世界の最新の映画情報とともに日本のインディペンデントな映画シーンのコアな情報を発信し続ける映画webマガジン「シネフィル」が青山シアターとの共同企画により、“cinefilオンライン上映”に続き、“cinefilセレクション”を新たにスタート致しました!
ここでは、現在第一線で活躍中の監督たちの映画制作の原点などを探っていく監督の特集上映やテーマに沿った企画上映など、cinefilならではの“今、観るべき”作品をセレクションして期間限定で配信していきます。
まずそのスタートを飾るのは、公開中の『青の帰り道』に続き1月25日放送開始 テレビドラマ「日本ボロ宿紀行」同じく26日から劇場公開の『デイアンドナイト』、そして今から話題を集めている映画『新聞記者』の公開が控える藤井道人監督の特集上映となります。
短編、中篇作品の『東京』『名もなき一篇』『A LITTLE WORLD』は監督自ら厳選したインディペンデント時代の作品の初配信作。
また、長編はインディペンデント映画の制作の裏側を描いた『7s』と、監督自身が原点に戻り、自主で製作した、人生の流転を衝撃的に描いた『光と血』と併せてご覧いただくことで、藤井監督の描く世界観を再確認してください。
期間限定「藤井 道人」特集 2019.1.25(FRI)~2019.2.28(thu)
以下、それぞれの作品に、監督のコメントを頂きご紹介いたします。
『A LITTLE WORLD』(2012年・20分)初の一般配信
写真家の道をあきらめ、母国に帰ることになった韓国人のジュンス。
渋谷で専門学校の仲間とお別れ会をしているジュンスだったが、チンピラに絡まれ意識を失ってしまう。ジュンスが目を覚ますと、彼の前にひとりの女性が立っていた。
これは、ジュンスとその女性アヤの東京の街をめぐる、一晩の記憶の物語。
藤井監督 作品へのコメント
2011年。猛暑だった。
限られた予算の中で20時間で20分の作品を撮りきった。
この当時は、どんな作品のオファーでも嬉しくて、
体の限界までカメラを回し続けていた。
沢山の海外の賞をいただけたことに感謝している。
『東京』(2013年・44分)初配信
東京で夢を追い、
東京で自分を見失い、
東京で居場所を探し、
東京で何かを諦めて―― それでも生きていく人々の物語
地方から、様々な理由で上京してきた若者たち。
彼らは何を思い東京に残り、何を思い東京を去っていくのか。
この映画は、東京に生きる若者にスポットをあてた群像劇である。
plentyの楽曲「東京」にインスピレーションを受け、
藤井道人が自身の原案をもとに短編映画として映像化。
藤井監督 作品へのコメント
20代の時、無心にインディーズ映画を作り続けてきて、
その後期的作品である。
青さのあまり、お互い夢を語り、
そして辞めていった仲間たちのことを思って作った映画だ。
主題歌のPlenty「東京」
にインスパイアされた作品でもある。
『名もなき一篇』(2014年・25分)初配信
あるものは人を愛し
あるものは人を恨み
あるものは人に絶望し
あるものは人に感謝して
あるものは人に別れを告げる――
これは人生の一瞬を切り取った物語
2014年3月10日、17時3分から17時28分の25分間に起きた出来事をカメラにおさめたショートフィルム。ある男は恋人にプロポーズをし、ある男は人を殺す命を受ける。
偶然が偶然を呼び、事態は思わぬ方向に進んでいく。
25分ワンカットの意欲作。
藤井監督 作品へのコメント
ずっと、1カットで映画を撮りたいと思っていて
(バードマン出現でその気持ちは消滅したが)その習作的な一本。
新宿のある時間を25分1カットで撮りきった。
Moviの出現で僕たちの映像表現は圧倒的に飛躍し、
それを実感した一本だった。
『7s/セブンス』(2015年/92分)
これは完成しなかった一本の映画と、関わった全ての人の物語
