映画製作は、少ないお金では、完成しません。
基本的に、高価な専門的な機器を扱い、数週から一ヶ月以上の長い時間を使い、また、多くの人が参加して出来上がっていきます。
そのなかも、新人が映画界にはいっていくのは、並大抵のことではないのですが、低予算でつくられた作品でも、評価されて、世界の市場で広がっていく可能性はあるのです。
海外サイト”Taste of Cinema”ではそんな、低予算でつくられながらも、世界を認めさせた、世界で成功した作品15本を紹介しています。
たしかにいまでは、世界で有数の著名な監督になった方々も、こんな低予算で制作して、成功事例を示して、世界に羽ばたいていったという実例が、幾つもあるのです。
日本のインディペンデント作品から比べたら、それなりに予算をかけている作品も多いですが、それでも、ジョージ・ミラー監督は貯金を蓄え、デヴィッド・リンチ監督は映画祭に拒否られ、ニコラス・ウィンディング・レフン監督は母国での映画の失敗での巨額の負債を乗り越え、それぞれに苦労が垣間みれます。
低予算のフィルムでも、足りない予算を上回る創造性によって、名作となる可能性を秘めているという証になる15本です。
1. 『タンジェリン』Tangerine (2015, Sean S. Baker)
Budget: $100,000
2015年、多くの映画祭祭で話題となった『タンジェリン』。
この映画は、iPhone5sで撮られた作品としても有名になりましたよね。
ビジュアルはカラフルで、PoPな要素もあり、スピード感ある映像も特色。ベーカー監督は、最もよい映像を可能にするために、スタビライザー装置、特別な取付可能なレンズ、および映画のプロアプリを使用したと言います。
iPhoneが、トラブルに適切な調節シャッタースピードを持っているのに、時々加速している映像などのいくつかの矛盾があったけれども、実際ショットの上では、意外な効果が生まれました。
特徴的な撮影方法は、クレーンショットがされた方法でした。とはいっても、それらは、電話を、延長できるポールに単に取り付けて、モニターがなかった中、ベストな映像ショットを、願って撮られていったのです。
また、安いことは別として、目立たなく、小さい電話で撮ることは、経験がない俳優の多くにストレスをあたえないことでも役立ったとのこと。
『タンジェリン』は、私達が低予算の映画製作で、新しい世代が生まれていることを示しました。そして、極端に言えば、専用のカメラがなくても、作品ができるということも---。
2. 悪魔のいけにえTexas Chainsaw Massacre (1974, Tobe Hooper)
Budget: $300,000
この、テキサスチェーンソー虐殺をテーマにした映画。ご存知の方も多いはずです。
獣医から、動物の死骸等が集められて撮影したという、苦難の作品。
しかし、撮影でのこれらの装飾物が本当の腐敗肉と骨から作られたので、それらは極めて不愉快なにおいを放ち、撮影は難航したとのこと。
また、俳優のギャラは、フィルムの利益 の一定のパーセンテージを約束して制作された作品です。
3. 『これは映画ではない』This is Not a Film (2011, Jafar Panahi)
Budget: Some pocket lint and an old shirt button.
イランの映画製作者ジャファール・パナヒについてのドキュメンタリーであるこの作品 。本当に予算というものがない作品です。
なぜなら、イランの裁判所から今後20年間映画製作を禁止されたジャファール・パナヒの日常生活を映し出しただけの作品。映画を撮っていけない監督を撮った映画!?
