cinefilインタビュー
公開直前!『世界を変えなかった不確かな罪』
劇場用長編 初監督!奥田裕介監督
12月9日(土)より新宿K’s cinemaにて劇場公開される『世界を変えなかった不確かな罪』の奥田裕介監督にインタビューをお願いしました。
奥田監督から語られる作品の裏話とは・・・
■映画監督になるまで
こどもの頃から、映画監督に焦がれて・・・というわけでもなかったんです。
高校3年生のときに、ある映画の本を読んで、映画監督になりたい!と思い、校長先生や学校中を巻き込んで50分の学生映画を撮りました。
内容は・・・まあ、ここでは、ちょっと(苦笑)
そこで映画創りの面白さに目覚めたんだと思います。高校ではバスケット部に所属していた関係でスポーツ推薦でほぼ内定していたんですが、「映画を撮りたい!」と大学進学も辞めて、とにかく映画の入口を求め、日本映画学校(現在の日本映画大学)にいきました。
映画学校では、みんながコッポラやトリュフォーが好きという中で「好きな映画はスパイダーマンです」と言ってバカにされたことを覚えています(笑)
とにかく授業の合間や時には授業をさぼったりして、映画を撮っていました。
脚本書いて撮影したり、の学校生活でした。、
あと、会いたいと思った映画監督がいれば、色んな人に「あの監督と会わせてくれ」と言い続け、強引に会わせてもらったり・・
お会いした監督には「お金や寝る間はいらないので!」と現場を手伝わせてもらったりしていました。
何でしょうね、その原動力って(笑)
卒業後は、ドキュメンタリー映画の構成やミュージックビデオの脚本・監督をしたり、短編映画を撮影したり、舞台の作・演出をしたりと・・・。
全ての経験、出会った人が、今回の劇場公開長編作品の第一作『世界を変えなかった不確かな罪』につながっていると思います。
『世界を変えなかった不確かな罪』 予告編
『世界を変えなかった不確かな罪』2017年|日本|101分|奥田裕介監督
■今回の映画を撮影するにいたった経緯
もうずっと「善意から生まれた悲劇」から生まれる物語を描きたいと思っていたんですね。
僕自身、人に対してよかれと思ってやったことが裏目に出ることがよくあるので・・・。
本作が生まれるきっかけになったのは、ある事件の被害者が自分の知人だったことです。そして、加害者もまた自分の知人だったことです。
それを知ったときの想いってどうしたらいいかわからなくて、どうしようもなくて。
そんな時に本作のプロデューサーから紹介されて聴いた曲がジャニス・ジョプリンの歌う「SUMMERTIME」だったんですね。
自分の中にすっと音楽が入ってくるようでした。
重々しくも切ないメロディの中に込められた願いを強く感じたのを覚えています。
楽曲のメロディや歌詞、ずっと温めていたテーマ、そして身近にあった事件、すべてがつながり、物語に向かい合いました。
脚本を仕上げるまで何回も推敲し、結構、時間はかかりましたね。
それから、撮影に入るまで、入念に準備して。
物語を描きはじめてから、公開まで3年ですね、早かったのか長かったのか、わかりません(笑)
■キャスティング
キャスティングも時間かかりましたね。
僕はキャスティングの際、必ず一対一でお話しする機会をいただくようにしているんです。
お会いして、脚本を書くきっかけやそこにつながるすべてをお話しして、逆にそこにつながる何かをその人からいただいて。
役に取り入れていただいたり、こちらも演出に取り入れたり。
今回のキャストの人たちとも撮影に入る前に沢山話しましたね。
不器用なやり方かもしれませんし、時間もかかるので効率も悪い。
でも、このやり方でしか、僕は映画が撮れないので・・・。
■現場
今回の現場では、徹底的に「不確かさを許容して寄り添い」容易に答えを出さないよう心がけていたので、とても苦しい現場でした。
自分も役者も「不確かさ」を感じながらの撮影で・・・。
そんな時、救われたのは、現場の温かいご飯でした。
あ、もちろん、スタッフやキャストにも沢山、助けられましたけど(笑)
今回、予算もかなり限られた現場だったということもあり、制作部が毎回手作りでご飯を炊きだしてくれたんです。
カレーだったり、豚汁だったり・・・僕は監督すると現場であまり食べられなくなるんですけど、今回は何回もおかわりして食べてました。
ホント、現場の温かいご飯をみんなで食べるっていいなぁって思いました。
■次回作は?
どんなものになるか、わからないですが・・・。
ただ、僕が映画でやりたいことは、説明がつかない感情に居場所をつくってあげること、なんです。
次の作品もそんな作品になると思います。
後記
決して饒舌とはいえない監督ですが、その語り口には確固たる信念をお見受けしました。
映画に真摯に向き合い、つくろうとする姿勢、信頼できる作品つくりをこれからも続けていく監督だと感じました。
写真:安達英莉
新宿K’s cinema