世界を熱狂させた、アメリカ・ポップシーン史上最高の歌姫ホイットニー・ヒューストン。その知られざる素顔に迫るドキュメンタリー『ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー~』2019年1月4日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー致します。
どこまでも伸びる圧倒的な歌唱力を備え、ポップス史上に燦然と輝く奇跡のミューズ、ホイットニー・ヒューストン。
80年代から90年代の全盛期、メディアを通して見る彼女は常に溌剌としていて、眩いばかりの笑顔を弾けさせていた。そのパワフルな存在感は、性別、国境、世代、そして人種までをも超えて、同時代を生きた人々に大きな活力を与えた。しかし、『ボディーガード』の成功とボビー・ブラウンとの結婚を境に、薬物問題、複雑な家族問題ばかりが取り沙汰される様になり、48歳という若さで不慮の死を遂げてしまう。
いったい彼女に何があったのか?メディアの前では常に笑顔で陽気なスター、でも心の奥底は傷ついた少女。抱えていた複雑な感情をさらけ出し、波乱万丈な自らの人生と重ね合わせ歌にぶつけ続けたー。あの時代、あの瞬間、あの美声は確かにそこに存在していた。
この度、本作のメガホンを取ったアカデミー受賞監督のケヴィン・マクドナルドのインタビューが到着致しました。
——本作はもともと、プロデューサーから依頼された企画だそうですが、引き受けようと思ったきっかけは何でしたか。どういった経緯で監督されることになったのでしょうか。
「正直に言うと、それ以前はとくにホイットニー•ヒューストンの大ファンだったわけではないんだ。もちろん彼女の歌はよく知っていたけれど、僕にとっては濃いブラック•ミュージックというわけでも、特別クールというわけでもなかった。だから最初にプロデューサーに打診されたときは断った。でもその後にサンダンス映画祭で、ホイットニーのかつてのエージェントだったニコール•デヴィッドに紹介されてね。彼女はわたしにぜひドキュメンタリーを作って欲しいと言った。彼女は25年間ホイットニーと仕事をしてきて、ホイットニーほど惹かれたクライアントはいないが、ついに彼女を理解することができなかったと語った。エージェントがこれほど情熱的にクライアントについて語るのは聞いたことがなかった。それで引き受けることにしたんだ」
——彼女が子供の頃から虐待を受けていたという証言がありますが、あなた自身にとっても予想外のことでしたか。
「いや、彼女のプライベートなヴィデオを観ながら、なんとなく変だと言うか、性的なトラウマを持っていると感じていた。というのも、彼女は自分の肌に居心地の悪さを感じているようだったし、フィジカルにリラックスしていない印象を受けたから。あれほど美しいのに、セクシュアルというのとも違う。きっと何か子供時代に大きなトラウマを追ったのではないかと想像していたんだ」
——この作品では、証言をする人々が驚くような事実を語ります。彼らのそんな発言を、どうやって引き出すことができたのでしょうか。
「そうだな、僕はこのドキュメンタリーにすごく時間をかけたし、個々のインタビューに関しても始めから長い時間をかける覚悟だった。だからまず彼らとの関係性を発展させ、そして彼らがじっくりと話しができるようなスペースを与えようと思った。こちらがどんどん質問していくのではなくて。そして彼ら自身も、語ることである種セラピーのように解放されたのだと思う。というのも、家族のメンバーはみんなホイットニーがあんなことになってしまったことに対して、罪悪感を抱いていたから。実際に彼らから、話すことで長年抱えていた膿みを放出させることができて楽になったと言われたよ」
——その一方で、ボビー•ブラウンは取材に非協力的ですが、あなたはそれをそのまま映画のなかに残していますね。
