映画『葛城事件』

劇団「THE SHAMPOO HAT」の旗揚げメンバーで劇作家にして、『その夜の侍』で監督も務めた赤堀雅秋が同名舞台を映画化したヒューマンドラマ。

画像: 映画『葛城事件』

無差別殺人事件を起こした加害者青年とその家族、加害者と獄中結婚した女性が繰り広げる壮絶な人間模様を描いた。『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』などの三浦友和、『さよなら歌舞伎町』などの南果歩をはじめ、田中麗奈、新井浩文、若葉竜也ら実力派キャストが集結。

家族、死刑、贖罪などさまざまなテーマをはらんだ物語に圧倒される。うわぁ、重くのしかかってきて後味悪いんだけれど、救いのない家族とその狂気に釘付けだった120分…。
殺人事件中心の物語ではなく、刻々と静かにそして淡々と崩壊していく家族の物語。歯車が狂って家族としての理想が崩れ、悲劇へと加速する展開が息苦しい…何とも言えない…。
登場人物がみんなおかしいせいで誰にも感情移入できないんだけれど、それはできないのではなく、したくないのかも。だって監督の言う通り「対岸の火事ではなく我々の地続きにある、ある家族の話」だと感じるから。明日は我が身? と身につまされる…。
「どうしてここまで来ちゃったんだろう?」という台詞が印象的。

役者たちの怪演に圧倒される。陰鬱な存在感といい、静と動を際立たせた演技といい、ボクらの恐怖感を募らせる。三浦友和は凄みと迫力がすごい。
重くて威圧的で観ているボクまで精神的に追いつめられた。南果歩も新井浩文も役にバッチリとハマってた。怖かった…。田中麗奈も鳥肌モノだ。そして際立っていたのが若葉竜也か。あまり語らない時と感情を爆発させる時との表情と声の使い分けが素晴らしかった。
演出的には何度も出てくる食事のシーン、コンビニ弁当やデリバリーやインスタントばかりの食事、そこに愛情も味も楽しさも全然感じないのが滑稽に思えるのが秀逸。家庭は少しずつ壊れていく。怖い…。
画面から人がいなくなったときでも画面は数秒間そのままというシーンが多かったのも印象的。乾いた感じというか、寂しい感じ、虚しい感じを覚えた。ラスト、思いっ切り人間臭い三浦友和が良い。食事の音も不気味…。嗚呼、家族って何だろう? 幻? 悶々とした気分。家族って難しい…。
そんなことを思う、重くずっしりと何かが残る作品。

シネフィル編集部 あまぴぃ

画像: 6月18日(土)公開 『葛城事件』予告編 youtu.be

6月18日(土)公開 『葛城事件』予告編

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