西原孝至監督が、2015 年から 4 年間撮り貯めてきたヌードモデルの兎丸愛美(うさまる・まなみ)と シンガーソングライターの BOMI(ボーミ)の生活を追ったドキュメンタリーに、新たに撮影した劇映 画の部分を加えて 1 本の映画にまとめた、“多様性”を肯定するモノクロ映画『シスターフッド』の 公開が始まりました。
映画『シスターフッド』予告
W 主演の兎丸とBOMIに加え、兎丸も出演する劇映画部分に出演する秋月三佳(『母さんがどんなに僕を嫌いでも』、『青の帰り道』)、「新潟美少女図鑑」で注目を集めたアソビシステム所属の栗林藍希(あいの)、岩瀬亮(『イエローキッド』『ひと夏のファンタジア』)と西原孝至監督が登壇し、ドキュメンタリーと劇映画が交錯する本作の撮影秘話を語りました!
日時:3月1日(金) 第一回19:42分頃〜 第2回20:30分頃〜
登壇者:兎丸愛美 BOMI 秋月三佳 栗林藍希 岩瀬亮 西原孝至監督
場所:アップリンク渋谷
初日を迎えての想いを聞かれ、ドキュメンタリー部分と劇映画部分の両方にご出演の兎丸愛美さんは、「実は隅っこの方で皆さんと一緒に見ていたんですけれど、改めてこの作品に出演できたことを嬉しく思います。皆さんと見ることができてよかったです。」と感慨深げに挨拶して、舞台挨拶がスタート。
<企画の成り立ちについて>
4年の歳月をかけて兎丸さんとBOMIさんの生活に密着取材し、劇映画部分も撮影して1本の映画として完成させた、監督・脚本・編集を務めた西原孝至監督は、「2015年から小さく始めた映画が、今日2019年3月1 日に皆さんに見ていただけて、本当に胸がいっぱいです。2015年くらいから、東京に住んでいる若い女性たちの生き方についての映画を作ることで、今の社会はどういう社会なんだろうということを考えたいと思いました。若い人にとって生きづらいというか、社会からこうあるべきだと迫られるような風潮があるんじゃないかと感じていました。」と企画の成り立ちを説明。
西原孝至 Takashi NISHIHARA
1983年、富山県生まれ。早稲田大学川口芸術学校卒業。同大学院国際情報通信研究科中退。TVドキュメンタリーの演出を経て、14年に発表した映画『Starting Over』は東京国際映画祭をはじめ、国内外10箇所以上の映画祭に正式招待され高い評価を得る。近年はドキュメンタリー作品を続けて制作。16年に学生団体「SEALDs」の活動を追った『わたしの自由について』が全国15箇所での劇場公開。カナダ・HotDocs国際ドキュメンタリー映画祭、毎日映画コンクール ドキュメンタリー部門にノミネート。17年に、目と耳の両方に障害のある「盲ろう者」の日常を追った『もうろうをいきる』を劇場公開。現在、「情熱大陸」「NONFIX」など、ドキュメンタリー番組のディレクターとしても活動中。
<ドキュメンタリー部分、ドキュメンタリーの手法について>
兎丸さんは、「言葉では伝えられないもどかしさがちゃんと捉えられている気がしました。劇映画部分は、 フィクションでセリフもあってという形だったんですけれど、私は兎丸愛美役ですし、演じているという感覚はなかったです。ドキュメンタリーを撮られている時とあまり変わらない感覚がすごいなと思いました。ドキュメンタリーを撮影した時は、監督が小さいカメラを持って1人でやってきたんですけれど、劇映画の撮影も、その時とあまり変わらなくて、終始穏やかでした。」と述懐。
ドキュメンタリー部分にのみ出演されているBOMIさんは、カップラーメンを食べているシーンが印象的だ が、「カップラーメンを4年前に食べたことを覚えている人はいないですよね?カメラは特に意識せず、 割と自然でした。」と話し、テレビのドキュメンタリーのディレクターなどもしている西原監督は、被写体の方の本音を引き出すための工夫を聞かれ、「カメラを回す前の時間を大事にしています。娘さんのことを撮ったお父さんの写真は、プロじゃなくても娘さんはいい表情をするなと思っていて、カメラを回し始める前に、仲良くなるとも違う関係性をどう築くかを考えています。」と話しました。
女優・モデル役の秋月さんとその後輩役の栗林さんの写真撮影の仕事のシーンをアドリブにした理由について監督は、「ドキュメンタリーとフィクションが混在している映画とは言ったんですけれど、僕自身はそこの境目を感じていなくて、境目に映画の面白さがあると思っているので、普段やっているドキュメンタリーの手法で、二人に自由に演じてもらうことで、二人そのものを撮りたいと思いました。」と説明。
西原監督は、男性である岩田役を登場させた理由について、「最初フェミニズムをテーマにしていたので、 僕は女性の側に立ちたいと思っているんだけれども、男性の僕が扱うことに対して不満がくるのは覚悟していて、そういうところを踏まえて、自己批判ではないですけれど、自分の分身のようなものを登場させることによって、批判も映画の中に組み込もうとしました。」と話しました。
岩瀬さんは、劇映画部分でドキュメンタリー監督・岩田役ですが、西原監督がカメラを回して兎丸さんたちにドキュメンタリーのインタビューをしているシーンで、監督役として実際に話を聞いていたそう。「あそこは女性達が何をしゃべってくれるのか僕もわからないまま座って聞いていました。意外と赤裸々に深い部分や普段隠してしまいそうなことも晒して話してくださっているなと感じて、ちょっと感動しました。 相手が女性だったからというよりも、話してくれた方々が皆(心を)開いてしゃべってくれていたからではないかと思っています。」と話しました。
<役柄、共演について>
