2013年にカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを獲得した映画『アデル、ブルーは熱い色』、2015 年の話題映画『キャロル』、そして昨年世界中でスマッシュ・ヒットを記録した映画『君の名前で僕 を呼んで』など、昨今ではLGBTを題材にした作品が日本国内でも若い世代を中心に注目されて います。
今から遡ること40年、当時日本はおろか世界でも恋愛の形が閉鎖的であったこの時代に、20代になったばかりの青年・矢崎仁司はテーマや題材を特別に意識することなく、自由な発想で映画 『風たちの午後』を仲間たちと撮りました。
「女の子が女の子を好きになる」というセンセーショナルな作品が日本から生まれたことは世界中に衝撃を与え、ヨコハマ映画祭自主製作映画賞に輝き、エジンバラ国際映画祭、モントリオール世界映画祭などいくつもの海外の映画祭を駆け巡ったのです。
しかし、そのデビュー作も音楽の著作権問題で上映ができず、長い間封印されてきました。今般、 国内外からの熱い上映オファーとファンの皆様のご支援を受け、デジタルリマスター版『風たちの 午後』として奇跡の修復が実現。
伝説の映画が40年の時を経てスクリーンで蘇ります。
山戸結希監督が寄せたコメント
映像における文学性の発露を眺めているうちに、 痛みの感覚が身体の中にいつの間にか広がってゆき、 この映画と分かち難い季節をかつて生きていたかのような、 純真な錯覚に目覚めてゆく。
24歳の矢崎仁司監督に、いちばん望まれるべき未来があることだけを願いながら。
ー映画監督 山戸結希(『溺れるナイフ』『21世紀の女の子』)
矢崎仁司監督のコメント
愛が動機ならやっちゃいけないことは何一つない
正確に覚えていないけど「映画は人と同じで歳月とともに死んでいく」という鈴木清順監督の言葉が好きだ。だからリマスターを作るより、新作を生み続けていたいと思っていた。凡そ40年前、日本大学の学生だった頃、この『風たちの午後』を自主制作した。聞こえてくる音を幽かに残し、「観る」ことの映画を作りたかった。上映中の音量を下げるために、すべての上映に付き添った。だから日本中の各地を旅して、この映画の観客に出会った。初めての海外は、エジンバラ国際映画祭だった。また、ニューヨークでは、矢崎が女性なら、シャンタル・アケルマンやマルグリット・デュラスに匹敵すると言われ、表現者の性別を超えた記念すべき作品と評価されました。 この映画を作ったことで、デレック・ジャーマン監督、侯孝賢監督、楊德昌監督に出会えた、思い出深い作品です。今も、ロンドン、香港などのゲイ・フィルム・フェスティバルから上映を熱望されているのに、フィルムの劣化と音楽の問題などがあり、皆さんに観て頂くチャンスがなくなってしまったのが残念でした。 この度、映画24区やABCライツさん、皆さんの力を借りて、もう一度、世界のスクリーンに映すことが出来ることは心から嬉しいです。また、世界中のこの映画の観客に会え、新たなエネルギーを、 新作に注ぎこみたい。ストーカーやLGBTなどの言葉すらなかった頃、人が人を愛することを、愛が動機ならやっちゃいけないことは、何一つないと信じて作った作品を、今の人たちに観てもらいたいと強く思います。
ー矢崎仁司
監督:矢崎仁司
山梨県出身。日本大学芸術学部映画学科在学中に、『風たちの午後』(80)で監督デビュー。
2作目の『三月のライオン』(92) はベルリン国際映画祭ほか世界各国の映画祭で上映され、ベルギー王室主催ルイス・ブニュエルの「黄金時代」賞を受賞するなど、国際的に高い評価を得た。95年、文化庁芸術家海外研修員として渡英し、ロンドンを舞台にした『花を摘む少女 虫を殺す少女』を監督。そのほか監督作品に、『ストロベリーショートケイクス』(06)、『スイートリトルライズ』(10)、『不倫純愛』(11)、『1+1=1 1』(12)、『太陽の坐る場所』(14)、『×××
KISS KISS KISS』(15)、『無伴奏』(16)『スティルライフオブメモリーズ』(18) などがある。
40年前の矢崎仁司監督 禁断のデビュー作『風たちの午後』
[STORY]
美津の誕生日。 夏子はお揃いの乙女座のネックレスとバラの花を買って来る。
しかしアパートの窓には白いハンカチ。それは美津の恋人・英男が来ている合図だった。
ひそかに美津を愛してしまった夏子。
彼女を独り占めしようと思うがゆえに英男に近づく夏子は・・・
真夏の午後、世界を震撼させた衝撃のラストが―
キャスト
綾せつこ・伊藤奈穂美
阿竹真理・杉田陽志
監督:矢崎仁司
脚本:長崎俊一・矢崎仁司
企画:三谷一夫
プロデューサー:平沢克祥 長岐真裕
撮影:石井勲・小松原淳 録音:鈴木昭彦・吉方淳二
編集:中島吾郎・石沢清美・目見田健
音楽:信田和雄・阿部雅志・内田龍男・矢野博司・
BOOZY制作:追分史朗・長崎俊一
協力:ヨコシネD.I.A.・草野康太・原風音・本間淳志・戸丸杏
宣伝美術:林啓太・矢島拓巳
WEB:徳永一貴
製作:ABCライツビジネス・フィルムバンディット・映画24区
宣伝・配給:映画24区
2019年/日本/105min/パートカラー/モノラル/DCP
3月2日より新宿K’s cinema 3月9日よりアップリンク吉祥寺 以降全国巡回
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