六本木の森美術館において、森美術館15周年記念展 「六本木クロッシング2019展:つないでみる」が開催中です。
「六本木クロッシング」は森美術館が3年に一度、日本の現代アートシーンを総覧する定点観測的な展覧会として2004年以来開催してきたシリーズ展です。第6回目の開催となる今回は、シリーズ初の試みとして、森美術館の3人のキュレーターで共同キュレーションを行い、1970-80年代生まれを中心とした日本のアーティスト25組を紹介しています。

「六本木クロッシング2019展:つないでみる」は、現代の表現を通して見えてくる「つながり」に注目します。情報通信技術など、さまざまなテクノロジーが加速度的に進化し、私たちの生活が便利になっていく一方で、それに起因する新たな問題も浮かび上がっています。価値観の多様性が認められるようになった一方で、オープンであるはずのインターネットが、特にSNSにおいて、意見や認識の同調や共感を助長し、逆説的に閉鎖的なコミュニティを生み出してしまう問題、偏った政治観によって引き起こされる軋轢や拡がり続ける経済格差など、さまざまな「分断」が顕在化しているようです。

こうしたなか、対極のものを接続すること、異質なものを融合すること、本来備わっている繋がりを可視化することなど、アーティストたちは作品を通じてさまざまな「つながり」を提示します。それらは現代社会に対する批評的な視点や発想の転換でもあり、「分断」と向き合うためのヒントとなるかもしれません。新たな「つながり」を通して、本展が日本の今に向き合う有意義な機会となることを期待します。

画像: 展示風景:飯川雄大《デコレータークラブ―ピンクの猫の小林さん―》2019年 作家蔵 photo©msaito

展示風景:飯川雄大《デコレータークラブ―ピンクの猫の小林さん―》2019年 作家蔵
photo©msaito

画像: 展示風景:目《景体》 2019年 作家蔵 photo©msaito

展示風景:目《景体》 2019年 作家蔵
photo©msaito

画像: 展示風景:磯谷博史《花と蜂、透過する履歴》2018年、《母親の子、祖母の孫》2019年 作家蔵 photo©msaito

展示風景:磯谷博史《花と蜂、透過する履歴》2018年、《母親の子、祖母の孫》2019年 作家蔵
photo©msaito

展示を紐解く3つの鍵

展示を紐解く3つの鍵が挙げられています。

[1]テクノロジーをつかってみる

扱うには専門的な知識や経験が必要とされる最新のテクノロジーですが、アーティスト達は最新の技術や理論を独自の方法で使い、これまでにない実験的な作品や表現を創り出します。森永邦彦が率いるファッションブランドのアンリアレイジは、東京大学の川原研究室とコラボレーションし、人の体温で形状が変化する、低沸点液体を使った新しい服のあり方を提案します。平川紀道の《datum》は、ありふれた風景画像を独自のアルゴリズムで変換することで、数学理論的に考え得る多次元空間を表現しています。林千歩の映像作品《人工的な恋人と本当の愛》は、最新のテクノロジーを直接用いているわけではありませんが、人間の短所や情けない性質を備えるAIロボットのユーモア溢れる愛の物語を描くことで、AIや人工生命の最先端の研究と同じように、私たちの生命や人間性の定義について考えることを促します。

画像: 展示風景:林 千歩《人工的な恋人と本当の愛-Artificial Lover & True Love-》 2019年 作家蔵 photo©msaito

展示風景:林 千歩《人工的な恋人と本当の愛-Artificial Lover & True Love-》 2019年 作家蔵
photo©msaito

[2]社会を観察してみる

社会学的な視点から世の中や身の回りで起こっていることを観察することで、そこに潜む事実やまったく新しい発見を導き出すアーティストの視線に注目します。竹川宣彰の《猫オリンピック:開会式》は、猫たちが無邪気にスポーツの祭典に興じる愛らしい様子を通じて、東京オリンピックに沸く現代日本を普段とは違う視点から考えるきっかけを与えてくれます。田村友一郎の《MJ》は、マイケル・ジャクソンが来日した時のエピソードに着想を得て、現代のポップカルチャーに潜むカリスマや神聖化されるアイコンに迫っています。榎本耕一の絵画は、神話から史実やポップカルチャーを混合したハイブリッドで軽快な作品で、その激しい表現の中には、生きることや何気なく受け入れている日常に対する真摯な視線を感じることができます。

