シネフィル新連載 : 映画監督・旦 雄二の ☆ それはEIGAな! 2(通算 第21回) 映画『死んだ目をした少年』を観賞して -cinefil.tokyo

映画『死んだ目をした少年』(加納 隼 監督)を観た(2月23日@テアトル新宿)。

なにも起きない。ドラマがない。特別な葛藤、矛盾、劇的転換によって物語が大きく転がっていくなんてことは一切ない。
ただただ、田舎の中学生たちのタル〜い日常が、そのまんま、ひたすらタル〜く描かれるだけである。おなじような似たりよったりのエピソードの反復として。

唐突なエンディングも含め、劇映画としては きわめて異例の構造になっている。

しかし、そのように登場人物たちと同様にタル〜い気分に陥って「なんなんだよォ、この映画はァ・・・」と ぼやきながらも、気がつけば、フラットで ゆる〜い、なんということもないこの物語のことがけっこう愛おしく、最後まで観つづけていたのだった。

“今回は、こういう、いまの若者の気分をそのままとらえた、『描写の映画』をやってみたかったんですよ”といった加納監督の声が聴こえてきそうだ。

もしそうだとすれば、その狙いは一応成功しているということになるだろう。なにしろ、まんまと最後まで観せられてしまったのだから。

キャスティングが、すべていい。少年たちも少女たちも、みんな、いい、死んだ目をしている。死んだ目なのだけど存在感があるのだ。

名手・遠藤浩二さんの音楽も素晴らしい。ぬる〜い青春にぴったりと寄り添って、輪郭を与え、いい青春映画の体裁を見事に整えている。

公式サイト
http://shindame.com/sp/index.html

旦 雄二(だん・ゆうじ)
映画監督 。長篇映画に『少年』、監督したCMに『DHC』ほか多数。
助監督、CM会社を経て、フリー。

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