画家ファン・ゴッホ フランス時代2アルル

画家としての自信を深めたファン・ゴッホは、南仏に赴き、1888年2月20日にアルルに住居を定めました。
春には花盛りの果樹園を繰り返し描き、夏には麦の収穫に注力しました。
真の現代の芸術家は卓越した色彩画家だと考えたファン・ゴッホは、とくに南仏の明るい空の青と、燃えるように鮮やかな太陽の色彩である黄色の組み合わせに熱心に取り組みます。
10月にはアルルにポール・ゴーガンが合流し、影響を与え合いながらともに制作を行いましたが、共同生活は2か月ほどで終わりを迎えます。

フィンセント・ファン・ゴッホ《種まく人》1888 年 6 月 17-28 日頃
クレラー=ミュラー美術館蔵 ©Kröller-Müller Museum, Otterlo, The Netherlands

南仏アルルの穏やかな気候、明るい太陽のもとでゴッホは、自然の美しさを描き出します。この作品について、ファン・ゴッホは手紙の中で次のように語っています。「ミレーとレルミットの後に残っているものといえば…それは種まく人を、色彩を使って大きなサイズで描くことだ」(テオ宛、1888年6月21日)。
彼は、畑の紫と、空と麦の黄色という、強烈な補色の対比の中に種まく人を描き出そうとします。種まく人は永遠の季節を象徴するもので、農民の生活を映し出すモティーフとして重要なものでした。一方で太陽も重要なモティーフで、それは生命を育み、温もりを与え、ファン・ゴッホが用いる深みのある色彩に不可欠で、神にも等しい存在でした。
この作品は、造形と象徴の両面において、彼にとって重要な意味を持つものとなりました。

画家ファン・ゴッホ フランス時代3サン=レミとオーヴェール=シュル=オワーズ

1889年5月8日、ゴッホは、アルルを離れ、ゴーガンとの決裂による傷心と、その後の病気による発作を癒すために、サン=レミのサン=ポール=ド=モーゾール療養院に入りました。
体調が許せば、花が咲き誇る療養院の庭や周囲の田園風景を前に制作を行いました。
色調はアルルの頃より抑えられ、糸杉やオリーヴ園などプロヴァンスの典型的なモティーフに取り組むようになります。
1890年5月16日、彼は療養院を後にし、北仏のオーヴェール=シュル=オワーズに移り住み、村やその周りの美しい風景にインスピレーションをかき立てられ、新しい様式も試みながら制作を続けます。
サン=レミ時代よりも強い色彩を採用し、様式的な筆触を抑え、より自由な筆遣いをするようになりました。しかし、7月27日に自らを撃ち、2日後に弟テオに看取られ、生涯を閉じたのです。

フィンセント・ファン・ゴッホ《悲しむ老人(「永遠の門にて」)》1890 年 5 月
クレラー=ミュラー美術館蔵 ©Kröller-Müller Museum, Otterlo, The Netherlands

サン=レミでファン・ゴッホは、ミレーやドラクロワなどの版画を油彩で模写しましたが、この作品は自らがかつてオランダ時代に制作した版画《永遠の門》を模写したものです。
若いころ、彼は悲しみに暮れる人々という主題を好んで描いていましたが、療養院での生活はしばしば憂鬱になり、また絶望もし、自分の健康状態は良くなるどころか悪化したと感じていたので、この作品の主題は彼にとってはとても身近なものでした。

ファン・ゴッホ美術館のファン・ゴッホ家コレクション オランダにあるもう一つの素晴らしいコレクション

ファン・ゴッホ家のファン・ゴッホコレクションは、世界最大のもので、200点を超える油彩画、500点ほどの素描、膨大な手紙、ほかの芸術家の作品群などを含むこのコレクションは、1973年、アムステルダムに開館したファン・ゴッホ美術館に永久貸与されています。

フィンセント・ファン・ゴッホ 《黄色い家(通り)》 1888年9月 油彩、カンヴァス 
ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)蔵 
©Van Gogh Museum, Amsterdam(Vincent van Gogh Foundation)

本作はアルルへ移住してから半年ほどして、ファン・ゴッホとゴーガンが共同生活を送った、有名な黄色い家を描いた作品です。
ゴーガンを中心に、キリストの十二使徒になぞらえ、12人の芸術家たちが共同制作をする「南仏のアトリエ」を夢見ていたファン・ゴッホでしたが、その願いは2か月ほどで砕かれ、「耳切事件」によって幕を閉じます。

わずか10年ほどの間に自然派の農民を描く作風から、印象派の影響を受け、色鮮やかな美しい風景を描くようになったゴッホ。
ゴーガンとの共同生活の後、「耳切事件」を起こすなど、壮絶な人生でしたが、最後には、生命力あふれる〈糸杉〉を描き、独自の世界を築きました。
ゴッホの感動的な芸術を是非、ご堪能ください。

展覧会概要

展覧会名 ゴッホ展―響きあう魂 ヘレーネとフィンセント
会 期 2022 年 2 月 23 日(水・祝)~4 月 10 日(日) 【45 日間】
開館時間:午前 9 時 30 分~午後 5 時、金曜日は午後 8 時まで
いずれも入場は閉館 30 分前まで
休 館 日:3 月 7 日(月)、3 月 28 日(月)
会 場 名古屋市美術館
〒460-0008 名古屋市中区栄 2-17-25 〔芸術と科学の杜・白川公園内〕
TEL:052-212-0001 FAX:052-212-0005
主 催 名古屋市美術館、中日新聞社、CBC テレビ
特別協 賛 サイバーエージェント
協 賛 NISSHA
協 力 KLM オランダ航空会社、ヤマト運輸、名古屋市交通局
後 援 オランダ王国大使館、JR 東海、名古屋市立小中学校 PTA 協議会
観 覧 料 日時指定予約制
平日祝 一般:1,900 円、高大生:1,300 円
土日祝 一般:2,000 円、高大生:1,400 円
いずれも中学生以下は無料(日時指定予約不要)
展覧会公式サイト https://gogh-nagoya.jp/
関連催 事 作品解説会 ① 3 月 13 日(日) ② 3 月 19 日(土) ③ 3 月 26 日(土)
各回 午後 2 時~(約 60 分) ※詳細は展覧会公式サイトを参照
お問 合 せ [展覧会について] ハローダイヤル 050-5542-8600(9:00~20:00)
   [チケットについて] Boo-Wooチケットカスタマーセンター 0570-084-700(11:00~17:00)   

※今回は、新型コロナウイルス感染拡大のため、チケットが日時指定予約制となり、チケットプレゼントはございません。
誠に申し訳ございませんが、ご了承ください。