女性の監督がたくさんいました。色々な国の事情や状況によって自分の居場所を失った人々の内面を描いた作品もありました。ドキュメンタリーもあればアニメーションもあり。普通審査というとジャンルで括られてその中で優劣を競うものなのですが、この「映画作品に垣根はありません」というようなフリーな感覚、これぞDシネマ映画祭の良さだなと思いました。

ここからはわたしの映画監督としての個人的なお願いになります。今日受賞された監督、スタッフ、関係者の皆さんはこれから色々な方々に連絡したりするでしょう。それを聞いた人たちが世界中で「本当に?うれしい!」と笑顔になるのです。我々、現場で映画を作っている人間はそういう喜びや事実を胸に、明日へ向かって一歩一歩進んでいきます。良い時ばかりじゃないですから、苦しい時にもこれは映画を作る人間の支えになります。自分自身もこれまで色々な映画祭で様々な評価をいただいて、それは本当に有り難く身に染みて感じるところです。その裏返しとして、この映画祭にはある意味、重い責任が同時に生まれていると感じています。「俺はDシネマ映画祭で賞を獲ったんだ!」と誇りを持って、10年たっても20年たっても言えるように、この映画祭を高いレベルで運営し続けなくてはならない。そこには様々な問題があると思います。作品選定だったり、運営だったり、大変だとは思いますがなんとか盛り上げていただき、願わくば、商業的にもならず。どうしても規模が大きくなるとスポンサーが付いたり、なんとなく日本人は忖度が得意だったりしますから。僕の立場から客観的に見ると、この映画祭はそういった部分から解放されていて、非常に個性的で自立していると思います。これは川口市が誇ることでもあるし、埼玉県も誇れることであると思います。こういった喜びの場を作っていただいた映画祭の関係者の皆さまに、映画の現場で動いている人間を代表しまして、大変かとは思いますが今後もこの素晴らしい映画祭をこのまま続けていってくださいとお願いします。また、僕らで出来ることがあればご協力させていただきたいと思います。本当に有意義な時間を過ごせていただきました。次を作っていく監督たちの作品に出会えたことを幸せに思っています。…俺も引退までは頑張りたいと思います。ありがとうございました。

SKIPシティアワード

『ミは未来のミ』

2019年/日本/62分
監督:磯部鉄平
©八王子日本閣

画像1: 『ミは未来のミ』
画像2: 『ミは未来のミ』

磯部鉄平監督コメント

去年はSKIPシティ国際Dシネマ映画祭の短編部門で優秀作品賞をいただいて、長編を撮って早くSKIPシティに帰ってきたいと、同じクロージング・セレモニーの会場で言ってから1年後、またこうやって戻って来れて、賞までいただけて本当に嬉しいです。初長編作品には自分が高校3年生の時の話をやろうと前から決めていたので、その話で賞を取れて本当に嬉しいです。ありがとうございます。

※「SKIPシティアワード」は、国内コンペティション、国内コンペティションを通じた「日本作品」の中から選出・授与する賞です。

国内コンペティション 受賞結果

優秀作品賞(長編部門)『サクリファイス』

2019年/日本/76分
監督:壷井濯
©2018立教大学映像身体学科/Récolte&Co.

画像1: 優秀作品賞(長編部門)『サクリファイス』
画像2: 優秀作品賞(長編部門)『サクリファイス』

壷井濯監督 コメント

平成の終わりに多くの凶悪殺人犯と呼ばれる人たちが一斉に死刑になって、何も語らないまま事件が終わって、令和を迎えて、令和令和だとみんな騒いで、そしてまた登戸の事件が起きて、そして先日京都アニメーションの事件が起きて、物語に、映画とかに出来ることは改めて何もないなと物悲しく思いました。3.11が起きた時もずっとそう思っていて、でも押し寄せる津波に対してできることは何もないんですけど、その後、これからくる第2波第3波の波とかナイフとか炎に対してはきっと物語はできるものが何か守れるものがあると思って、これからもここに一緒に参加できた若い方達と一緒に物語を紡いでいきたいと思っています。SKIPシティは一言で言うと多様性のある場所だと思いました。色んな国籍の方、外国の子供、障害のある人ない人、大人・子供・赤ちゃん…僕の友達も赤ちゃんを連れて作品を見に来てくれて、映画祭の保育サービスに赤ちゃんを預けて見に来てくれて。最後は赤ちゃんを抱っこして帰っていきました。今ある既成の権威とか、そういうものをみんなで一緒に壊して、明日はもっと良くなる、きっと良くなると思える社会を、ちょっと大げさですが作っていきたいです。ありがとうございました。

優秀作品賞(短編部門)『遠い光』

2019年/日本/19分
監督:宇津野達哉
©遠い光製作委員会2019

画像1: 優秀作品賞(短編部門)『遠い光』
画像2: 優秀作品賞(短編部門)『遠い光』

宇津野達哉監督

ちょっと頭が真っ白です。受賞すると思っていなく、荷物を控室に置くように言われていたのにしっかりと席に持って来ちゃったので、荷物が心配です(笑)。上映の時にも何度かお話をしたんですが、僕の幼少の時から猟に連れていってくれた叔父の奥さん、僕からするとおばさんが癌になったことをきっかけに書き出した脚本で、すごく個人的なスタートだったんですけど、映像化にいたっては千歳烏山というところで材木店の社長さんにたまたま居酒屋で会って、映画を作りたいんだと言ったら300万ぽんと出してくれて。そんな始まりだったんですが、まさかこんなところでこんな素敵な賞をいただくことになるとは思っていなかったので、本当に胸がいっぱいです。普段は映画やドラマのメイキングや助監督として活動しているのですが、これからは監督として、長編制作や商業デビューできるよう、一歩ずつ頑張っていきたいと思っています。本当にありがとうございます。

