トークイベント❶
アフガン紛争地域―部下の命を守る為に、奪われた民間人の命。
決断せざるを得なかった男の葛藤、その家族の絆を描いた戦争ドラマの傑作!

『偽りなき者』の脚本家として知られるトビアス・リンホルムが監督&脚本を務める本作。アフガニスタンに駐留するデンマーク兵が直面する過酷な現実をひり付くほどにリアルな戦場の描写を交えながら描き、現代社会における「正義」の在り方を問いかけるヒューマンドラマの傑作です。

そして上映の始まった『ある戦争』数回にわたって開催されるトークイベントでは、いまの世界情勢と”戦争”そのものについて熱く語られる。

「誤爆。民間人の死。それは戦場では日常茶飯事」
元アフガン武装勢力の活動家が、平和への思いを訴える!

このたび開催したトークイベントには、日本国際NGO「日本国際ボランティアセンター」(JVC)の谷山博史代表と、普段は現地アフガニスタンで平和教育キャンペーン等を行っている同副代表であるサビルラ・メムラワル氏がゲストとして登壇。
長年現地を見続けてきた谷山代表とアフガニスタン人であるメムラワル氏に、戦争の真実と現状を、映画の感想と共に熱く語っていただきした。つきましては下記、詳細をご報告いたしますので、ぜひニュース掲載のご検討をお願いします。

【日時】10月8日(土)
【会場】 新宿シネマカリテ (新宿区新宿3丁目37-12 新宿NOWAビルB1)
【登壇者】谷山博史氏(JVC代表)、
サビルラ・メムラワル氏(JVCアフガニスタン事業 副代表)

国際NGO「日本国際ボランティアセンター」(以下、JVC)アフガニスタン副代表のサビルラ・メムラワルと、1986年にJVCに参加し、現在は代表理事を務める谷山博史が登場すると、場内は大きな拍手で包まれた。

画像: 谷山博史氏(JVC代表)、 サビルラ・メムラワル氏(JVCアフガニスタン事業 副代表)

谷山博史氏(JVC代表)、
サビルラ・メムラワル氏(JVCアフガニスタン事業 副代表)

ソ連侵攻の只中にあるアフガニスタンに生まれ、常に戦争が身近にあったというサビルラ。
彼は映画を「今なお続くアフガニスタンの現状をよく捉えています」と絶賛し、そこで描かれている現実について言葉を続けた。「映画では、デンマーク軍、つまりは外国軍の兵士が、アフガニスタンの治安を守るために働いているという状況が描かれています。

しかし、私には彼らがアフガニスタンの文化、歴史背景をよく理解しているとは思えません。
劇中、デンマーク兵が怪我をした現地の女の子を助ける場面があります。彼らの行為それ自体は正しかった。だが、彼らはそれがもたらす結果について理解できていませんでした。
なぜなら、その行為によって、タリバンはその家族が外国軍と繋がりがあり、スパイ行為をしているのではと疑いを持ったからです。
また、主人公は敵の攻撃を受けて空爆の決断を下すが、戦闘で正しい判断をすることは容易ではありません。その結果、またしても市民の被害に繋がる。
この映画は、これこそが戦争の現実、そして外国軍が駐留するということの現実だということを描いています。つまり、武力で武力を抑えるという行為自体がいかに失敗しているのかを浮かび上がらせているのです」

サビルラは、幼少期に紛争の影響でアフガニスタン難民としてパキスタンに家族と移住し、15年を過ごした。彼は長い間、帰国したらアフガニスタンの国軍に入ろうと思っていたという。
戦争の中で生きてきたから、自分で銃を取ることを当たり前のように考えていたのだ。友人からアフガニスタンの国軍は米軍と協力し合っているからやめたほうがいい、と諭された彼は、後に、国軍ではなく、武装勢力として米軍やソ連に対抗しようと決意を固める。

そんな中、「偶然に、JVCのアフガニスタン現地代表として現地にいた谷山さんに会ったんです」とサビルラは言う。「そのまま、2005年に意図せずJVCの活動に参加することになりました。まだ当時は武力を信じていたので、NGOのような平和的アプローチや、谷山さんが話す“対話”の力を信頼していませんでした。だが、私の考えを変える出来事が起きました。米軍が、JVCの診療所を占拠して、勝手に医薬品を住民にばら撒いたのです。

