社会と個のあり方と関わりに鋭く問題を投げかけてきた
木村文洋監督『へばの』('08)、『愛のゆくえ(仮)』('12)最新作
宗教・原発・家族をテーマに据え、日本のタブーに果敢に挑んだ
渾身の問題作が遂に公開決定!
『息衝く』
『へばの』('08)、『愛のゆくえ(仮)』('12)に続く、木村文洋監督による渾身の最新長編『息衝く(いきづく)』がポレポレ東中野にて2月下旬に正式公開が決定致しました。
理想なき社会―ある宗教団体で育った子供は、憂国の志士と母親に。
彼らの見上げた空の先には何があったのか―
ある政権与党の政治団体でもあり、大新興宗教団体でもある「種子の会」。この映 画は、そこで育った二人の男と一人の女を巡る、3.11 以後のこの国の物語である。
宗教の掲げる理想、原発の再稼働に目を瞑る政党。理想と現実の間に揺れ、自らの信念を問い続けながらも団体の中で生きる二人の男、則夫と大和。一方、「種子 の会」を離れ、母親となり、独りで子を育てる一人の女、慈。彼らには絶対的に信頼を寄せる父親的存在がいた。幼少期からの師でもあり、精神的支柱でもある カリスマ、森山周。「ひとは独りで生きていける程は強くない。世界ぜんたいの幸福を願うときこそ、個であれ―」そう言ったかつてのカリスマは、日本という国を捨てて失踪した。彼が思い描いた未来は果たしてどこにあったのか―この物語 は、未だ生きることに揺れ、自立を確かな実感として感じることのできない三人 が、森山に再び会いにゆくことで、自身の背けていた何かを取り戻そうとする。 理想なき社会。そこで各個人がいかに希望をもち、生き続けていくのか。本作は、 この国の抱える根本的な問題を、ある特殊な生育環境で育った三人の、それでも 誰しもが求める生の実感を追い求める旅を通して知ることになるだろう。
「この国」で個として、自立して、生きる続けること―
社会と個の関わりを問い続けてきた木村文洋が描く、3.11 以後の日本のすがた
核燃料再処理工場がある青森県六ヶ所村を舞台に、そこに生きる家族の決断を描いた『へばの』('08)。「地下鉄サリ ン事件」オウム真理教の幹部・平田信と、逃亡を助ける女性の、実在の話をベースに、そのありえたかもしれない束の間の愛のすがたを描いた『愛のゆくえ(仮)』('12)。常に社会と個のあり方と関わりに、鋭く問題を投げかけてき た木村文洋監督による最新長編は、原発、宗教、家族を軸に据え、この社会で、如何にして個として生き続けること ができるのかを問うた渾身の長編である。
脚本家チームに批評家・杉田俊介らを迎え、3 年間に渡り脚本を執筆。撮影、 制作は、『ひかりのおと』『愛のゆくえ(仮)』『新しき民』など挑戦的な作品を連打してきたスタッフ陣が務めた。音楽は北村早樹子が担当、演奏に坂本弘道・岡田拓郎(森は生きている)。また役者には、演劇・映像界で活躍する 柳沢茂樹、長尾奈奈、古屋隆太(青年団・サンプル)、坂本容志枝(zora)、川瀬陽太、小宮孝泰、寺十吾(tsumazuki no ishi)らが参加。通常の商業映画とは全く異質なあり方で作られた本作は、原発や宗教という巨大なテーマにも果敢に挑み、今の日本映画の中にあって、まったく異質とも言える野心作が完成した。
【ストーリー】
3.11、数年後の夏を迎える、東京。参議院選挙が始まろうとしていた。この国にとって幾度目か、そして則夫、大和に とって―果たして幾度目の「忙しい夏」なのか。彼らはカリスマ・森山の失踪後、久しくして“種子の会”選挙に呼び戻される。「原発廃炉が争点となるか」、その言葉を幹部との人質に交わしながら。活動に邁進する大和。一方、則夫は、幼少期に核開発が始まった 青森県・六ヶ所村に妹と父とを残してきた記憶に決着をつけられず、母・悦子との最後の時間を目前にしていた。そのさなか、かつて想いを抱いていた慈と再会する―。
監督:木村文洋
脚本・プロデューサー:桑原広考 中植きさら 木村文洋
脚本:杉田俊介 兼沢晋
撮影:高橋和博/撮影・照明:俵謙太 /俗音:近藤崇生/助監督:遠藤晶/編集:上田茂
音楽:北村早樹子/録音・ミックス:葛西敏彦/宣伝美術:大橋祐介/宣伝・配給協力:岩井秀世
製作・配給:teamJUDAS2017
2017年/DCP/16:9/130分
©teamJUDAS2017