皆さんご注目を! イギリス美男子スターもメじゃないビル・ナイの魅力
映画『パレードへようこそ』とDVD『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』
イギリス美男子スターが萌上がっておりますが、なんの。イギリスはおじさまスターの宝庫なんざんすよ。中でもここしばらくまつかわが注目しているのが、ビル・ナイという俳優さん。81年スクリーン・デビューなので芸歴は長いけれど、ま、主役ではないよね。群像劇の中で光るところを見せ、おじさまになってからブレイク。今は年に何本も、準主役級の活躍を見せてくれてます。
ひょろ~っとしたやせ形細身のビル・ナイなんですが、その足が長~い、細~い。腰が、お尻が、細好きにはたまらんシュッとぶりなんですよ。そんなセクシーさがあるのに、知的で優しくて、ちょっとお人よし。それが自立した女性にとっては包容力になって、また魅力なんですよね。と、こんなイメージを決定づけたのが『ラブ・アクチュアリー』のアンサンブル・キャストの一人を演じたときだと思います。で、同じリチャード・カーティス監督の新作で今度は準主役、いやいや見様によっては主役を演じたのが『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』。一種のタイムトラベルもので、SFとして見ちゃう男子にはちょい不評、でも女性にはすこぶる、すこぶる人気、という作品です。思いがけないロングランの後で、まだ記憶に新しいままDVDが発売されます。
ここで演じているのは、一族の長男だけがタイムスリップの能力を引き継いでいるという一家の当主役。息子にその力のことを伝え、息子がその力を使って恋と人生をゲットしていく様をあたたかぁぁく見守っているお父さんです。お母さんともラブラブで、決して失敗しない、というのも失敗したらその前の時間に戻ってやり直しちゃうからなんですが、完璧な幸せを築いている父親なんですね。とはいえ、人間、体には限界があっていつまでも生き続けているわけにもいかない。その時を悟った父と息子の関係が、これまた、泣かせるんだわ。
と、泣かせておいて、次に公開されたのが『パレードへようこそ』。こっちでは、まー、冴えない、田舎の文系おじさん。炭鉱町でマッチョな体育会系男子じゃなきゃ男に非ずみたいなウェールズの小さな町では、ちょっとばかにされている感じ。でもおばさんたちには大切にされていて、頭脳として頼りにもされている、そんなおじさんなんですね。この草食系っぽさが良いのですよ。またそこが、ミソ、なんです。
物語は実話に基づいていて、ということはフィクションも入っているってこと。たぶんナイの演ずるおじさんは作られたキャラだと思うんですが、この人がいなかったら要が外れちゃうだろうという役です。サッチャー政権下で、エネルギー政策の転換を図る政府が炭鉱をどんどん閉鎖していた時代のお話。『リトル・ダンサー』と同じ時期の物語ですね。
ロンドンでゲイの解放運動をしている若者のグループがあって、当時はまだゲイ差別が根強く(1967年まで法律で禁止されていたくらいですから)、サッチャー政権は彼らにとっても「敵」だったわけです。で、共通の「敵」と戦う炭鉱労働種のストライキを支援しようと募金活動を始めます。でも、集まったお金を寄付したい、ついては僕たちはゲイの団体でというや否や電話を切られる始末。炭鉱町ではたらく人たちは保守的で信仰も深く、当然のようにゲイ嫌い。が、たった一か所だけ募金を受け入れてくれる町があり、募金のお礼にと町に招待してくれたのはいいけれど……。
ここでナイが演じているのは町のコミッティの書記。コミッティの実務を握っているのはおばちゃんたちで、その中にしっくりとなじんで早何十年という人なの。と、いうことは?! 集会のためにコミッティのおばちゃんと一緒にサンドイッチをつくるシーンがあるのだけれどそこでついにカミングアウト。「あら、そんなのずうぅぅっと昔から知ってたわよ」といなすおばちゃんとの掛け合いが、笑って泣けちゃいました。
ゲイだけではない様々な差別の問題、受け入れ側のきもちの問題、なんていう普遍性も持たせつつ、ユーモアや音楽ダンスも絡めてとても気持ちのいい作品になってます。ロングラン中で、これから全国順次公開なので、ぜひお見逃し無く、ね。