その時、谷山さんが“あなたたちは銃を持って国に入り人を殺している。そして、薬を配ることによっても人を殺している”と言った。このJVCの働きかけに米軍は謝罪し、二度と繰り返さないと断言しました。それがきっかけとなって徐々に、武力で解決できないことも対話でならできると思うようになりました。紛争のなかに生きてきて、対話や平和活動の力を信じていなかった。そんな自分が変われるのだから、他の人だって変われるはずだと伝えたくて、今の活動を行っています」

武力を信じていた過去を持つからこそ、対話の力、平和活動の重要性をいっそう感じることができるのだろう。そんなサビルラを平和への道へと導き、アフガニスタンで4年半にわたり医療支援などボランティア活動に従事した経歴を持つ谷山もまた、『ある戦争』で描かれるアフガニスタンの状況を肌で感じて知っている。

出口がない、終わりがない。勝者が存在しない戦争の実態とは--

映画について、「私がアフガニスタンにいた時に経験した出来事と重なることがたくさん描かれていました。外国軍による誤爆、民間人の殺傷は日常茶飯事に起きている。JVCのアフガニスタン人スタッフも、殺されたり、負傷したりしています」と、いとも簡単に人命が奪われる、紛争地の凄惨な日常を語った。
「この映画で描かれているのは“対テロ戦争”です。それは、誰が敵なのかが分からない、住民を巻き込んで闘われる戦争。ただ、主人公クラウスのように、民間人を殺したとして裁判にかけられるというケースは、実際にはあまりないのではないかと思います。ある時、JVCスタッフの母親が米軍の攻撃を受け胸と腹部に三発被弾したことがありました。
私とサビルラは米軍に抗議し、謝罪を要求した。けれども、米軍の大佐の答えはこうでした。“日常茶飯事の出来事だから、そんなことはできない”。彼ははっきりそう言ったのです。そのくらい、私たちの見えないところで、日々アフガニスタンは犠牲者を生み続けています」。
日本に暮らす私たちは日ごろ見過ごしがちな現実に目を向けることの大切さを訴え、同時に、戦争というものがはらむ複雑な問題について言葉を続けた。「決して、被害者はアフガニスタンの市民だけではない。裁判にかけられなくても、民間人を殺した兵士は悩み、苦しむ。
彼らも犠牲者なんだとつくづく感じます。出口がない、終わりがない。勝者が存在しない戦争の実態を赤裸々に語っている映画だと思いました」。

そうして、南スーダンに自衛隊を派遣しており、将来、他国の戦争に参加するかもしれない――そんな現在の日本へと話が移ると、二人とも胸に抱いている不安を吐露した。
サビルラは、「アフガニスタン人にとって、日本は“中立の国”として知られる唯一の国です」と明かし、「アフガニスタンが日本に期待しているのは、中立の立場において、この終わりのない戦いをとめる役割を担ってほしいということです」と呼びかけた。

谷山も「安保法制をそのまま運用すれば、日本は確実に戦争に巻き込まれて、戦場で人を殺し、殺されることになる。それは明らかだと私は肌で感じています。そのことがなぜ伝わらないのか。
駆けつけ警護や他国軍に対する紛争地での後方支援は、政治家たちがどのように国会で説明しても机上の空論。戦場では武力行使しかないんです。日本はアフガニスタンから中立に見られてきた。長きに渡ってつみあげてきたものが一気にくずれてしまう。そうなってはなりません」と平和への願いを口にした。

『ある戦争』が映し出す、勝敗や善悪で二分化できない、現代の戦争が持つ不条理さ。そこで描かれているのが、日本にも無縁ではない問題であるという現実。そのことを意識し、じっくりと考え、他者と対話し、理解しあうこと。その大切さを説き、平和な未来の訪れを願う二人のトークは幕を閉じた。

トークイベント❷
「仲間の親族が米軍の誤爆で殺され、ISも勢力を拡大」
アフガンの現場を肌で知る活動家が、想像を絶する戦地の現状を訴える!

今年のアカデミー賞®外国語映画賞にノミネートされた映画『ある戦争』の大ヒットを記念し、公開2週目となる10月15日(土)にトークイベントを実施いたしました。、

このたび開催したトークイベントには、ジャーナリスト、キャスターとして活躍する堀潤氏と、日本国際ボランティアセンターのアフガニスタン事業統括を務める小野山亮氏がゲストとして登壇。
さまざまな社会問題、国際情勢を論じ、発信を続けてこられた堀氏と、自身の目で長年アフガニスタンの現場を見てきた小野山氏に、戦争の真実と現状を、映画の感想と共に熱く語っていただきした。

【日時】10月15日(土)
【会場】 新宿シネマカリテ (新宿区新宿3丁目37-12 新宿NOWAビルB1)
【登壇者】堀潤氏(ジャーナリスト、キャスター)
小野山亮氏(日本国際ボランティアセンター アフガニスタン事業統括)