画像: 展示風景:手前:竹川宣彰《猫オリンピック:開会式》 2017年 作家蔵 photo©msaito

展示風景:手前:竹川宣彰《猫オリンピック:開会式》 2017年 作家蔵
photo©msaito

[3]ふたつをつないでみる

アーティスト達は、思いもよらないものを繋げてみることで、新しい視点を提示し、これまでにない価値を作り出すことができます。万代洋輔は、不法投棄されたゴミなどを組み合わせて、神々しいオブジェを作ります。それを被写体とした写真は、俗と聖が混在する不思議で魅力的な作品となっています。青野文昭は、古く使えなくなった車や家具など様々なものを組み合わせて、新しい生命力を秘めるような彫刻作品を作ります。ものを直すという行為が、本来の物そのものとはまったく別の新しい物質、新しい価値を生み出しています。

画像: 展示風景:青野文昭(左)《なおす・復元―沖縄の村はずれで廃棄された車の復元―『GUN』2018》2018年 (右)《なおす・代用・合体・連置―ベンツの復元から―東京/宮城(奥松島・里浜貝塚の傍らに埋まる車より)2018》2018年 photo©msaito

展示風景:青野文昭(左)《なおす・復元―沖縄の村はずれで廃棄された車の復元―『GUN』2018》2018年
(右)《なおす・代用・合体・連置―ベンツの復元から―東京/宮城(奥松島・里浜貝塚の傍らに埋まる車より)2018》2018年
photo©msaito

さまざまなジャンルのアーティストが日本の「いま」を映し出している「六本木クロッシング2019展:つないでみる」、必見です。

概要

会期:開催中~ 5.26(日)
   会期中無休
開館時間:月・水~日曜日10:00~22:00(最終入館 21:30)
     火曜日    10:00~17:00(最終入館 16:30)
     ※ただし4.30(火)は22:00まで(最終入館 21:30)
     ※「六本木アートナイト2019」開催に伴い、5.25(土)は翌朝6:00まで(最終入館 5:30)
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
主催:森美術館
協賛:株式会社大林組
   公益財団法人現代芸術振興財団
協力:シャンパーニュ ポメリー
制作協力:株式会社 七彩
企画:椿 玲子(森美術館キュレーター)
   德山拓一(森美術館アソシエイト・キュレーター)
   熊倉晴子(森美術館アシスタント・キュレーター)
公式サイト:https://www.mori.art.museum/jp/

料金

一般  1,800円
学生(高校・大学生)1,200円
子供(4歳~中学生)600円
シニア(65歳以上)1,500円

つないでみる割

対象期間:「六本木クロッシング2019展:つないでみる」会期中(5月26日(日)まで)
割引対象:対象になっている展覧会のチケット類(実券、招待券、割引券)をご提示の方
割引内容:一般100円引き(1,800 円→1,700円)

割引対象の展覧会

「クリスチャン・ボルタンスキー ーLifetime」
会場:国立国際美術館(大阪)
会期:2019年2月9日(土)~5月6日(月・祝)

cinefil 読者チケットプレゼント

下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、「六本木クロッシング2019展:つないでみる」プレゼント係宛てにメールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効のこの招待券は、非売品です。
転売業者などに入手されるのを防止するため、ご入場時他に当選者名簿との照会で、公的身分証明書でのご本人確認をお願いすることがあります。

☆応募先メールアドレス  info@miramiru.tokyo
*応募締め切りは2019年4月21日 24:00 日曜日

記載内容
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、
  当選無効となります。
4、ご連絡先メールアドレス、電話番号
5、記事を読んでみたい監督、俳優名、アーティスト名
6、読んでみたい執筆者
7、連載で、面白いと思われるもの、通読されているものの、筆者名か連載タイトルを、
  5つ以上ご記入下さい(複数回答可)
8、連載で、面白くないと思われるものの、筆者名か連載タイトルを、3つ以上ご記入下さい
 (複数回答可)
9、よくご利用になるWEBマガジン、WEBサイト、アプリを教えて下さい。
10、シネフィルへのご意見、ご感想、などのご要望も、お寄せ下さい。

抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。

This article is a sponsored article by
''.