cinefilインタビュー
"INDEPENDENT FILMS CHANGE THE WORLD"
インディペンデント映画は世界を変えることができるのか?

画像: 右よりガチンコ・フィルム代表・飯塚冬酒氏、長棟航平監督、奥田裕介監督、小野篤史監督

右よりガチンコ・フィルム代表・飯塚冬酒氏、長棟航平監督、奥田裕介監督、小野篤史監督


大作映画と低予算映画の二極化がすすむ邦画界において、低予算のインディペンデント映画という枠組みで才能ある若手監督たちの作品が劇場で上映され、多くの観客の支持が集まっている。
今回は、そんなインディペンデント映画を手がけるフィルムメーカーのひとつ、ガチンコ・フィルムに注目。

絶賛上映中の『世界を変えなかった不確かな罪』(奥田裕介監督)に続き、『夢こそは、あなたの生きる未来』(小野篤史監督)、『マッド・アマノ ドキュメンタリー(タイトル未定)』(長棟航平監督)と若手監督の作品を次々に上梓するガチンコ・フィルムとは、一体何なのか?
代表・飯塚冬酒氏へインタビューをお願いしました。

■ガチンコ・フィルムとは?

ガチンコ・フィルムは、時代・市場に迎合することなくインディペンデント精神で作品を創る「独立主義」、作家性を重んじ作品を創る「作家主義」、劇場のスクリーンで上映する作品を創る「劇場主義」の3つの目標を掲げた映画プロジェクトです。
棒読み、棒読み(笑)、ちょっと小難しいですね(笑)。
長いものに巻かれず、映画をつくりたいね、って、簡単に言うと、そんな感じのプロジェクトです。
ようやく、本年(2017年)に初の劇場用長編作品『世界を変えなかった不確かな罪』(奥田裕介監督)を上梓した、まだまだ産声をあげたばかりです。

立ち上げは、2014年に松永大司監督のドキュメンタリー映画『GOSPEL』の製作・配給がきっかけです。その後2~3年、若手監督たちの短編・中編を製作してきました。
製作した作品は、ミュージックビデオも含め、全て一般劇場のスクリーンで上映を行っています。
で、短編・中編製作・上梓の期間中に、長編の準備をこっそりとすすめていて(笑)

画像: 『世界を変えなかった不確かな罪』奥田裕介監督 2017年|新宿K’s cinema 絶賛公開中/以降順次公開)

『世界を変えなかった不確かな罪』奥田裕介監督
2017年|新宿K’s cinema 絶賛公開中/以降順次公開)

■ インディペンデント映画

現在、上梓する作品を「インディペンデント映画」と呼称しているんですが、ここは定義づけがとっても難しいところでもありますね。
東映・東宝・松竹・大映などに対し、「独立プロ」という呼称が昔からあったと思います。このイメージが近いかなあ、と思います。
自分は「独立」という意味で、「インディペンデント」という言い方をしています。
現在の日本では、インディーズ映画や自主映画という呼称で多くの作品が毎年つくられていると思うんです。
大学生の自主サークルで製作した作品や個人で製作した作品の中には、とても素晴らしい作家性や大手資本の映画を超えるほどのエンタテイメント性をもっているものも沢山あります。で、映画祭などで評価され全国の劇場で上映される、なんてこともある。
大手資本が入らないからこそ、できる作品も沢山ある。
自分は、大手資本で創られた映画をメジャー映画、それ以外をインディペンデント映画、と便宜上、呼称しています。
まあ、呼び方は、自主でもインディーズでもいいんですけどね(笑)、自分自身の中で「独立精神」を体現するしっくりする呼び方としては「インディペンデント映画」かなあ、と思ってます。

画像: 小野篤史監督(『夢こそは、あなたの生きる未来』2018年公開予定)

小野篤史監督(『夢こそは、あなたの生きる未来』2018年公開予定)

■ 劇場主義

よく誤解されるんですが、映画館にこだわる、ということではないんです。
今現在、映像作品の上映プラットフォームは多様化がはじまっています。
ネット配信の台頭とともにスマホであったり、PCであったり。自分の好きな時間に好きな場所で映像を観ることができる、これはとても便利なことだと思います。
けれど、不便なこと、無理をして、その場所に行かないと観ることができない、っていうこと、暗闇の中で数十分、じっとしてスクリーンを観る、ということを一方で大切にしたいと思うんです。
映画館でなくてもいいんです。カフェで白壁にプロジェクタで映画写してみんなで観るとか、子どもの頃って小学校の体育館で「夏休み映画上映会」みたいのあったじゃないですか、あんなふうにみんなで集まってスクリーンにプロジェクタでする上映会とか。
「映画を観たい」と思って、そこに場所があって、集う人たちに上映できるような環境がいいなあ、って思っています。
MotionGalleryさんの「popcorn」とか、いいですよね。ネットを利用して人が集う場を創出する仕組みとか。
全てをひっくるめて、映画を観るために集まる人がいる空間を「劇場主義」と言っています。