ジャーナリスト、キャスターとして活躍する堀潤と、日本国際ボランティアセンター(以下、JVC)のアフガニスタン事業統括を務める小野山亮の両氏が登壇すると、会場は大きな拍手に包まれた。
『ある戦争』公開に先駆けて本作のトビアス・リンホルム監督にSkypeインタビューを行った堀は、監督と話した内容も交えつつ、映画の感想をこう語った。

画像: 堀潤氏(ジャーナリスト、キャスター) 小野山亮氏(日本国際ボランティアセンター アフガニスタン事業統括)

堀潤氏(ジャーナリスト、キャスター)
小野山亮氏(日本国際ボランティアセンター アフガニスタン事業統括)

「僕は監督と同年齢(39歳)なので、見てきた時代が重なります。映画にも、自分自身が社会に抱いてきた問題提起と深く共鳴する部分がたくさんありました。リンホルム監督は、アフガニスタンに駐留するデンマーク兵士たちの不条理な現場がある一方、その現実に対して一般市民がどこまで関心があるのか、その温度差を強く感じていたそうです。その疑問を、映画監督としてしっかり世の中に発信したいと話していたのが印象的でした。
僕は以前、第二次世界大戦の証言を集める取材をしていた時、忘れられない言葉を聞きました。その方は民間人として戦争を体験されていたのですが、僕が“今の政治家は戦争を直接は体験していないですよね。戦争を知らない世代による安全保障の議論を、どうご覧になりますか?”と尋ねると、机をドンッと叩いてこう言いました。“戦争を知らない世代と言うのはおかしいね。だって第二次大戦以降も戦争は起きているじゃない。朝鮮戦争、ベトナム戦争、そして世界各地で続く紛争、イラン、アフガニスタン、現在のシリアといった対テロの戦い。いくつもの内戦が起きるアフリカだってそう。そういう現実を直視してこなかっただけじゃないか。戦争を知らないのではなく、戦争に目をつぶっている世代なんだ”と。その言葉の重み、そしてこれから自衛隊が海外にでるという可能性について考えると、『ある戦争』で描かれていることは決して僕たちと関係のないテーマではないということが分かると思います。」

『ある戦争』のような、社会問題を提起し、それについて考えさせる映画を観ることの重要性

自身の目でアフガニスタンの現状を長きにわたり見てきた小野山は、「映画には、アフガニスタンの現実に酷似した、リアルな場面がたくさんあるなと思いました」と映画のリアリティを賞賛し、実際に彼が目撃した、劇中の場面に似ている事例を紹介した。
「まずは誤爆による市民の犠牲です。映画には、タリバンに関係している疑われた村人が殺害される場面がありましたが、そうした出来事は私たちの身近にもある。あるアフガニスタン人の現地スタッフのいとこは、結婚をする時に現地の風習で、新郎の家まで親族で行進して歩いていました。そこが米軍の誤爆を受けた。人がたくさん集まっていたからかもしれません。そうして新婦を含め、たくさんの人が亡くなりました。そのスタッフは、1日で多くの親族を失いました」と自身の仲間が体験したあまりにも辛い出来事を語った。
「映画では、デンマーク兵のその後が描かれています。ですが、現地市民のその後にも思いを寄せてほしい。いとこが襲撃された現地スタッフは、JVCの会報誌にこんな言葉を寄せました。“私たちの信仰を侮辱した米国は去ってほしい”。そうはっきり訴えた。大切な人を失った苦しみ、悲しみはずっと続き、深く残る。どうか、そうした日常が身近にあるアフガニスタン市民のことを、映画を観て考えてほしいです」。
強い思いを伝えた小野山は続いて、アフガニスタンの現状に話を移した。
「軍事力によってアフガニスタンに平和をもたらそうとした外国軍の計画は失敗したと言わざるを得ません。デンマーク含め、各国もかなりの死傷者を出した。米軍は未だ約1万人の規模で残っているが、その他の外国軍が撤退したことでタリバンは勢力を復活させています。タリバンは国土の7割を占めているのではという分析もあるくらいです。人口にするとおよそ3割ですが、それでもすごい数です。市民の死傷者はアフガニスタンの対テロ戦争が終わった後で最悪の数。それもシリア、イラク情勢の報道の中でかき消されることが多いですが、とにかく最悪の状況です」また、タリバンに加え新たな勢力が台頭していることを明かした。