秋月さん演じる女優・ユカとは、岩瀬さん演じるドキュメンタリー監督・池田はカップルという設定。西原監督は、池田を、『女性の側に立ちたいと言っているけれど、目の前にいる恋人のことが全く見えていない軽薄な人にしたい』とのことだったのですが、その池田の彼女役を演じていて、どうだったか聞かれ、 キュートに怒ったような顔をしてみせた秋月さんが、「役柄だけですけれども、ないがしろにされているなという思いを抱えながら、(後輩役の)栗林さんに励まされていました。池田は『これはこれだから』 というような感じでしたよね?」と言うと、池田役の岩瀬さんは、「役でね!」と強調!岩瀬さんは、「本人はフェミニズムを撮っている人ですから色んなことを考えているんだけれど、無意識のうちに差別的な ことであったりとか、人に対して思いが薄くなっている瞬間が出てしまっている、みたいなことがあると思います。」と話しました。
秋月さんは栗林さんが演じる後輩とのシーンで、本作のタイトルでもある『シスターフッド』(女性同士の連帯)を体現しています。後輩役を演じた栗林さんが、「特に役について考えたりとかはしなくて、撮影をしている時も、何も考えないで、目の前にいる秋月さんと普通に会話することだけ考えようと思っていて。でも、そう考えていても、できる人とできない人がいるので、そう考えると、秋月さんでよかった」 と話すと、秋月さんは、「今のすごくいい言葉でしたよね!絶対忘れません!」と興奮気味に喜びました。
<キャスティング秘話>
キャスティング秘話を聞かれた栗林さんは、「普通にプライベートで街を歩いていたら、西原監督に声をかけられました。」と答え、MCが「ナンパってことなんですか?」と突っ込むと、西原監督が、「梓という役をスマホで探していたんですけれど、なかなか決まらなかったんです。電車に乗っていて、『決まらないなぁ』とパッと目を開けたら、栗林さんが前にいて、15秒くらい考えたんですよ。イメージと近かったので、電車を降りた後、渋谷駅の外で声をかけさせていただいたら、なんと事務所に所属されていると聞いて、これは運命だなと思って、普通に事務所に連絡をして、今日この日を迎えられました。」と説明。 15秒くらい前の人に見つめられていたことに気づいたか聞かれた栗林さんは、「全く気付いていなかったです。(突然声をかけられて、)最初は美容師かなと思って」と言い、会場は大爆笑!「ドキュメンタリ ーを撮っているとのことで、興味が湧いて、話を聞きました」とのことで、西原監督は、「初めてですからね!勇気を振り絞って!」と念押ししました。
<メッセージ>
最後に一言聞かれ、兎丸さんは「この映画は不思議な映画なので、よくわからないまま終わってしまう方もいらっしゃる方もいるかと思います。私は、それはそれで幸せなことだと思っています。生きづらさを抱えている方にはこの作品がすごく刺さるんじゃないかなと思っていて、もし今日何も思わなくても、いつか自分の人生、幸せに不安を抱いた時にこの作品を思い出してくださったらすごく嬉しいです」、BOMIさんは「この映画を見てみなさんがどういう感想を持ったか知りたいので、何らかの手段で教えてください」、秋月さんは「ドキュメンタリー部分と劇映画部分がモノクロでうまくミックスされていて私はすごく好きなんですけれど、一生懸命生きている姿が一瞬一瞬積み重なっているところが印象的なので、それを感じていただけたら幸せです」、栗林さんは「私はまだ17年間しか生きていないくても、生きていく中で悩みだったり、落ち込んだりすることもあるんですけれど、この映画を見てすごく元気をもらいました。 若い人にも今だから見て欲しいと思うので、拡散してたくさんの人に伝えてあげてください」、岩瀬さん は「ツイッター、インスタグラムなどなどございます。みなさんの一言一言が、実はこの映画の力になっていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。」、西原監督は「僕は中学生の時に生きるのが辛い時期がありまして、そういう時に映画を見ているときは、自分が生きているのとは違う世界があると思えて、そのことがすごく僕にとっての救いでした。この映画を見てくださって、一人でもそういう救われる思いをしてくださる方がいたら嬉しいです。私の幸せは私が決めるし、あなたの幸せはあなたのものだと思います。」と話し、舞台挨拶は終了しました。
■STORY
東京で暮らす私たち。
ドキュメンタリー映画監督の池田(岩瀬亮)は、フェミニズムに関するドキュメンタリーの公開に向け、取材を受ける日々を送っている。池田はある日、パートナーのユカ(秋月三佳)に、体調の悪い母親の介護をするため、彼女が暮らすカナダに移住すると告げられる。
ヌードモデルの兎丸(兎丸愛美)は、淳太(戸塚純貴)との関係について悩んでいる友人の大学生・ 美帆(遠藤新菜)に誘われて、池田の資料映像用のインタビュー取材に応じ、自らの家庭環境やヌードモデルになった経緯を率直に答えていく。
独立レーベルで活動を続けている歌手の BOMI(BOMI)がインタビューで語る、“幸せとは”に触発 される池田。
それぞれの人間関係が交錯しながら、人生の大切な決断を下していく。
【出演】
兎丸愛美 BOMI 遠藤新菜 秋月三佳 戸塚純貴 栗林藍希 SUMIRE 岩瀬亮
【スタッフ】
監督・脚本・編集:西原孝至
撮影:飯岡幸子、山本大輔
音響:黄永昌
助監督:鈴木藍
スチール:nao takeda
音楽:Rowken
製作・配給:sky-key factory
(c) 2019 sky-key factory 2019 / 日本 / モノクロ / 87 分 / 16:9 / 5.1ch
Twitter:@sisterhood_film
facebook: @sisterhood.film.2019
instagram:@sisterhood.film