2017年公開予定、寺島しのぶ主演の映画「オー・ルーシー!」が吉田大八監督作品『腑抜けども悲しみの愛を見せろ』以来、10年ぶりに日本人監督作品としてカンヌ国際映画祭・批評家週間部門(※1)に出品され、現地時間22日(月)午前に寺島しのぶ、ジョシュ・ハートネット、平栁敦子監督らが舞台挨拶に登壇しました。
カンヌ『オー・ルーシー!』上映レポート!
上映中、何度も笑い声が響き、和やかな雰囲気のなか上映された本作。
エンドロール中にはずっと、スタンディングオベーションが送られ、場内でキャスト、監督に自らの感想を直接述べる熱狂的な観客が後を絶たず、絶賛の拍手のなか、会場が興奮の熱気に包まれました。
カンヌからコメント到着!
平栁敦子監督
<舞台挨拶時>
「とにかくこのような機会を頂けたことに、感激しております。この瞬間にこの場にいられことを光栄に思います。この旅路は3年前の2014年のカンヌ国際映画祭シネフォンダシオン部門に始まったのですが、その短編を長編としてカンヌに戻ってこられることをずっと夢見ておりました。チーム全体、クルー、キャストに感謝するとともに、
特に寺島しのぶさん、ジョシュ・ハートネット、勇気ある素晴らしい2人の役者に、お礼伝えたいです。2人とも長年の経験と自分自身をこの作品で表現してくれました。このチャンスを与えてくれた批評家週間の皆様に改めて感謝を申し上げます。」
寺島しのぶ
<舞台挨拶時>
冒頭で「ボンジュール」と挨拶をした寺島に、会場からは大きな拍手と声援が送られ、その後もすべてフランス語で挨拶を行いました。
「敦子さんと仕事をできて本当に楽しかったです。とても才能のある監督なので、明るい未来が待っていると確信しています。みなさん映画をぜひ楽しんでいってください。」
<上映後コメント>
「歴史ある映画愛に溢れた映画祭で、いくつもの作品の中からこの作品が選ばれたことは、監督にとってとても喜ばしいことだと思います。この作品の脚本をいただいた時から監督は『この作品でカンヌに行こう!』とエネルギッシュでモチベーションが高く、この人について行こう、と思えた監督でした。この作品に出演できとても光栄です。ここを始まりとして、カンヌのコンペに選ばれるような作品にもチャレンジしていきたいと思います。」
ジョシュ・ハートネット
<舞台挨拶時>
司会者からジョシュもフランス語で話しますか?と聞かれたジョシュは、「僕はフランス語ができないから…」とはにかみ、会場を沸かせました。
「この作品をサポートするためにここに来られてとても嬉しく思います。短編を観た時から、さらに脚本を読んだ時から、この作品がとても特別で、素晴らしいものになると分かっていました。皆さんにご覧いただけることをうれしく思います。レビューも楽しみにしているので、お手柔らかに(笑)。」
<上映後コメント>
「観客と映画を観るのはめったにない経験なので、緊張しました。ルーシーにとても感情移入してしまいました。」
【作品情報】
短編初監督作品『もう一回』がSSFF (ショート・ショート・フィルム・フェスティバル)& ASIA 2012にて、グランプリ・ジャパン部門優秀賞・東京都知事賞の3冠に輝き一躍注目を浴びた平栁敦子監督。
続いてNYU(ニューヨーク大学)の卒業制作として制作した短編映画『Oh Lucy!』(主演:桃井かおり)は、2014年のカンヌ国際映画祭のシネフォンダシオン部門(※2)で見事第2位を獲得。
日本人として同部門で初めての受賞という快挙を成し遂げた。
更に同じ年のトロント映画祭でも審査員賞を受賞、翌年のサンダンス映画祭でも最優秀賞を受賞するなど世界中から数々の称賛を浴び、25以上の賞を受賞した。
そして長編デビューが待望視されていた平栁監督が満を持して手掛ける長編映画初監督作品が本作『Oh Lucy!』。
過去にオスカーノミネート作品も生み出したサンダンス・インスティテュート/NHK(※3)脚本賞受賞作品として短編を基に新たな物語を書き加え製作されることになった。
何事にも満たされない日々を過ごす43歳の独身OL・節子がふと立ち寄った英会話教室のアメリカ人講師に恋をし、東京とLAで大騒動を巻き起こす様を時に赤裸々に時にユーモアたっぷりに描く。主演に寺島しのぶ、共演に南果歩、忽那汐里、役所広司という国際的に活躍する錚々たる面々に、ハリウッドからは『パール・ハーバー』などで知られるジョシュ・ハートネットを加え、新人監督とは思えない豪華なキャストが参加。
更にそれに相応しいカンヌ映画祭という国際舞台での華々しい監督デビューを迎えることとなった。
◆あらすじ◆
東京で働く43歳の独身OL節子は、ほど遠くない「退職」と、いずれ訪れる「死」をただ待つだけの生活を送っていた。そんなある朝の通勤ラッシュ。目の前で電車の飛び込み自殺を目撃してしまう。惨事の余韻から抜け出せないまま、仕事に就く節子。突然、節子の姪で 若き自由人である美花(21)から久しぶりに電話があり、話をしたいとランチに誘われる。姉の綾子に美花には関わるなと散々言われたのだが、それは節子に逆の効果を及ぼすだけ。節子は美花と会う。姪にはなぜか弱い節子。お金に困った美花を助けるはめに。美花が前払いした英会話クラスを代わりに取り、その受講料を美花に支払うことになる。アメリカ人講師ジョンの教える一風変わった英会話教室が始まる。そこで「ルーシー」という名前と金髪のカツラを与えられ、教室では「ルーシー」になりきるようにと言われる。節子の中で眠っていた感情を「ルーシー」が解き放ち、節子はジョンに恋をする。そんな幸せもつかの間、ジョンは姪の美花と一緒に日本を去ってしまう。自分が置かれた人生に納得ができない節子は、二人を追いかけて、アメリカへ旅立つ決意をする。しかし、仲の悪い姉の綾子も行くと言い出し、同行することになる。嫉妬、秘密、欲望に満ちた旅の果てに節子が見つけたものとは?
