今回「釜山国際映画祭」で上映される作品の中で自主制作で制作した作品で、見事に出品を果たした日本人監督二人を紹介します。
「アジア映画の窓」部門 に選ばれた庭月野 議啓監督『仁光の受難』
まずはじめにご紹介するのは、今回 「A window of Asian Cinema(アジア映画の窓)」に選ばれた庭月野 議啓監督『仁光の受難』です。
この部門は日本監督だけでも深田晃司監督『淵に立つ』、西川美和監督『永い言い訳』、山下敦弘監督『オーバー・フェンス』、中野量太監督『湯を沸かすほどの熱い愛』富田克也監督『バンコクナイツ』などすでに世界の映画祭で受賞したり、話題の作品が選ばれている中で、唯一自主制作映画の上になおかつまだ公開が決まっていない作品でありながら映画祭に選出されています。
監督は、自主映画で圧倒的割合を占める「現代劇・日常劇」から離れ、「海外の映画祭も視野に入れたエンタメ時代劇」を作りたいと言う思いから今作に挑み、「勧善懲悪」「侍」「忍者」というステレオタイプの物語ではなく、それとはまた別の日本独自の文化「仏教」「妖怪」「浮世絵」を織りまぜた、既存の時代劇と一線を画す「新しい形の時代劇」にすべく史実「延命院事件」や伝承「二恨坊の火」から着想を得た創作妖怪譚を、実写とアニメーションを交えた独自の世界観で表現。
ホラーではなく民衆の好奇の対象だった蠱惑的な百物語を目指したそうです。
すでに今作はバンクーバー国際映画祭のドラゴン&タイガー部門でも選出され10月1日にワールドプレミアされました。
庭月野 議啓監督『仁光の受難』予告
【あらすじ】
妖怪(あやかし)と行き逢い、僧侶は旅に出るー
朝靄のかかった静謐な森の中に、読経が響く。
旅の僧侶が、半裸の女の屍体を供養している。少し離れた場所に、惨殺された百姓の屍体。すぐ側に、即身仏のごとく干からびた、浪人らしき男の屍体。
そんな異様な光景の中、僧侶は経を読み続ける――。
その昔、武州の外れ、延明寺という寺に、仁光(にんこう)という僧がいた。
誰よりも熱心に修行にはげむ、僧侶の鑑だったという。仁光は、何故か町の女に異常に好かれた。若い娘から熟れた女房、枯れ果てた老女までが仁光を想い慕った。
無論、僧侶にとって女犯は重罪である。戒律を破るようなことこそなかったが、仁光は大層困っていた。ある日の夕暮れ、仁光は能面を被った女と行き逢い、その魔性を開花させてしまう――。
庭月野 議啓 略歴
1981年北九州に生まれ。九州大学 芸術工学府 修士課程 進学。視覚芸術学専攻。上京後、フリーランスの映像ディレクターとして活動を始める。短篇映画『イチゴジャム』がPFFアワードなど様々な映画祭に入選・上映される。2012年より長編時代映画『仁光の受難』制作開始。
『仁光の受難』バンクーバー国際映画祭、釜山国際映画祭へ出品。
【監督】 庭月野 議啓
【キャスト】 辻岡正人、岩橋秀太、若林美保、有元由妃乃 他
「ニューカレント(New Currents)部門」では佐藤慶紀監督『HER MOTHER』
「ニューカレント(New Currents)部門」では日本人監督で唯一佐藤慶紀監督『HER MOTHER』が出品されている。
佐藤慶紀監督『Her Mother』予告
【あらすじ】
43歳のビジネスウーマン・晴美。2年前に1人娘のみちよが嫁ぎ、現在は夫と2人で平凡に暮らしている。そんなある日、みちよが婿の孝司に殺されてしまう。孝司は死刑判決を受ける。当初は死刑判決を当然の事と考えていた晴美だが、ある時から孝司の死刑を止めようと考え始める。そこには、晴美しか知らないみちよのある秘密があった。
佐藤慶紀 略歴
愛知県出身。南カリフォルニア大学映画制作部卒業後、TVディレクターとして働く。
長編映画第1作「BAD CHILD」は、第29回ロサンゼルス・アジア太平洋映画祭に公式出品され、東京、名古屋などで上映された。全国47都道府県での上映を目指し、現在も自主上映活動を続けている。
【監督・脚本】佐藤慶紀
【キャスト】西山諒 西山由希宏 野沢聡 岩井七世 荒川泰次郎 西田麻耶 木引優子 箱木宏美 他