「現在、アフガニスタンにもIS――イスラム国を名乗る勢力がたくさん現れています。彼らはマスメディアに積極的にPRをします。外国軍が撤退したギャップを縫って勢力を拡大していきました。ISとタリバンも血みどろの戦争をしていて、アフガニスタンの状況は、想像を絶するほどにひどいものです。ある時、村の長老たちが、政府や外国軍を支援したという疑いによって捕えられました。ISは穴を掘ってそこに爆弾を埋めると、その上に彼らを座らせて、一人一人を爆発で殺していったのです。あまりにもむごく、信じがたい現実。しかし、それが戦争の現実なのです。『ある戦争』を観て、戦争によって苦しむのは市民だということを分かってほしい」

一人一人のアクションが連鎖しないと、何も変わらない。

こうした小野山の言葉を受け、堀は『ある戦争』のような、社会問題を提起し、それについて考えさせる種類の映画を観ることの重要性を説き、「監督は、インタビューの時に“世界の状況に希望を見出せない”と話していました。この先世界は良くなるかと聞かれると、逆に悪くなるのではないかと思う、と」と話した。「米国の大統領選や、欧州で極右政党が民主主義的手続きによって議員数を増やしている世界情勢の現状を見ても、溶け合うよりも、断絶、排斥の方向へ進んでいます。そうした勢力が、何かのはずみで弾けると、極端な方向に転びかねない。だからこそ、『ある戦争』のような映画が大事なのです。この映画は徹底的に抑制的に描かれていて、派手な戦闘シーンも、ヒロイズムもありません。さらに、敵の兵器、むしろ敵の姿そのものがほとんど見えないんです。

監督に、なぜこういう撮影にしたのかと聞くと、“アフガニスタンに駐留していた元デンマーク兵に取材をする中で、戦闘では敵の姿が見えないと言われた”、と答えました。第二次世界大戦の時代とは違う。国家が宣戦布告しあう形態じゃない。敵なのか敵ではないのかが分からない。国なのか、武装集団なのか、ただの集団なのか、それとも個人なのか、それが分からないんです」と、現代の戦争の不条理を指摘した。

小野山は「軍が安易に市民を助けるのは非常に危険。それで逆に狙われることがあるということを学ぶべきです。かなりのNGOスタッフがそれによって殺害されている。それが日本でどのくらい伝わっているでしょうか」と問いかけ、「知って、色んな人に伝えていくこと、そしてそうした平和活動を行う現地の人を支援するということが何よりも大事です。『ある戦争』のような映画を通じて、現場のことを感じてほしい」と、アフガニスタンの現場を肌で知るからこその強い願いを訴えた。

堀もまた、「個人が簡単に発信できる時代だからこそ、伝えていってほしい。僕は、世の中を変えるのは政治家や企業家など特定の人ではないと思うんです。一人一人のアクションが連鎖しないと、何も変わらない。アクションの積み重ねがあって初めて、大きな一歩が踏み出せる」と、それぞれが考え、行動することの意義を説き、トークを締めくくった。

画像: 『ある戦争』予告 youtu.be

『ある戦争』予告

youtu.be

【STORY】
正義の決断が、許されない罪を生んだ
戦場と法廷を舞台に、正義と命の尊さを問う、心揺さぶるヒューマンドラマ
アフガニスタンの平和維持のために駐留するデンマーク軍の部隊長、クラウス(ピルー・アスベック)。ある日、パトロール中にタリバンの襲撃を受け、部下を守るために、敵が攻撃していると思われる地区の空爆命令を行う。だがその結果、彼は、子どもを含む11名の罪のない民間人の命を奪ってしまう。軍法会議の為に帰国したクラウスは愛する家族に支えられながらも、罪の意識と部下を守るために「不可欠」だった決断との間で苦悩する。そして、運命の結審が訪れようとしていた…。

<スタッフ&キャスト>
監督・脚本:トビアス・リンホルム(『偽りなき者』『光のほうへ』脚本)
出演:ピルー・アスベック『LUCY/ルーシー』『シージャック』『GHOST IN THE SHELL (原題)』/ツヴァ・ノヴォトニー『ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男』/ソーレン・マリン「コペンハーゲン/首相の決断」/シャルロット・ムンク/ダール・サリム
<DATA>
2015年 / デンマーク / デンマーク語、アラビア語 / 115分 /
原題:KRIGEN英題:A WAR / 日本語字幕:ブレインウッズ /DCP / カラー /シネスコ/ 5.1ch / G /
後援:デンマーク大使館 /
配給:トランスフォーマー  
© 2015 NORDISK FILM PRODUCTION A/S

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