◆監督プロフィール◆
<監督・脚本: 平栁敦子>
略歴:長野県生まれ、千葉県育ち。ニューヨーク大学大学院映画制作学科卒業。 同大学院専門分野において1名のみに支給される3年間の Cathay Scholarship初の奨学金受給者である。在学中に制作した短編映画『もう一回』は 、2012年ショートショート・フィルムフェスティバル&アジアにてジャパン部門最優秀賞、ジャパン部門オーディエンスアワード、そしてグランプリを受賞。修了作品である桃井かおり主演の『Oh Lucy!』(21分短編映画)は2014年カンヌ国際映画際*シネフォンダシオン(学生部門)で日本人初の2位を受賞する。また、2015年サンダンス映画祭ではインターナショナル・フィクション部門の最優秀賞にあたる審査員賞を受賞。トロント国際映画祭などを含む様々な国際映画祭で25以上の賞を受賞。サンフランシスコ在住。二児の母。極真空手黒帯初段の保持者である。
※1 批評家週間とは
カンヌ国際映画祭において、新進気鋭の監督たちを発掘するために設けられた部門で、デビュー作2作目までの監督の作品が対象となる。本作は、吉田大八監督作品『腑抜けども悲しみの愛を見せろ』以来、10年ぶりに日本人監督作品として同部門に出品となる。
※2 シネフォンダシオンとは
シネフォンダシオンは、カンヌの学生映画部門。新しい才能にチャンスを与えるため、1998年から世界中の映画学校の生徒の作品を募集。毎年1600本以上の応募があり、選出された15~20本を公式上映、優秀作に賞を与えている。
※3 サンダンス・インスティテュート/NHK賞とは
NHKと俳優・映画監督であるロバート・レッドフォード主宰のサンダンス・インスティテュートが共同で始めた賞。世界中から応募された、映像化を前提とする脚本の中から、優秀な作品に賞を授与する。完成した映画を評価する賞は世界中に多くあるが、脚本段階で選出し、制作を支援する活動は稀である。次世代の映像作家の発掘と支援を通じ、映像文化への貢献と文化交流を目指す、このNHKの文化事業は世界的にも高く評価されている。1996年に開始して今年は20回目。2016年の受賞者、平柳敦子を含め、これまでの受賞者は62名。
受賞作品『Oh Lucy!』、サンダンスとNHKが連携して行う「NHK脚本ワークショップ」でサポートを受けた作品。「NHK脚本ワークショップ」とは、サンダンス・インスティテュートの講師をアメリカから招聘し、NHKが選抜した脚本に短期集中でアドバイス、ブラッシュアップを行う。世界に通用する日本人映像作家を育成・支援する事業で、2012年より毎年実施している。
過去のNHK賞受賞作品
高い評価を得た作品に、「セントラル・ステーション」(ウォルター・サレス監督/ブラジル/ベルリン映画祭グランプリ)、「彼女を見ればわかること」(ロドリゴ・ガルシア監督/アメリカ/カンヌ映画祭ある視点部門グランプリ)、「ウイスキー」(ホアン・P・レベラ&パブロ・ストール監督/ウルグアイ/東京国際映画祭グランプリ)。近年では、「ハッシュパピー バスタブ島の少女」(アメリカ)が、サンダンス映画祭審査員大賞、カンヌ映画祭カメラドール、アカデミー賞4部門ノミネートと話題となる。
監督・脚本:平栁敦子 共同脚本:ボリス・フルーミン
プロデューサー:ハン・ウェスト 木藤幸江 ジェシカ・エルバーム 平栁敦子
エグゼクティブ・プロデューサー:ウィル・フェレル アダム・マッケイ
出演:寺島しのぶ 南果歩 忽那汐里 ・ 役所広司 ・ ジョシュ・ハートネット
2016年サンダンス・インスティテュート/NHK脚本賞受賞作品
日本・アメリカ合作
配給・宣伝:ファントム・フィルム