柳楽優弥主演の監督デビュー作『夜明け』が全国公開中の広瀬奈々子監督。
その最新作が2019年秋に劇場公開されることが早くも決定となりました。
現在75歳の装幀者・菊地信義の仕事を追いかけたドキュメンタリー映画『つつんで、ひらいて』。菊地は独立から40年、中上健次や古井由吉、俵万智、金原ひとみなど1万5000冊以上の本の装幀を手がけ、日本のブックデザイン界をリードし続けてきた存在。
紙と文字を触りながら、あくまで手作業で一冊ずつ本をデザインしている。
その指先から、印刷、製本に至る工程を見つめ、ものづくりの原点を探っていく。
インターネットが日常のものとなった今だからこそ、物への愛着、紙の手ざわりにフォーカスした。出版、デザインに関わる人だけでなく、本好きには必見のドキュメンタリーである。
本作は2015年から約3年間かけて撮影。
広瀬奈々子自身が監督、編集、撮影を務める。
2019年秋にシアター・イメージフォーラムにて公開。
コメント
◆菊地信義
紙の本。その装幀という仕事を撮りたいという。言葉を、目から手へ、そして心にとどける仕事。思い掛けない若い監督の、本への思いに絆された。撮られる事で、新たに意識化できることもあるはず。どうあれ、紙の本の魅力を伝えるためにと引き受けた。
1943年東京生まれ。1965年多摩美術大学デザイン科中退。広告代理店などを経て、1977年装幀者として独立。以来、中上健次や古井由吉、俵万智、金原ひとみなど1万5000冊以上もの書籍の装幀を担当する。著書に『菊地信義の装幀』『装幀の余白から』他。1984年、第22回藤村記念歴程賞受賞。1988年、第19回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。
◆監督・編集・撮影:広瀬奈々子
初めて菊地さんとお会いしたのは、銀座の樹の花という喫茶店でした。「僕は映像は好きじゃない」と言われて意気消沈して帰ってきたのを覚えています。言葉のプロで、ある意味演出家でもある相手に毎回何をどう撮りたいのか説明し、説得するのには大変苦労しました。この映画に映るもの全てが菊地さんとの共作です。今もなお菊地さんへの尊敬の念は深まるばかりですが、これは菊地信義を賞賛するための映画ではありません。本とは何か、自問自答するための映画です。言葉と五感に対する欲求は、作り手にとってだけでなく、誰にとっても重大な問題なのだと思います。
1987年神奈川県生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒業後、2011年より制作集団分福に所属。是枝裕和監督、西川美和監督のもとで監督助手を務め、『そして父になる』『ゴーイング・マイ・ホーム』『海街diary』『海よりもまだ深く』『永い言い訳』に参加。初監督作となる『夜明け』は新宿ピカデリーほか全国で公開中。
企画制作:分福 配給:マジックアワー
(C)2019「つつんで、ひらいて」製作委員会