ファティ・アキン監督最新作『女は二度決断する』が2018年4月14日より全国公開いたします。
本作は、実際の事件を元に生まれた社会派サスペンス。
ダイアン・クルーガーが熱演し、第70回カンヌ国際映画祭での主演女優賞受賞を皮切りに各国の映画賞、映画祭を席巻し、ゴールデングローブ賞外国語映画賞に輝いた傑作です。
監督は、『愛より強く』(04年)でベルリン国際映画祭金熊賞、『そして、私たちは愛に帰る』(07年)でカンヌ国際映画祭脚本賞、『ソウル・キッチン』(09年)でのヴェネチア国際映画祭審査員特別賞と、30代で世界三大映画祭での主要部門での受賞歴を誇るドイツの名匠ファティ・アキン。
この度、シネフィルでは来日したアキン監督に、単独インタビューを行いました。
ファティ・アキン監督cinefilインタビュー
今回の新作『女は二度決断する』で観客に伝えたいことは何でしょうか。
アキン エンターテインメントというと語弊があるかもしれませんが、映画として楽しんでもらえる作品になっていると思います。サスペンス映画であり、ショッキングな瞬間も用意されています。ですから、ずっとハラハラしながら楽しんでいただきたいと思っています。同時に、考えさせる作品でもあります。現在の世界が直面している状況について、様々な思いを巡らせることになるのではないでしょうか。ただ、私は説教臭い作品にはしたくありませんでした。ご覧になった方々それぞれがご自分に対して思いを馳せていただければいいと思います。
主演のダイアン・クルーガーは昨年の第70回カンヌ国際映画祭で主演女優賞を受賞しました。今回、彼女をキャスティングした理由と、現場での様子はどのようなものだったかお聞かせいただけますか
アキン カティヤのキャラクターについてははじめから金髪で碧眼、いわゆる昔ながらのドイツ的な容姿というコンセプトがありました。しかし、驚かれるかもしれませんが、ドイツで金髪碧眼という容姿の女優は少ないのです。
作品は、ダルデンヌ兄弟のようなリアリスティックさと、グラマラスな要素の両面を求めていました。そのような要望にしっかりと合致していたのがダイアンを起用した理由のひとつです。
実際に彼女と仕事をともにして、最高のコラボレーションを楽しむことができました。
俳優と監督のあいだには、ときにとても美しいコラボレーションが見られる場合があります。例えば、ハンフリー・ボガートとジョン・ヒューストン。ロバート・デ・ニーロとマーティン・スコセッシ。マレーネ・ディートリッヒとジョセフ・フォン・スタンバーグ。
今回のダイアンと私のコラボレーションが彼らのような素晴らしい関係に連なるもののはじまりであればうれしいです。実際、現在彼女とともに温めている企画もいくつかあります。
アキン監督はいままで多くの映画作品を観てきたと思いますが、映画に限らず、芸術分野のなかで最も影響を受けた作家や作品は何でしょうか。そしてまた、日本においては誰かいらっしゃいますか。
アキン 私は河瀨直美さんが好きなんです。私にとって彼女はとても大きなインスピレーションを感じる映画作家です。同じ映画作家ですが、私はストーリーテラー、彼女は詩人です。彼女の作品には私の作品に欠けている詩的な要素があります。だからこそ、彼女の作品からはインスピレーションを感じるのです。
ほかにも影響を受けた映画作家はたくさんいるので3人に絞らせてください。まず『路』(1982)を撮ったトルコの映画監督ユルマズ・ギュネイ。自国ドイツの代表としてライナー・ヴェルナー・ファスビンダー。そしてつねに作品のなかに個人的な背景を反映させながら物語をつくっているという点からマーティン・スコセッシ。もちろん黒澤明も入れたいです。私は大学で専門的に教えることができるくらい彼を敬愛しています(笑)。映画を学ぶ学生たちにはぜひ彼の作品を知ってもらいたい。彼は自分が生きている時代の先を行く巨匠だったと思います。それは今日でも同じです。いま彼の作品を観ても、まったく古い映画だとは思いません。むしろ未来の映画だという気さえします。『羅生門』(1950)であれ、ゴッホが出てくる『夢』(1990)であれ、どの作品でもいえると思います。
影響を受けた映画作家を挙げていけばきりがありません(笑)。クエンティン・タランティーノ、パオロ・ソレンティーノ、パク・チャヌクにダルデンヌ兄弟、ミヒャエル・ハネケ……。
みな素晴らしいインスピレーションを与えてくれる映画作家ですが、日本においてひとりだけ挙げるなら、やはり河瀨直美さんを挙げておきます。
(聞き手 角 章・野本幸孝)
この他、ファティ・アキン監督への映画深掘りインタビューは5月に発刊するcinefil bookに掲載
ダイアン・クルーガーのコメント入り『女は二度決断する』新予告
監督:ファティ・アキン
出演:ダイアン・クルーガー、デニス・モシット、ヨハネス・クリシュ、ヌーマン・アチャル、ウルリッヒ・トゥクール
2017/ドイツ/106 分
提供:ビターズ・エンド、WOWOW
配給:ビターズ・エンド
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