「それが彼のアチチュードだから、そのまま残すのは大事だと思った。その方が誠実なやり方だろうと。彼は子供っぽい人で、自身と自分のエゴを守ることに一生懸命なんだ。ホイットニーとの関係を振り返って、罪悪感を感じないわけがないだろう。彼のことを気の毒に思うよ。悲しい、哀れな人だと」
——ホイットニーと彼の関係をどう思いますか。何が彼女を引き止めていたのでしょうか。
「これはあくまで僕の見方だが、彼女はただ幸せな家庭を求めていたんだと思う。幼い頃、一瞬でも幸せな子供時代があって、でもそれがさまざまなことで壊されたことにより、彼女はつねにホームを求め、そしてただ愛そうとしていた。ロビン•クロフォードに対しても、ボビー•ブラウンに対しても。ただ、若い頃に性的な虐待を受けたことが、彼女に複雑な影を落としていたと思う。そして彼女とボビー•ブラウンの関係は、ドラッグを媒介に不健康なものになっていき、互いに悪い形で依存し合っていた」
——本作はセンセーショナリズムとは異なる、誠実なドキュメンタリーですが、あまりにスキャンダラスな事実が多いなかで、センセーショナルにならないようにするのは大変でしたか。
「それはとても不安だったよ。でも結局、それがこの映画を作りたいと思う理由のひとつでもあった。つまり、人々が共感しにくいような物事について真面目なドキュメンタリーを作ること。いかにタブロイド的な視点から離れて彼女のストーリーを語ることができるかという」
——本作ではまた、ホイットニーを取り巻く社会的な背景にも触れられています。白人にも好かれたことが彼女の絶大な成功を導いたわけですが、こうした社会的コンテクストを語ることは、あなたにとって重要でしたか。
「それは彼女のストーリーを理解する上でも重要だと思ったからだ。実際リサーチをして、関係者のインタビューを重ねるにつれ、社会的なコンテクストが重要だということがわかってきた。彼女のストーリーは80年代当時の世の中の、人種問題、男女平等、性の平等、虐待といったテーマを反映している。彼女は白人男性が魅了されたほぼ最初の黒人スターであり、それは彼女に威嚇的なところがなかったからだと思う。美人だけど、隣の女の子タイプ。性的にも人種的にも、男たちは恐れを感じることがなかった。だからあれだけ多くの人に支持された。とはいえ、一本の映画にそれほど多くのことは詰め込めない。観客を退屈させたくはなかったからね。だからアメリカの人種問題については、繊細なアプローチで示すにとどめた。80年代のレーガン政権下のホワイト•アメリカの雰囲気が感じ取れると思う」
——このドキュメンタリーを作って、彼女を理解できたと思いますか。
「誰かを完璧に理解することなどできるのか、それは疑問だ。でも少なくとも、ある程度は理解できたと思う。願わくば、観客にもそう感じて欲しい」
『ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー~』予告
世間にあふれたゴシップにとらわれることなく、膨大な映像記録を丹念にリサーチを敢行。
初公開となるホームビデオや貴重なアーカイブ映像、未発表音源とともに、家族、友人、仕事仲間などの証言を紡ぎ合わせることで見えてきたホイットニー・ヒューストンの真の姿とは?
その知られざる素顔に鋭く、フェアに迫る傑作ドキュメンタリー。
監督:ケヴィン・マクドナルド
製作:サイモン・チン『シュガーマン 奇跡に愛された男』、ジョナサン・チン、リサ・アースパマー
編集:サム・ライス=エドワーズ 撮影:ネルソン・ヒューム
出演:ホイットニー・ヒューストン、シシー・ヒューストン、エレン・ホワイト、メアリー・ジョーンズ、パット・ヒューストン、ボビー・ブラウン、クライヴ・デイヴィス、ジョン・ヒューストン、ケヴィン・コスナー、ケニー“ベイビーフェイス”エドモンズ
配給:ポニーキャニオン/STAR CHANNEL MOVIES
提供:東北新社
2018年/イギリス/英語/120分/カラー/5.1ch/アメリカンビスタ/原題:WHITNEY
© 2018 WH Films Ltd