今年、節目の第70回目を迎えるカンヌ映画祭。
この連載では、毎年5月に催される世界最高峰の映画祭の昨年の模様をまとめてレポート!
この映画祭の魅力をお伝えします。
第69回カンヌ国際映画祭便り【CANNES2016】4
ジャーナリストもフル稼働を開始する2日目は、コンペ2作品の公式記者会見に続き、『マネーモンスター』の会見に出席。16時半からは明日が正式上映日となるケン・ローチ監督の『アイ・ダニエル・ブレイク』のプレス向け上映をドビュッシー・ホールにて鑑賞。
そして今年は、例年とは趣を変えることにし、“ある視点”部門ではなく、20時から催された“批評家週間”のオープニング・セレモニーの取材に繰り出した。
ジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツが共演した『マネーモンスター』の公式記者会見にはジャーナリストが殺到!
14時からは、『マネーモンスター』(6月10日公開)の公式記者会見に出席。ハリウッドを代表する人気女優ジョディ・フォスターの監督4作目となる本作は、2大スターのジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツが、『オーシャンズ12』以来11年ぶりに共演を果たした上、ともにカンヌ入りしたことで、会見場には入りきれないほどの報道陣が詰めかけた。
『マネーモンスター』は、高視聴率を誇る財テク番組の生放送中に、拳銃を手にした青年カイル(ジャック・オコンネル)に番組がジャックされ、人気司会者リー(ジョージ・クルーニー)が人質に。やがて、視聴者の前で衝撃の真実が暴かれていくというスリリングなリアルタイム・サスペンスで、ジュリア・ロバーツは番組のディレクターを務めるパティ役だ。
公式記者会見に登壇したのは、ジョディ・フォスター監督、ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツ、ジャック・オコンネル、株が暴落した大企業アイビスのCEO役のドミニク・ウェスト、アイビスの広報担当者役のカイトリオーナ・バルフェの6名。
初めてカンヌを訪れたのは、『タクシードライバー』(1976年のパルムドール受賞作!)の時で、当時はまさにカオス状態だったというジョディ・フォスター監督は、「あれから40年経ち、監督としてここに戻って来られたことは素晴らしく名誉なことだわ」と述べ、本作については「この映画で気に入っている点は山ほどあるけど、キャラクター同士の関係性が最も好き。ある日の午後に人生が一変してしまうような奇妙な関係性なの。それに監督経験のある俳優(クルーニー)と仕事をすることほどラッキーなことはないわ」とコメント。
一方、本作のプロデュースも兼任したジョージ・クルーニーは、「ジョディは信じられないほど才能のある監督だけでなく、信じられないほどの才能を持つ俳優でもある。なので、彼女は俳優とどの様に接すべきかをチャンと心得ている。ジョディのプロフェッショナルな監督ぶりには脱帽したし、とても素晴らしい経験だった」とコメント。さらには劇中で披露したダンスシーンにも言及し、会場の笑いを誘った。また、初カンヌ入りの印象を興奮気味に述べたジュリア・ロバーツの発言も印象的であった。
今年の“批評家週間”部門のオープング上映作はフレンチ・コメディの『イン・ベット・ウィズ・ヴィクトリア』!
監督の第1作目&第2作目を対象とする長編と枠に捕われない短編、そして特別上映作で構成される“批評家週間”部門は、フランス映画批評家組合(SC)の主催で、メイン会場はミラマー・ホテル。ここはプライベート・ビーチを有する超高級ホテルと有名ブランド・ショップが立ち並ぶカンヌの目抜き通り“クロワゼット大通り”沿いに建っている。
今年で55回目を数える“批評家週間”部門のオープニング・セレモニーには、審査員5名(審査員長はフランスの女優&監督のヴァレリー・ドンゼッリ)が登壇。続いて、フランスの女性監督ジュスティーヌ・トリエによる開幕作品『イン・ベット・ウィズ・ヴィクトリア』のスタッフ・キャストがずらりと並んで舞台挨拶をした。
特別上映された本作は、刑事弁護士ヴィクトリア(ヴィルジニー・エフィラ)の公私にわたるトラブルを軽妙に描いたコメディで、ヴァンサン・ラコスト、メルヴィル・プポー、ローラン・ブエトルノ、ロール・カラミー、アリス・ダケらが共演した賑やかな作品だ。
ちなみに、フランス監督協会が主催する“監督週間”部門のメイン会場は、同じ“クロワゼット大通り”沿いにあるJW マリオット・ホテルの地下にあるクロワゼット劇場で、今年はイタリアの名匠マルコ・ベロッキオ監督の『スィート・ドリームズ』が開幕を飾っている。
“シネマ・ドゥ・ラ・プラージュ”部門で上映予定だった『パープル・レイン』は残念ながら上映中止に!
今年4月に急逝した歌手プリンスをトリビュートし、“シネマ・ドゥ・ラ・プラージュ”部門で21時半から上映されるはずだった彼の初主演映画『パープル・レイン』(1984年製作)が上映中止の憂き目にあった。
“シネマ・ドゥ・ラ・プラージュ”部門はメイン会場にほど近いパブリック・ビーチに巨大な野外スクリーンを設置し、一般の人も夜の浜辺で名作映画を無料鑑賞できる好イベントなのだが、上映開始時間になるやアナウンスが流れ、強風で舞い上がる浜辺の砂が機材に悪影響を及ぼすとの理由で、上映断念が告げられてしまったという。
(記事構成:Y. KIKKA)
吉家 容子(きっか・ようこ)
映画ジャーナリスト。雑誌編集を経てフリーに。
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