パナヒ監督の毎日の雑用と、彼が彼の映画への熱狂を話し、議論しないではいられないので。彼は、過去、彼が作ったフィルムについて話し続けます。
また、禁止のためもう作ることができないフィルム、およびそれのため彼が感じるという極端なフラストレーションについて話します。
そんな、作品はカンヌなど世界の映画祭でも評判になりました。
4. 恐怖の足跡 Carnival of Souls (1962, Herk Harvey)
Budget: $17,000
wikipedia によると
”1962年に製作された本作は、ホラー映画ファンから絶大な支持を得ているカルト映画である。ホラー映画の手法の先駆者的存在でもあり、クオリティの高い仕上がりになっている。第一線で活躍する映画監督たちにも多大な影響を受けた映画として本作を挙げる者も少なくない。”と現在では賞されているこの作品。
最初は、ハーク・ハーヴェイ監督のアイデアのもとに、友人ジョン・クリフォードと共に脚本を仕上げ、数千ドルを集めたところからスタートしたということです。
後に、未知数のおよび経験がない俳優を雇用して作品を仕上げました。
5. 『ブロンソン』Bronson (2008, Nicolas Winding Refn)
Budget: $230,000
ニコラス・ウィンディング・レフン監督の世界の映画界で注目されるきっかけになったと言ってもいいこの作品。
トム・ハーディ主演による2008年のイギリスの実在する凶悪犯をモデルにした伝記・犯罪映画。イギリスの服役囚であるチャールズ・ブロンソン(英語版)(本名:マイケル・ピーターソン)を描いている。
なお著名な俳優との同名の理由はの名は、ボクサー時代に付けられたリングネームであると同時に、本人はその有名俳優の分身であると主張している。
6.『イレイザーヘッド』 Eraserhead (1977, David Lynch)
Budget: $20,000
デヴィッド・リンチ監督の初の長編作となる『イレイザー・ヘッド』。
1972年から4年の歳月をかけて自主制作した作品で、1976年に長編映画監督としてデビューする。
リンチはこの作品をカンヌ国際映画祭に送ろうと考えたが周囲に止められてしまい、ニューヨーク映画祭でも上映を拒否された。
そのため深夜上映のようなアンダーグラウンドな形で上映され、『ロッキー・ホラー・ショー』や『エル・トポ』、『ピンク・フラミンゴ』といった今考えると、映画史上に残る作品とともに、カルト映画界で人気を博したことから、スタートした。
7. 『ピンク・フラミンゴ』Pink Flamingos (1972, John Waters)
Budget: $10,000
ジョン・ウォーターズ監督『ピンクフラミンゴ』は、映画史上に残る、純粋にもっとも史上最低(最高)なカルトな映画と言ってもいいでしょう。堕落と汚物、近親相姦、獣姦、そして、主人公となるデヴァインが犬の糞を食すラストのシーン---。
ストーリーは「世界で一番下品な人間」の座を争うという内容。
だが、カルト映画の先陣を切った作品であり、今でも、悪趣味映画の最高峰として語り継がれている。
8. 『エル・マリアッチ』El Mariachi (1992, Robert Rodriguez)
Budget: $7,000
『シン・シティ』などのロバート・ロドリゲス監督のデビュー作。
この作品が7000ドルという低予算で制作されたが、完成度の高さから、当時無名であった監督ロバート・ロドリゲスを一躍有名にさせた。
続編にあたる『デスペラード』では主役のエル・マリアッチをアントニオ・バンデラスが演じており、本作でマリアッチを演じていたカルロス・ガラルドーはマリアッチの仲間の一人である二丁マシンガン使いのカンパ役として再出演している。
9. 『バッド・テイスト』Bad Taste (1987, Peter Jackson)
Budget: $30,000
ピーター・ジャクソン監督は、今でこそ、『ロード・オブ・ザ・リング』三部作や、『ホビット』シリーズで世界の頂点の映画監督となっています。
しかし最初は、初監督したスプラッター・ホラーのこの『バッド・テイスト』が評判となり、『ミート・ザ・フィーブル 怒りのヒポポタマス』と『ブレインデッド』もヒットしカルト映画の巨匠となってところからキャリアはスタートしました。
この作品では、ほとんどのキャストとクルーが、毎日の仕事を別に持っていたので、映画は週末のみ制作が可能でした。そのため、映画を撮り終えるのに4年かかったということです。
10.『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』 Night of the Living Dead (1968, George A. Romero)