売れない映画監督のサワダは、自主映画でインディーズ映画祭のグランプリを受賞し、その賞金をもとにさらに大きな映画を撮ろうと決意。
居酒屋で意気投合した小劇団のメンバーとともに、7人の天才詐欺師集団が主人公の映画「7s」の制作を開始する。
ところが、俳優の遅刻やスタッフ同士のケンカ、制作部の失踪、突然のキャスト降板など、次々と問題に直面。
ついには制作資金が底をつき、「7s」は未完のまま撮影が中断してしまう。それから3年、バラバラになったスタッフ、キャストは誰も「7s」の話をすることはなくなっていたが……。
藤井監督 作品へのコメント
ほぼ実話の映画。アベラ演じる沢田という役が、
僕や僕をはじめとするBABEL LABELの当時の姿だった。
なぜ、人は映画に魅了されるんだろう。僕も含めて。
この映画を撮ってみて、少しわかった気がした。
『光と血』(2017年/113分)
なぜ私たちは、失わなければならなかったのか―
日本、現代――いじめらっれ子を守る心優しき女子高生・光。
3年間の交際を経て、恋人と婚約した青年・陽。
被災地にボランティアへ通う青年・健太とその姉・マナ。幸せな日々はいつまでも続くと思われたがある日、人生は一変する。無差別連続殺人事件、何者かによるレイプ、交通事故。予期せぬ悲劇が彼らを襲う。
被害者になった者、加害者になった者。
大切なものを失った彼らの運命は絡み合い、交差し始める……
藤井監督 作品へのコメント
自分で最後と決めた自主映画。
デビューした作品で受けた喪失感や、
悔しさを思い切り作品に閉じ込めた。
フィリピン編では、監督・撮影・録音を一人でやることになり、
スタッフの大切さをヒシヒシと感じた。
「デイアンドナイト」にも通ずるところがある一本です。
cinefilセレクション 特集上映に寄せた藤井監督の言葉
過去作品を見返していて、本当に沢山の俳優部、
スタッフと出会ったなぁと当たり前だが感嘆した。
しかし、今でもつながりがあるのはその一部の人間だけだ。
かなり、長い時間が過ぎてしまった。
完璧な人間になんてなれない。
みんなを引っ張り上げることはできなかった。
なんだが、
負の感情ばかり出てくる。
でも、光も感じた。
僕の初期作品から、
作っているスタッフはほとんど変わっていないということ。
撮影の今村、音楽の堤、脚本の小寺、録音の吉方、
そしてプロデューサーの山田とBABEL。
まだ、僕に愛想を尽かさないでいてくれる
スタッフやキャストに心から感謝しています。
まだまだ僕は映画のことが分かっていない。
勉強すればするほどわからなくなる。
だからこそ、歩みを止めない努力だけはしようと思っている。
心体尽きるまで「人間」を描き続けることができれば本望です。
稚拙な部分も多い作品かもしれませんが、
あたたかく見てやってください。
宜しくお願いします。
ー藤井道人
藤井 道人
1986年生まれ。東京都出身。映像作家、映画監督、脚本家。BABEL LABELを映像作家の志真健太郎と共に設立。日本大学芸術学部映画学科脚本コース卒業。脚本家の青木研次に師事。
伊坂幸太郎原作『オー!ファーザー』でデビュー。以降、『7s/セブンス』などの作品を発表する一方で湊かなえ原作ドラマ『望郷』、ポケットモンスター、アメリカンエキスプレスなど広告作品も手がける。2017年Netflixオリジナル作品『野武士のグルメ』や『100万円の女たち』などを発表。2018年、『青の帰り道』公開中。2019年『デイアンドナイト』『新聞記者』の公開が控える。
2019年
1月25日放送開始 テレビドラマ「日本ボロ宿紀行」
1月26日公開 映画「デイアンドナイト」
2月16日公開 映画「LAPSE」(プロデューサーとして)
2019年公開 映画「新聞記者」
藤井道人特集は以下青山シアターよりご鑑賞ください