【 サイモン・フジワラ ホワイトデー 】東京オペラシティ アートギャラリー
ベルリン在住のアーティスト、サイモン・フジワラ。現在33歳の若手ながら、2010年には優れた現代美術のアーティストに贈られるカルティエ・アワードを受賞、2012年にはイギリスのテート・セントアイヴスで大規模個展が行われるなど、国際的に高い評価を得ています。
日本人の父とイギリス人の母を持つフジワラにとって、本展は母国での展覧会であり、日本の美術館における待望の初個展です。4歳まで日本で暮らし、母の故郷イギリスをはじめ世界各地で幼少期を過ごしたフジワラは、その国際的なバックグラウンドからあたりまえと思われていることを検証する目を養い、それを鮮やかな手法で作品へと展開させます。
フジワラの作品は、絵画や立体、ヴィデオ、ときには他人の制作物まで、さまざまな要素を組み合わせてひとつの場面をつくります。まるで舞台空間を思わせるようなフジワラのインスタレーションは、実際の社会的なものごとや自分自身と家族の歴史を題材にしており、そのなかにはフィクションが挿入されることもあります。この「真実を知るための嘘」は、私たちが普段なんの疑問もなく受け入れている事実や慣習の背後に、さまざまな理由、経緯、ときには思惑が隠れていることをあらわにします。情報化、多様化が進む現在、異なる価値観との出合いはかつてないほど急速に、そして頻繁に訪れます。自分の常識が隣の人と同じとは限らない時代だからこそ、フジワラの視点とユーモアは大切です。
本展は東京オペラシティ アートギャラリーの展示室全体を工場の生産ラインとして構成し、作品の一部は会期中に生産されていきます。
現代を生きる私たちにとって「豊かさとは何か」を考えるきっかけとなる本展は、人間の複雑な美しさやアートの力をあらためて感じさせてくれる機会ともなるでしょう。
出典は下記サイト
https://www.operacity.jp/ag/exh184/
ホワイトデー 恋と感謝と儀礼のシステム
ヴァレンタインデーにチョコレートをもらった男性が、お返しのプレゼントを贈るホワイトデー。そもそも日本のヴァレンタインデーは、製菓会社が販売促進のために欧米の慣習を輸入・変形してつくった商業的な仕掛けによって定着した歳事といわれています。
そのお返しをさらに儀礼化したホワイトデーとあわせて、個人の感情と消費を結んだ見事なシステムといえるでしょう。
サイモン・フジワラは、私たちが日ごろ無意識に受け止めている「システム」に光を当て、その背後にさまざまな理由、経緯、ときには思惑が存在することを明らかにします。
さて、社会に張り巡らされたシステムは、私たちの幸せとどのようにかかわりがあるのでしょうか。
美術館の中に現れた工場の生産ライン 現代の「幸せ」への問いかけ
ロンドンで起こった暴動に参加したことで、液晶モニターの製造工場に送られた少女をかたどった約100体の彫像が会場を埋める《レベッカ》。
ほとんどの人が新鮮な牛乳を見たことも飲んだこともない国の絵画工房に依頼して作られた《乳糖不耐症》。
フジワラ自身の生い立ちや家族の歴史にフィクションが交えられた演劇的なインスタレーション《ミラー・ステージ》や《再会のための予行演習》。
そして本展の会場では、かつて高級品として売買された毛皮のコートの毛を刈り、皮を継ぎ合わせてつくる《驚くべき獣たち》の生産ラインが現れます。
綿密に組み立てられた物語にもとづくフジワラの作品は饒舌で、私たちの興味や好奇心を刺激してやみません。
しかし、驚くことにそれらの作品には決まった「結論」が見当たらないのです。
観る人ごとに異なる印象を与えるフジワラの作品は、鑑賞者それぞれが自身と向き合いながら、ものごとの本質を確かめていくための「鏡」なのかもしれません。
そしてその作品は私たちに問いかけます。
今まで信じてきたこととは絶対的なものなのでしょうか。
会期:2016/1/16〜〜3/27まで開催。