渋谷ユーロスペースにて、異例の4週間ロードショーで話題を呼んでいる『一人の息子』。
この物語は、突然父が倒れたことから、働く職種も環境もまるで違う2人の青年が、1通の書類によって繋がっていくー平成が終わろうとする今”父親とはなにか? 親子とはなにか? そして、愛とはなにか?”を問いかけていくヒューマンな、家族を巡る人間ドラマ。
谷健二監督にとってはデビュー作の「リュウセイ」以来の4年ぶりのオリジナル作品となる。
この度、谷健二監督からシネフィルに作品への想いを寄せたメッセージが到着しました。
「ただいま」と言える家庭が減ってきているのでは?
そんな時代だからこそ、家族の温もりの大切さを知って欲しかったんです。
自身の父親との関係は馬場良馬さんが演じる樹に近いですかね。別に仲が悪くはないけど、一緒に飲みにいったりはしない。
好きとか嫌いとかではなく、当たり前の関係というか..やっぱり難しいですね、親のことを話すのは。
あと、親の仕事のことをほとんど知りません。興味がないわけではないですが、家に帰ってきて特に仕事の話をすることもなかったので..
作品を作っていく上で改めて気にはなりました。
物語は樹と父親のいない歩(玉城裕規)を中心に進んでいきます。そこに歩の同僚の香織(水崎綾女)や樹の叔母(竹下景子)が絡んでいきます。
父親のとある問題に悩む2人に対し、周りの人間が気づきを与え、成長していきます。
企画のきっかけは、友達が保険の仕事をやっていたのですが、その話を聞くうちに保険はカタチではなく目に見えない絆であり、
それが自分が考えている家族のカタチとどこか交わりあってはじまりました。極論ですが、どちらもなくても生活はできるものであり、目には見えないこと、
その2つがどこか同じように感じたのかもしれません。
大きなテーマとなっている「家族」ですが、これまでもデビュー作となった『リュウセイ』を始め、家族を描く作品が多いです。恋愛や仕事ではなく、
人生の中で一番大切にしたいものと感じているからかもしれません。新しい企画を始めるときに自然と最初に頭の中に浮かんでくるのがいつも家族ものですね。
そういえば、映画の見るジャンルも小津監督からはじまり、黒沢清監督、青山真治監督とそれぞれの時代の家族を切り取った作品を好んで見ている気がします。
家族のカタチは、時代とともに少しづつ変容していきますが、父親と息子の関係は今作品で描いているような普遍的な関係でいてもらいたく、
その思いが伝わった作品に仕上がったかと思います。いろいろな事件が起きたりと世知辛いこのような時代だからこそ、たくさんの人に見てほしいです。
渋谷ユーロスペースで7月7日から4週間のレイトショーを行なっているので、家族のカタチを再確認しにきてもらえればうれしく思います。
それでは劇場でお待ちしております。
ー谷健二
映画『一人の息子』予告編
[STORY]
たった1つの、父の思いを探してー
映像製作会社で働く山内樹のもとに、ある日電話がかかってくる。それは、父が倒れたというもの。それほど仲がよかったわけではなかったが、樹にとって、父はかけがえのない存在だった。一方、引越し業者で働く倉田歩には父がいなかった
東京と群馬、働く職種も環境もまるで違う2人。出会うはずのない彼らが、1通の書類によって繋がっていく。父親とはなにか? 親子とはなにか? そして、愛とはなにか? 今、父をめぐる旅がはじまるー
馬場良馬 玉城裕規
水崎綾女
弓削智久 篠原篤 / 根本正勝 高崎翔太 関口アナム 三城千咲
中野マサアキ 森本のぶ 大塚ヒロタ 双松桃子 橘美緒 有馬健太 三浦健人 三坂知絵子 新津ちせ / 竹下景子
主題歌「Lights」ReN(Booost Music)
監督:谷健二(映画『U-31』『リュウセイ』、PV 欅坂46 渡辺梨加 『ベリカ2号機』)
(c)『一人の息子』製作委員会