観客賞(長編部門)『おろかもの』

2019年/日本/96分
監督:芳賀俊、鈴木祥
©2019「おろかもの」制作チーム

画像1: 観客賞(長編部門)『おろかもの』
画像2: 観客賞(長編部門)『おろかもの』
画像3: 観客賞(長編部門)『おろかもの』

芳賀俊監督、鈴木祥監督 コメント

<鈴木祥監督>

ご覧いただいた観客の皆様、本当にありがとうございます。そして、本作を一緒に作ってくれた俳優陣、そして一人一人がそれぞれの仕事にしっかり集中してくれたスタッフ、また芳賀君と僕の家族が、制作にあたって全てを支えてくれたので、改めてここで感謝を述べたいと思います。ありがとうございます。大学を卒業して約10年ぶりに芳賀君とタッグを組んで撮ったんですが、やっぱり映画を作っている最中は、時間を忘れるくらい楽しいことで、今後も機会があればそういった制作を続けていきたいと思います。この作品(『おろかもの』)も、これを機会に様々な方にご覧いただきたいと思います。

<芳賀俊監督>

自分の子供のように大切な作品が観客の皆様に愛されたということが本当に嬉しいです。ありがとうございます。

2019年/日本/96分
監督:芳賀俊、鈴木祥
©2019「おろかもの」制作チーム

観客賞(短編部門)『歩けない僕らは』

2018年/日本/37分
監督:佐藤快磨
© 映画『歩けない僕らは』

画像1: 観客賞(短編部門)『歩けない僕らは』
画像2: 観客賞(短編部門)『歩けない僕らは』

佐藤快磨監督コメント

この『歩けない僕らは』という作品は、リハビリテーション病院を舞台に、突然、脳梗塞や脳卒中になってしまったような方々、突然歩けなくなってしまった方々の物語ですけども、ずっと脚本を書いていく中で歩ける自分がこの映画を撮る意味みたいなものをずっと考えていまして、1年弱取材に通わせていただいたり、お話を聞いたりしたんです。撮影中から今回上映する直前まで、本当にその思いっていうものがずっと消えなくて。ただ、今回上映させていただいて、その後観客の皆様から質問だったり感想をいただいたことで、自分もこの映画に対する向き合い方が一歩前に進めたような気がして、やっぱり初めてお客様に見ていただいて映画になるんだな。とこの映画祭で感じました。またこの映画祭に帰って来られるように、面白い脚本を書いて精進します。

◎国内コンペティション 審査委員長 荻上直子(映画監督) コメント

今回ノミネートした皆さんの作品、楽しみに見させていただきました。デジタル化が進んで、クオリティは凄くアップして、このまま劇場でかけられるんじゃないか、という作品もいくつかありました。一方で、本当に作りたくて仕方ないパッションに満ちた、ほとばしるような映画は近年なかなか見せてもらえていないなと、それがちょっと残念に思っています。私も自主映画出身です。だから皆さんがどれだけ映画を作りたくて作りたくてしょうがないか本当にわかっているつもりです。10年後、20年後もずっと作り続けてください。

主催者コメント

○上田 清司 (実行委員会会長/埼玉県知事)
16年目を迎えたこの映画祭は、当初の予想以上に素晴らしいクリエイター、監督たちがたくさん育ってくれた。これまでに『孤狼の血』の白石和彌監督、『湯を沸かすほどの熱い愛』の中野量太監督はじめ本当にたくさんの若い優れた才能がこのSKIPシティからスタートしている。国内コンペティション審査委員長の三池崇史監督は、先月の記者発表で「映画祭は作品を多くの人に観てもらうチャンスを与えてくれる。扉を開けてくれる場だ。」と話されていた。まさに我々が考えていたことを端的に言い当ててくれた。県がスポンサーになり、ボランティアの方たちが盛り上げてきた映画祭。そういう意味で、地域から生まれた映画祭が、作品を日本に世界に広げてくれていることを、おおいに誇りに思っている。

○奥ノ木 信夫 (実行委員会副会長/川口市長)
最優秀作品賞に輝きました『ザ・タワー』のマッツ・グルードゥ監督はじめ、国際コンペティション、国内コンペティション長編・短編、それぞれで受賞された皆様方に私からも重ねてお祝いを申し上げたいと思います。本当におめでとうございます。
そしてこの映画祭に来場された皆様には、クリエイターの作品に対しての情熱や鋭い感覚と最新のデジタル技術が融合することで生み出された各部門のノミネート作品を鑑賞していただき、デジタルシネマの魅力を十分堪能していただけたと思います。

〇土川 勉 (SKIPシティ国際Dシネマ映画祭ディレクター)
今年の映画祭は昨年の猛暑の中での映画祭と打って変わって、梅雨真っ只中での映画祭になりましたが、多くの皆様にご来場いただき、無事に終了することができました。受賞者の皆様、おめでとうございます。今年は監督賞で、1つの賞に対し2作品の受賞というケースもございましたが、これは決して苦渋の選択という意味ではありません。一人でも多く、審査員から才能ある作家に対しての今後への激励であると解釈してください。来年は東京オリンピック・パラリンピック2020の年ですが、SKIPシティ映画祭国際Dシネマ映画祭は不滅です。また来年もこの場でお会いしましょう。

画像: 主催者コメント

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019(第16回)開催概要

■会期:2019年7月13日(土)~7月21日(日) <9日間>

■会場:SKIPシティ(埼玉県川口市)

■内容:国際コンペティション、国内コンペティション、特集上映、関連企画、イベント等

■主催:埼玉県、川口市、SKIPシティ国際映画祭実行委員会、特定非営利活動法人さいたま映像ボランティアの会

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