各界のトップが集結し魅せる、“本物”の日本文化
文禄3年(1594年)、池坊専好が豊臣秀吉に前田利家邸で披露したといわれる「大砂物」(全幅7.2メートル、高さ3.5メートルに及ぶ立花)。そこから生まれた伝説に着想を得て、新たな物語を作り上げたのが、鬼塚 忠の小説「花いくさ」(2011年発表 KADOKAWA刊)です。
これまであまり知られることのなかった初代・池坊専好という花の名手と千利休の友情、そして、戦国時代において京都の町衆である六角堂にいる花僧が、彼らの代表者として、時の権力者である豊臣秀吉の乱心に、刃ではなく、花をもって仇討するこの物語。今から2年前、この物語に感銘を受けた製作サイドが映画化を企画し、4月にクランクインすることになりました。
花を生けることで、戦乱に生きる人々の心を救う花僧・池坊専好を演じるのは、狂言界のトップスター・野村萬斎。キャスティングにあたっては、本作の専好が持つ天真爛漫、奇想天外というイメージから製作サイドがオファー。萬斎は演じるにあたり、クランクイン前に華道の指導も受け、1つ1つの細かい所作にもこだわる徹底ぶりを見せています。
専好と対立する事になる天下人・豊臣秀吉には、歌舞伎界の若き大看板・市川猿之助。温厚だった秀吉が、後年、嫡男・鶴松を失って、狂気に陥っていく様を演じられるのは彼しかいないとオファーしました。ジャンルは違えども同じ日本を代表する伝統芸能の継承者である萬斎と猿之助が共演するのは、今回が初めてとなります。
そして専好と深い友情と信頼を築き、共に美を追い求めた茶人・千利休には、佐藤浩市。さらに織田信長役に中井貴一、前田利家役に佐々木蔵之介という、現在の日本映画界を代表する俳優が参加する超豪華キャスティングが実現。“本物”の俳優たちが演じるからこそ伝わる、日本文化の魅力が詰まった映像に期待が高まります!
そして、本作の脚本を手掛けるのは、「JIN-仁-」「ごちそうさん」「天皇の料理番」など、数々の笑って泣ける名作ドラマを生んだヒットメーカー、森下佳子。
監督は、情感あふれる作品づくりに定評があり、藤沢周平原作の「山桜」や「小川の辺」など、時代劇でもその手腕をみせた篠原哲雄。音楽は、スタジオジブリ作品、北野 武作品などを中心に、日本の映画音楽界を牽引する巨匠、久石 譲。また題字を、力強いタッチで世界的にファンを広げる金澤翔子が、そして劇中絵画を、その作品が大英博物館に所蔵展示された小松美羽が担当。日本を代表する若き女性アーティストたちが、作品に彩りを添えます。
華道家元池坊は、来年、「花を生けた」という記録から555周年となります。世界に誇る文化として、長く日本人の心に息づいてきた「生け花」ですが、そこに焦点を当てた映画作品は、これまでありませんでした。46世となる次期家元は、昨年11月池坊専好を襲名した4代目専好であり、初代専好の伝説が映画化されるという、まさに記念の年となります。
また本作は、時代劇のメッカともいうべき京都太秦の映画人たちの手によって製作されます。撮影は大覚寺、妙心寺、鹿王院、仁和寺、南禅寺、梅宮大社、随心院などの京都を代表する場所でも敢行され、海外に向けて日本を紹介できるような作品となります。
コメント
野村萬斎(池坊専好 役)
池坊専好は、戦乱の時代の中で、花で世に語りかけ、花と共に生きた人。
命あるものに更なる命を吹き込む、純粋(ピュア)な存在として演じたいと思っております。
二度にわたる生け花の所作の稽古では、花鋏の使い方など華道の基本はもとより、ためる(枝などを曲げた状態にする)、葉の形を変える等の細かい技術や、力技を必要とする男性的な大作に至るまで、幅広く教わりました。
生け花特有の所作に、私なりの動きを活かせればと思います。
専好は華道において“中興の祖”とも言われていますが、伝統を受け継ぐだけではなく、常に時代の空気を感じながら、“その時々の花の美しさ”を追求する。
その姿勢は世阿弥も言っていることであり、我々の狂言の世界と相通ずるものがあると思っております。
『花戦さ』
出演:野村萬斎、市川猿之助、中井貴一、佐々木蔵之介、佐藤浩市
原作:鬼塚 忠「花いくさ」(KADOKAWA刊)
脚本:森下佳子
音楽:久石 譲
監督:篠原哲雄