Budget: $114,000
ゾンビ映画の記念すべき作品でもある『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』
このフィルムの前では、ゾンビはハイチにおける一部で伝説でしかありませんでした。
ジョン・A・ルッソ(英語版)の原作を、CM監督出身のジョージ・A・ロメロが監督した歴史的作品であり、ゾンビ映画の記念碑的作品である。
全編に横溢するカニバリズムや反モラル的ラストなど当時のタブーに挑戦した内容は、根底に流れる独自のヒューマニズムが制作当時の世相を反映しており、賛否両論あったがロングランを続けた
。結果として、ニューヨーク近代美術館にも所蔵されるカルト・クラシックとなっており、アメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録されている。
11. 『死霊のはらわた』The Evil Dead (1981, Sam Raimi)
Budget: $350,000–400,000
今では、スパイダーマンシリーズなどの大作で活躍するサム・ライミ監督の長編デビュー作。
1980年代のスプラッター・ブームを発生させた作品として知られています。
12. 『クラークス』Clerks (1994, Kevin Smith)
Budget: $27,575
ケヴィン・スミス監督は、映画学校に通うが数ヶ月で中退し、そのおかげで浮いた分の学費と、集めていたコミック本を売ったお金で製作した『クラークス』がサンダンス映画祭で注目され、ミラマックスによって公開された。
この映画の舞台となったコンビニエンス・ストアは、当時彼が実際に働いていた場所だという。実際に、その場所を撮影現場日使っている。
そして、この映画の成功で、売ったコミック本は、また買い戻した。
13. 『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』Blair Witch Project (1999)
Budget: $22,500
泣く子も黙る『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』。
お金または時間の不足のため、完成するために、このリストに載っているフィルムの多くは、撮り終わるまでに何年もかかりました。
一方で、ブレア・ウィッチ・プロジェクトは、わずか8日で撮られました。
フィルムのためのマーケティングは非常に成功していました。
聴衆は映画館に群がり、それは興行収入2億5000万ドルを最終的にし、以前にマッド・マックスにより持たれていた世界レコードを破りました。
14. 『プライマー』Primer (2004, Shane Carruth)
Budget: $7,000
2004年サンダンス映画祭審査員大賞/アルフレット・P・スローン賞を受賞したSF映画『プライマー』
タイムトラベルがテーマで、脚本、主演、音楽、撮影、編集をこなしたシェーン・カルース監督。
この作品のあとに『Upstream Color』を発表。
15. 『マッドマックス』Mad Max (1979, George Miller)
Budget: $350,000–400,000
そして、低予算映画からスタートした名作、そして成功作と言えば今年のアカデミー賞でも6冠に輝いた、マッドマックスシリーズの原点となるこの作品でしょう。
最初、ジョージ・ミラー監督は医師として彼自身の給料を貯めて、この映画にお金を出資しました。
なぜなら、オーストラリアのフィルム資金では、このような暴力的なジャンルの映画へのサポートは断られたからです。
低予算映画の為にセット設営を極力排した”近未来”という舞台設定では、撮影場所は水道局など既存の施設を利用し、往来の少ない地区や路上をさがしてロケ撮影を行った。また、警察により着られている革ユニフォームすべては、一部の危険を伴う俳優を除いてビニールで作られました。
撮影で、実際に破壊された車もミラーの個人的な車もあったという。
『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』のリリース まで、20年間、その予算より、その総計以来これまで作られたことがある最も高収益を上げた世界レコードを持ってギネスブックに登録されていました。
これら15作品を比べてみると、多くの作品がホラー、カルト、バイオレンス作品など衝撃性のある作品で、戦慄なデビューを飾った監督が多いことがわかります。
逆に考えると、通常の現代劇の映画の方が、ちゃんとつくりこもうとすると、それだけ色々な意味で、予算や時間がかかるのかも知れません。
どちらにしても、今世界の第一線で活躍中の監督も、最初の作品を生み出すには苦労したことが、よくわかります。