そんな考え方なので、今現在では、一般のネット配信は積極的に考えていないです。
限られた場所と時間でしか観ることができない不便な(笑)映画っていうのがあってもいいのかな、とも思いますし。
現状のガチンコ・フィルムの作品規模が小さいので全国のみなさまにお届けすることもできない。
より多くの方々にどんな形であれ観てもらいたいという映画もこれから製作するでしょうし。
そうした場合にネット配信というものもひとつの選択肢としてあるかもしれません。
ただ、作品の中で最優先することは、上映されている場所、映画館などの劇場に観に来ていただくことだと思います。
現在、ガチンコ・フィルムの作品をかけている場所は、一般にミニシアターと呼ばれる席数100席前後の映画館が中心です。
多くの映画館さんの経営が厳しいとお聞きしています。その中でガチンコ・フィルムの作品をかけていただける、映画館さんが場所を空けていただけるわけですから、そこでできる限りのお客さまに観ていただきたい。
ネット配信ありき、の作品製作は、現時点ではあまり考えていないです。
時代遅れな考え方なんでしょうけどね。

画像: 長棟航平監督(『マッド・アマノ ドキュメンタリー(タイトル未定)』2018年完成予定)

長棟航平監督(『マッド・アマノ ドキュメンタリー(タイトル未定)』2018年完成予定)

■ 映画製作について

今年、劇映画が1本公開。来年公開を計画しているのが、ドキュメンタリー2本。
来年には、企画進行中の長編と中編、ドキュメンタリー3本の製作がはじまります。
ペースは・・・どうでしょう、早いのか、遅いのかわからないです。
何せ、まだまだ小さいプロジェクトですので、一生懸命、やらないと。
まあ、現在、一緒にプロジェクトをすすめている監督たちが、寡作というか、腰が重いというか(笑)、準備は進めていますが・・・。

まあ、そんなに製作予算があるわけでもないし、創った映画を映画館さんでかけていただく保障もない。そして監督の目指す未来というものもあると思います。
今は、ガチンコ・フィルムの現状と監督の目指す方向性が一致して、人として面白い監督とご一緒しています。

不器用な監督が好きですね。「映画を創ることが大好きで、映画作品を創る」というところに集中する監督であればあるほど、こちらも持っているものを全力で注ぎたいです。
お客さんや宣伝のことを先ず考える、マーケットありきの器用な監督もいらっしゃるけど・・・まあ、そんなこと念頭になくご自身の創る物語に没頭する監督っていうほうが好きですね。

野菜好きが集まって、畑耕して一生懸命精魂こめた野菜ができて、売り場を探している、っていうのが今のガチンコ・フィルムの状態だと思います。
で、この野菜を気に入ってくれたお店におさめる。美味しくて売れ行きよければ、次のシーズンの野菜もお店においていただける。
そのうち、その美味しさに気づいていただければ、大手スーパーで「生産者は◯◯さんです」なんてコーナーいただけるかもしれないし、有名シェフのおめがねにかなって五つ星レストランと取引がはじまるかもしれない。
話題になって、もしかしたら、ネット通販はじめたら、即日完売なんてなるかもしれない。
最初から、農協さんの傘下でかわりばえしない野菜つくったり、ネット通販するのは、何か違う気がして。
あ、これ結構わかりやすい例えじゃないですか(笑)映画を野菜に例えちゃいけないけど、一生懸命、もの創っていくって、こういうことかなあって。

とにかく、今は、一生懸命、真摯に愚直に取り組んでいくだけです。

■ INDEPENDENT FILMS CHANGE THE WORLD

今のガチンコ・フィルムの力では、世界を変えられないかもしれないけど、作品に関わる人の人生は変わるかもしれないですね・・・・ちょっとだけでも変わって欲しいです、変わらないと、作品を一緒に創る意味もないですし。

後記:
自分はもともとの映画人ではない、映画界の端っこで映画を創っている亜流ですよ、まだまだはじまったばかり、との前置きからはじまった飯塚氏のインタビュー。
大規模映画と低予算映画と二極化する日本映画の製作の流れの中で、低予算のインディペンデントの潮流にどのようにのるのか、沈むのか、ガチンコ・フィルムの真価が問われるのはこれから。

写真:安達英莉

現在上映中のガチンコ・フィルム製作による
奥田裕介監督『世界を変えなかった不確かな罪』で、トークショーが続々決定!

以下スケジュールとなります。

12/16(土) 11:00の回 上映後
【ゲスト】
小野篤史さん(『ワークさん』『夢こそは、あなたの生きる未来』監督)
長棟航平さん(『みなと、かこ、げんざい』監督)
奥田裕介監督

12/17(日) 11:00の回 上映後
【ゲスト】
木村知貴さん
川合元さん(伊参スタジオ映画祭『捨て看板娘』)
奥田裕介監督

12/18(月) 11:00の回 上映後
【ゲスト】
前田紘孝さん(映画プロデューサー『海炭市叙景』『そこのみて光り輝く』『つむぐもの』)
奥田裕介監督

21日も開催予定詳しくは下記のホームページより。

ガチンコフィルム初プロジェクト『世界を変えなかった不確かな罪』予告

画像: 映画|世界を変えなかった不確かな罪|予告編 youtu.be

映画|世界を変えなかった不確かな罪|予告編

youtu.be

・新宿K’s cinemaにて12/22(金)まで公開中!
・第七藝術劇場にて2018年1月27日(土)~2月2日(金)
・横浜シネマ・ジャック&ベティにて2018年予定
(ほか、順次全国公開)

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