今年、節目の第70回目を迎えるカンヌ映画祭。
この連載では、毎年5月に催される世界最高峰の映画祭の昨年の模様をまとめてレポート!
この映画祭の魅力をお伝えします。
2016年 第69回カンヌ国際映画祭を振り返るー 【CANNES 2016】6
曇り時々晴れとなった13日(金)。2つの公式記者会見に連続出席した後、ジャパンブースを取材。15時10分からの『桃太郎 海の神兵』上映後、明日が正式上映日となるマーレン・アーデ監督のコンペ作『トニ・エルトマン』のプレス向け上映を鑑賞。続いてはフランス・ベルギーの合作映画『ザ・ダンサー』(ある視点部門)の正式上映の場に立ち会った。
邦画全体のプロモーションを行うジャパン・ブース!
カンヌは映画祭と併行して、世界最大の映画見本市マルシェが開催されることでも有名だ。映画祭の期間中、世界中の映画会社のセラーとバイヤーたちが交渉を繰り広げる商談の場となっているのだ。
ハリウッドのメジャースタジオが高級ホテルにブースを設ける一方、メイン会場パレ・デ・フェスティバルに隣接する会場リヴィエラにも各国のセラーのブースが立ち並んでおり、日本の映画会社やTV局の多くも個別に海外セールス用のブースを出して自社映画の宣伝と売り込みを行っている。
また、パレ・デ・フェスティバルの地下1階にも様々なブースがあり、毎年ここに設置されている”ジャパン・ブース”は、邦画全体のプロモーションを担っている。
今年の”ジャパン・ブース”の設置期間は映画祭初日から20日までで、日本映画人の待ち合わせや打ち合わせ場所としても活用されている。
デジタル復元版が上映された復刻版『桃太郎 海の神兵』!
過去の名作の再発見、修復された偉大な作品のお披露目などを目的とする“カンヌ・クラシック”部門において、4Kスキャン、2K修復によってデジタル化した瀬尾光世監督のアニメーション映画『桃太郎 海の神兵』(1945年公開)が、15時10分からパレ・デ・フェスティバル内にある中規模上映会場ブニュエルで上映された。
日本初の長編アニメーション映画である本作は、馴染み深い昔話の「桃太郎」をモチーフにし、舞台を戦争中であった当時に移して描いた物語で、部下のサルやキジらを率いた飛行隊の隊長・桃太郎が南方の鬼ヶ島へと飛び、見事に作戦を成功させ、島を制圧するという内容だ。なお、監督を務めた瀬尾光世(1911年〜2010年)は、戦後、絵本作家としても活躍している。
“ある視点”部門出品作『ザ・ダンサー』に出演したジョニデの愛娘リリー=ローズがカンヌ入り!
22時15分からは“ある視点”部門に出品されたフランスの女性映像作家ステファニー・ディ・グストの長編映画デビュー作『ザ・ダンサー』の公式上映を鑑賞。上映前には出演陣のソコ、ギャスパー・ウリエル、メラニー・ティリー、リリー=ローズ・デップらを引き連れて登壇したステファニー・ディ・ジュースト監督が舞台挨拶を行った。
『ザ・ダンサー』は、アメリカからフランスへと渡って開花したモダンダンスの先駆者、ロイ・フラー(1862年〜1928年)の生涯を、イタリアの美術評論家ジョヴァンニ・リスタの著書を基にして描いた伝記映画。
当時は目新しかった“電気照明”を活用した独特なパフォーマンスで一世を風靡し、「エレクトリックの妖精」と称された革新的なダンサーであるロイ・フラーをフランスの人気ミュージシャン&女優のソコが鮮烈に演じた本作は、ジョニー・デップとヴァネッサ・パラディの長女であるリリー=ローズが、ロイ・フラーに見い出されて成功への階段を駆け上がっていく伝説のアメリカ人舞踊家イサドラ・ダンカン役で登場することでも大きな話題を集めた作品だ。
上映にはヴァネッサ・パラディも列席しており、熱いスタンディングオベーションに応える愛娘の晴れ姿を熱心に撮影し、母親らしい素顔を見せていたのが印象的だった。
(記事構成:Y. KIKKA)
吉家 容子(きっか・ようこ)
映画ジャーナリスト。雑誌編集を経てフリーに。
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